4話 毒
クルベの両親、アルスとロレーヌは二人とも冒険者として活動していたらしく現在の等級は一級ということだった。ファルコのパーティーを合わせて3パーティー3人以上の魔法使いの両方の条件を達成したことになる。
「しかし、本当に依頼受けていただいてもよろしいので?」
「えぇ、私たちも商国へ帰るところだったから。ね、貴方」
「それに、コイツが戻ってきたんだ。むしろ安いくらいだな」
アルスもロレーヌに同意し私達の商国行きへの問題はあらかた片付いた。戦士の遺品であった斧を2人に返す代わりに商国、さらには教国へ向かうために通らなければならない大森林の護衛兼道案内を買って出てくれたのだ。
翌日ファルコのパーティーと合流しコルベットからリヨンまでの道すがらちょうど中間地点に位置する都市【カザス】へ向かうのであった。
「しかし、あの高名な殺戮夫婦とご一緒できるなんて私感激です!」
もう一人のファルコの仲間であるフォスがロレーヌ達夫婦へ賛辞?を向ける。聞けば二人は連邦きっての冒険者であり大斧を振り回すアルスと高威力魔法を連発するロレーヌの殲滅力から殺戮夫婦の異名で恐れられているのだ。ちなみに二人がクルベの両親であることは二人から秘密にお願いされているため伝えていない。
オキマルもサドマルもランマル、大名の子の側近を務めるだけあって戦力としては申し分無く、ただの護衛にしては過剰な戦力が揃っており平和な旅路が続くと思われていたが、カザスへと近づくにつれて明らかに魔獣の出現頻度も危険度も跳ね上がっていった。
私も馬の状態に戻り全速力で馬車を引き、魔物との戦闘回数を少なくしようと努力したが度重なる出現に明らかに疲労が溜まっていった。
「おかしい!この道はこんなに魔物は出なかったはず。一体何が・・・何か来る!皆陣形を!」
ロレーヌの探知に何か引っかかったらしく、急いで警戒陣を構築する。そして私たちの目の前に現れたのは
『お久しぶりですね、ロランさん』
マグナバーンズ家の屋敷で門番として働いていたロランであった。彼女はヒイラのマグナでの活動のためマグナ中に幻術を使っていた魔族であった。バーンズ家で会った時はなかったはずの猫耳やしっぽが体から生えていた。
「お久しぶりですペル。私の主・・・レイオット様ではありませんよ?から伝言です。『教国で魔王として復活するから止めれるものなら止めてみよ』とのことです」
いったいそんなことを私に伝えてどうするつもりなのだろう
「あっそれとカザスの町は迂回した方がいいですよ、あそこ魔族の町にする予定なので」
以上に増えて強力になった魔物の原因はこいつらであったのだろう。皆が彼女に対して武器を構える一刻も早く彼女を倒しカザスを助けなければ、魔族の町などになってしまえば元居た住民の命は保証されないのだ。
「拘束魔法、今よアルス!」
「おう!」
夫婦の連携でロレーヌが魔法でロランを高速しアルスの大斧が彼女の胴を貫いた瞬間、そこにいたはずの彼女はロレーヌの目の前に現れた。
「幻惑魔法です。私、化け猫ですよ?今のあなたたちでは私のことは殺せません。諦めてくれませんか?」
それでも武器を構える私たちにゲンナリした表情で彼女は告げる。
「私ね、これでも魔王軍の幹部なんですよ。まぁ一人で出歩くのってあんまり良くなくてですね・・・護衛いっぱい付けられちゃいました♪」
そう言って彼女がゆびを鳴らした瞬間私たちの周辺におびただしい数の魔獣が現れる。基本的に魔獣の強さは同等級の冒険者とほぼ同等。一等から二等の魔獣がわらわらと湧いてくる。
「さすがにこれは・・・」
「撤退だな」
全会一致でその場からの逃走である。私は持てる限りの力を振り絞って魔獣の群れを撒く。・・・一体どれほど走り続けただろうか、人の気配が消えたカザスの町はすでに遠くに見えるほどに私たちは逃げ続けたのだ。
「ブッあh?」
私の口から大量の血が滴れ落ちる。本能で馬の状態のままでは死ぬと直感し、人間の姿になると血は止まったが苦しさは止まらなかった。そのまま私の意識はブラックアウトするのだった。
ペルが気絶した後、フォスが診察する。彼女はヒーラーでありそのため危険な洞窟内の野盗との戦闘に参加せず、洞窟の外で待機していたため無事であったのだ。
「これは・・・毒ですね。それもかなり強力な」
「これまで何らかの聖の魔法で進行が食い止められていたようですが、それはあくまで遅くするためのものでして・・・馬の状態で全力で走り続けたことによって急速に体に毒が回ったのだと思います」
ぺルの体は魔王城へ侵入したその日から毒で蝕まれていたのだ。聖女の杖と勇者の剣によってその進行は限りなく遅滞されていたが、勇者の剣を手放したこと。それにフォスも言ったような急速な血のめぐりでその毒は遂にぺルの致命に達したのだ。
「治す手立ては?」
ランマルが尋ねるも、フォスは首を横に振る。
「出来ることはこれから馬になって走らない。それくらいでしょうか・・・もっともそれでも以ってあと二か月といったところですが・・・」
旅の終焉は確実に近づいていたのだった。




