十一話 狐
ヒデキヨが巡回していた警備隊にとらえられたという知らせが届いたのはあの戦が終わって半年が過ぎた頃であった。マグナからの援軍は結局町の復興に充てられることになり結果としてみれば高い買い物をさせられた訳である・・・ヒイラ殿には完敗だ。
「ヒデキヨをここに連れてこい」
「御意」
そうして待っていると縄を掛けられたヒデキヨとヒデムラ、ランマルがそろって引き立てられた。あの戦からかなりの日がたちその間つらい生活をしていたのであろう、彼らの顔には確かな疲労が見て取れた。
「俺と一騎打ちしろ!イエキヨ!」
この期に及んでまだそのようなことを喚けるのか・・・かつて配下であったクラマやアサマは冷めた目でこちらに寝返ったヒデムラの叔父に至っては殺意のこもった目で彼を見つめる。
それもそのはずアズマ家は流石に無罪放免とはいかず大名からの降格。ヒデムラの叔父を党首として今は小さな町を収めるだけの小領主になり下がってしまったのである。
ちなみに変わって大名に昇格したのはアカギ家である。彼にはずっと任せていたトキワを取り上げたのでせめてもの報酬であるが、彼からしてみればヒデキヨはラッキーボーイであるはずなのだがこちらも冷めた目で睨みつけている。
「一騎打ちしろ!イエキヨ!」
そう言って暴れるヒデキヨの姿は昔を思い出させた。私がまだ刀を握っていた時、私に挑んでは調子にのり勇者に、兄上に返り討ちにされていたその姿と瓜二つであった。あの頃は良かった・・・この勝負、受ける必要など一切ないそのようなことは分かっているがどうしても受けなければ過去の弱い自分と決別できない。そんな予感が私に予想に反する答えを言葉にさせる。
「いいだろう・・・縄を解いてやれ」
「陛下!?なりませぬ!絶対になりませぬぞ!」
アキタダが必死に止めるが私の揺るがない意思を感じたのだろう、諦めて引き下がる。いつだったかペル殿から聞いた兄上、勇者の夢は皆が平和に生きることであった。その皆にヒデキヨが入っているのなら・・・私はその願いをかなえる事は出来ないだろう。
兄上の形見、勇者の剣を構えヒデキヨへと向ける。
まさか一騎打ちを本当に受けるとは思わなかった。ここで俺が兄を殺せばきっと俺も殺されるだろう。そうなれば直系の皇族は全滅だ。滅びればいいこんな国なんて。そう思い兵士から借り受けた剣を構える。
視界がやけに紫に染まる。疲労のせいであろうか・・・いや私の体からこのムラサキは流れ出ているのだろう。周囲の皆が驚いたような顔をしている。
勝負は一瞬であった。
私が振るった剣は根本から折切り裂かれた。そして切り裂いた剣はそのまま私の胸へと到来する。
「何やってんだよ、おバカ」
兄上が語り掛けてきたような気がしたと同時これまでの紫に染まった思い出から憎しみが溶け出してゆく。だんだん見えるようになってきた思い出の日々に私はこれまでの行いを悔いるばかりであった。どうして?一体なぜ私はこのようなことを・・・後悔ばかりが去来するなか私は一つの記憶を思い出す
「初陣おめでとうございます!」
ヒデムラとランマルが祝ってくれる。私の初陣は近くの魔族の討伐らしい、どうやらその魔族は近隣の村から女を攫っているらしい。許しておけない敵だ
「気を付けていって来いよ」
二人の兄上が私を送り出してくれる。本当に最強な勇者の兄上と気弱だけど誰よりも優しいイエキヨ兄上私はこの二人と一緒に帝国を最強の国にするのだ。
たどり着いた村はシキシマ家の領地にほど近い村であった。村長と名乗る男から詳細を聞きあたり一帯に兵を派遣し捜索する。どうやら攫われたのは村長の娘らしい、見つけてやらねば。そう思い捜索の結果を待っているとついに魔人を見つけたということだった。
魔人は大きな鬼であった。私たちは苦戦したがついに鬼を倒すことに成功した。がそのあとだった。
「初陣勝利おめでとうございまsッ」
「おい!どうしt」
付き従っていた兵が一人、また一人と倒れる。息を確認しても脈がない。私にはこの現象に耐性があったのであろう最後に息をしていたのは私だけとなった。あたりを見渡すと鬼の死体の陰から出てきたのは幼げな狐の少女であった。なんの魔法なのだろうか・・・私に魔法をかけると私は気分がよくなり段々と意識が遠のいていった。
ヒデキヨが意識を失うと狐は足早に去っていった。
この作戦の犠牲者は0名と報告された。付き従ってくれた村長の次男達も皆何事もなく村へと戻ったのである。




