十二話 黒幕
私の意識は現代へ戻ってくる。
そうだ・・・何もかも思い出した。あの時死んだ兵士が生きているはずがないのだ。確かにあの日私は狐人の少女に魔法をかけられたのだ!あれは恐らく幻術・・・伝えなければ!伝えなければ!
そう思い声を出そうとしても喉からあふれてくるのは血だけであった
さらにふと思い出す。あの時確か一緒についてきた大名・・・
アマギの頭には小さな狐の耳がついているように揺らいで見えた。
兄の刀が私に差し込まれる。
私はそれを確認すると意識は深い闇へ消えていった。
最後の瞬間わずかに兄にイエキヨに思いが届いたような気がした
一騎打ちと同時ヒデキヨから紫のオーラが発せられる。それは強力な魔物にしか現れない特徴であった。すかさずイエキヨ様が勇者の剣をヒデキヨに差し込む、それから暫くが経ち泣きそうな顔をしたイエキヨ様が大名たちへと振り返るとそこに座っていたアマギの体めがけて思い切り剣を振り下ろした。
「えっ?」
途端にアマギだったはずのものが姿を変えてゆく、そしてその死体が姿を変え終わった時そこに倒れていたのはサンタユウ、村長の孫と言われあの日死んだはずであった狐人の少女とよく似た狐の魔人であった。
そのとたん頭の中にかかっていた靄がすべて払われ感じていた違和感が噴出する。
どうして村長は一度たりとも自分の孫の名前を呼ばなかったのだ?それに火災の勢いが強かったとはいえ骨も残らないような火災ではなかったのだ。それに村人たちも村長の匿っていた娘のせいで自分たちの村が焼け落ちたにしては今も大人しくイチマルを代表として慕っているのだ。村長の息子である彼も同様に匿っていたはずであるのに・・・
「一体だれが狐で誰が人間なんだ・・・」
広間で誰かがポツリと呟くが皆が同意見であった。私も違和感に気づいたもののでは村人が狐なのか、村長一家が狐なのか、それとも狐は少女だけで皆騙されていただけであったのか一切皆目見当がつかない。
広間ではお互いが疑心暗鬼になって刀を抜くものまで現れた。もちろん他国の人間であり他の人間より信頼の無い私達にも刀が向けられる。マグナの公式の使節であるヒイラに対して刀を向けたのだ。これでは両国で戦争が起きるかもしれない・・・
・・・ヒイラが公式の使節?
・・・貴族の娘婿なだけの研究員のヒイラが?
それでも優れた魔法使いであるヒイラであればこの程度の人数どうってことはないだろう
・・・それと同時に気づいてはいけない気づきたくなかった違和感に気づいた。私はまだヒイラが魔法を使っているところを見たことがないのである。
そもそもマグナまで戻らなくてもヒイラほどの魔法使いであれば長距離の念話で事足りるのだ。・・・そして頭の中で数々の疑問や確信が噴出する。
魔王は最後の一撃で魔力を使い果たし魔法が使えなくなっていること。
マグナの貴族であるはずの彼がマグナで数年間活動記録がないこと。
そもそもマグナ人以外貴族になれないのに教国出身のヒイラが貴族になっていること
最後にシルヴィアが魔法を打てなかったこと
シルヴィアが自害した理由
何もかもが不自然すぎたのに今までその違和感を認識出来ていなかったのだ、うわさに聞く狐の魔人の能力は人の過去の記憶への干渉と人に化けることである。
もし彼が狐の力を借りていたとすればすべての不自然にピースが当てはまる。魔王の力は人の不幸で増幅する、ここまで裏切りに裏切りを重ねなれたヒデキヨの感情などは魔王にとっての最大限の栄養素だろう。恐る恐るヒイラを見るとその姿はいつもの見られた聖女の面影残る姿では無く恐怖の対象、魔王であった。
「そうだよ・・・俺が魔王だ」
だか記憶の中のヒイラは、一緒に旅をしたヒイラは魔王のような人物には思えなかった。何より
「どうして勇者を、シルヴィアを・・・妹を殺したんだ?」
「いつかわかるよ、ペル」
彼はそれだけ言うと広間に隠れていたであろう狐人の魔族を連れて去っていく。隠れていたものだけでなく、広間に出ることを許されるほどの高位の家臣も何人も狐に姿を変えて去っていく。それと同時に皆に記憶が戻る。
あるものは明らかに寿命を超えて生きていた。
あるものは明らかに一度死んでいた。
いるはずのない者たちがそこにいたのだ。結局広間に残った人間っは半数にも満たない人間であった。




