2話 RTA
夢を見た。本来眠れなくなったはずの私だが、今日だけは夢を見たのだ・・・ヒイラの魔王の過去であった。
もし、この夢が本当ならば急いで教国まで向かわなくてはならない。私はランマルたちにもこのことを伝え護衛任務の受けれる第二等級まで一気に等級を上げるべく任務に殴殺される日々を送ることになる。
来る日も来る日も大量の魔物退治の依頼を受けた私たちはコルベットの町では知らないものは居ないほどのバーサーカーと呼ばれるようになっていた。それでもこの二か月ひたすらに任務を受けた私たちの等級は三級まで上がっていた。
「凄まじい速さですね・・・これは歴代最速の昇進記録に並ぶかもしれません!」
そう言って報告を受ける受付のお姉さんだったが、彼女も私たちと同時期にこの町で仕事を始めたらしく
親近感を持っていた。
「それにしても最近依頼多いな・・・」
「そうだよな、魔王はほぼ無力化されたっていうのに逆に魔物増えたんじゃねぇか?」
ギルドの中では冒険者たちがたわいもない会話に花を咲かせる。魔物の習性として、魔王のような強い魔族のいる方へ寄ってくるというものがある。もしかしてヒイラが近くにいるのではないか、そう思いギルドを後にし、また依頼へと歩き出すのだった。
次に受けた依頼は帝国から逃げ込んできた先の内戦の敗残兵の捕縛という任務であった。彼らは野盗となって近隣の村を荒らしているらしく、ランマルは見過ごせないとこの依頼を受けるように懇願してきたので付き合うことにする。
依頼書には大体のやつらの拠点の目途が記されており、夜を待ち彼等の拠点に殴り込む。ごつごつとした岩でふさがれた洞窟を根城にしいたようで、中に入ると予想よりも遥かに多いい野盗が私たちに襲い掛かる。中には帝国の装備を身に着けた者もおりランマルの怒りに火をつける。
そもそも洞窟の中だ、ランマルは火の魔法を使うことが出来るので洞窟内に火を放って出てくるのを待つ作戦に切り替えるように相談する。
入り口の野盗を倒し、火をつけようとしたところ野盗の遺体の中に瀕死であるが明らかに野盗とは違った姿の人物がいた。ランマルに斬られたのではなく何か大きな力で弾き飛ばされたのだろう。手足は紫に腫れあがっていた。
「おい、あんた大丈夫か!」
「助けに来てくれた冒険者か?俺の仲間がこの先で捕まっている。悪いが助けてやってはもらえねぇだろうか」
本来冒険者はその生命は自己責任、野盗に捕まった以上野盗との戦闘で死んでも文句は言えないのだが、ランマルは野盗を出してしまった統治者として、私はシルヴィアとの約束として彼の仲間ごと攻撃することは出来なかった。
冒険者の男を寝かせて、結局私たちが取った作戦は暗殺であった。孤立している野党を見つけては私が注意を逸らし声も上げさせずにランマルが仕留める。20人以上暗殺したところでついに洞窟の最深部へとたどり着いた。
最深部には一丁前に部屋のように扉で区切られており、私たちは音を立てないように扉を開ける。そこには裸のまま横たわる女の山と、冒険者の恰好をした男が磔にされて息絶えている異様な空間であった。直後私たちの頭上に大槌が振り下ろされる。
とっさにランマルが刀を抜き止めるがさすがに分が悪いようで段々と力比べでは押され始める。野盗の首領であろうこの男は身長2メートルは優に越すであろう大男であった。だが頭の中身は足りないようだ。力でランマルをねじ伏せることに意識が集中しているせいで私に警戒心を抱いていない。私はこっそりと馬の姿に戻るとランマルと力比べをしているその男の急所を蹴り上げる。
軍馬の蹴りが急所に直撃したのだ野盗は声にならない叫びをあげて崩れ落ちる。そしてその隙を逃すランマルではなかった。力が抜けたと見るや否や首領の首を一刀で断ち切ったのだ。
「大丈夫ですか?」
私が問いかけると床に転がされていた女達が起き上がる。男よりは長生きさせもらっていたようだが部屋にいた8人のうち息のあるのは3名だけであった。私たちは彼女らと入口でのされていた冒険者の男を回収してコルベットに戻る。男は重傷であるが障害の残るような怪我は負っていなかったらしい。
あの野盗の首領はもとはヒデキヨの直轄地で代官をしていた男のようだが度重なる不正がばれて、国外に退去させられたらしい。その後帝国への逆恨みを晴らすため、流れてきた敗残兵を指揮して略奪を行っていたそうだ。
それから私達は無事に依頼を達成したことで二級の冒険者となり、ついに連邦の他の国へ旅立てる用意が整ったのだ。最終的な目標としては連邦と教国の境に位置する大森林に存在する戦士の出身国クローゼであるがかなり遠い道のりとなる。私たちは二級に昇進したことをオキマル達に伝えるため宿に戻るのであった。




