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十四話 イチマルVSニヘエ

「久しぶりだな、ニヘエ。否・・・お前ニヘエではないのだろう?」


「さすがだな兄者」


そう言うとニヘエあったものは姿を変え狐人の姿へと変わる。あの日死んだニヘエの亡骸と入れ替わったこいつと狐の少女があの村の皆を騙していたのだ。私がそれに気づいたのは決死隊としてマツシマに物資を運び入れている最中だった。


あの腐れ第三皇子に一泡吹かせてやる。その思いで戦っていたがふと疑問がよぎる。どうして俺は知らない魔族を匿っていたんだ?魔族を匿えば攻撃される当然のことじゃないか・・・


「あっあれ?」


「どうした村長!?おい皆村長が変だ!」


決死隊についてきた村の者たちが私を北の森まで後退する護衛をしてくれた。気が付いた時には仲間はみな死んで私一人になっていた。どうやら戦場で仲間を回復するために近くで聖魔法を使ったやつがいたらしく、狐人の洗脳が溶けたのだった。


「クソッ!伝えなくては、皆に!」


必死に帝都まで戻った時にはすでにイエキヨ様の勝利で内乱は終結していた。「人間に化けた魔族がいる」そのことを伝えよと武士を見かけては声を掛けたが誰一人として反応を返してはくれなかった。


しかし、暫くたつと狐が紛れ込んでいるという話は帝都中に広まった。どうやらイエキヨ様も気付いていたらしい、私が話しかけた武士はほとんどがのちに帝都で見かけることは無かった。


次に私は家族の生き残りを探すことにした。あの日死体が残らなかったのはどう考えても不自然なのだ、焼け落ちた村に戻り捜索していると無事だった家屋から見知った顔が出てきた。


「イチマルさんじゃないか!生きてたんだな」


村の仲間のキヘエであった。キヘエの話を聞くと私との認識の差に驚いた。彼らは昔から私に姉妹がいるなんて言う風には思っておらず、今回の火災は野盗の火付けでそれを村長一家が身を挺して追い払ったというものであった。どうりで、私に決死隊まで村の者が付いてきてくれるはずである。彼等に言いようのない罪悪感を抱きながら目撃情報を探る。


ニヘエがまれにこの村に顔を出す。その情報に行きつくまでに時はそうかからなかった。私はそれから毎日ここで張り込み、彼が現れるのを待っていたのだ。


「どうして、この村に顔を出したのだ!」


狐に問いかける。帰ってきた答えは嘘なのかもしれない。それでも問いかける事を辞めれなかった。


「この体の持ち主がどうしても戻りたいって聞かないからな、偶に来てやってるんだよ」


そう言って襲い掛かってきた狐人の言葉を私は嘘と思いたくなかった。何合と刀を打ち合う。私も狐人も戦に慣れていないのか、はたから見れば随分と情けない剣劇だろう。それでも切り合い続けていると先に体力が切れるのは生身の人間である、私なのだ。


狐が振るった刀が私の胸をはする。鋭い痛みが私を刺し血が流れ意識が遠のく。それでもニヘエの、弟の姿でこれ以上の悪事はやらせない、再び刀を握り狐に構える。


もはや、私に何合も打ち合う体力は残っていない。次の一撃にすべてを掛ける。その思いで大振りで剣を振るう。奴から見れば隙だらけだったのだろう、にやりと笑って私に剣を向ける。向こうの方が先に到達する。「殺られる!」とっさに目を瞑るがその感触は一向に襲ってこない。


狐がその剣を振り下ろせずに苦悶の表情を浮かべていた。弟が私を守ってくれたのだ。私は最後の力を振り絞り奴の体に剣を落とす。胸を袈裟に裂いた一刀は再び狐が立ち上がることを許さなかった。


しかし、私も胸を切られたところの血が止まらない。思ったより深く切られていたようでこれはきっと助からないだろう。そう横たえると斬った狐の顔は剥がれいつかの日の弟の顔があらわになる。


「ありがとう・・・助かったよ」


そう聞こえたのはきっと本物の弟の声だろう。私も徐々に冷たくなっていく体を捨て彼のもとに向かう。


「来世は爺になるまで、皆と平和に暮らしたい」きっと神様がいるなら頑張った私たちの願いをかなえてくれるだろう。私の意識は暗闇に落ちて二度と戻ることはなかったのだった。

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