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七話 クラマの戦い 前編

クラマ領 カツラギ・イエアキ


クラマ目前に位置するクラマ平原には既に敵の布陣が整えられていた。綺麗に並んだ防御陣。簡単に私たちを通すつもりはないようであった。クラマ家の当主ツネマル殿とは魔王軍を相手に何度もともに戦ったというのにいざ平和になればこのように敵同士で相まみえるとは皮肉なものである。


「イエアキ様、こちらやや寒うございます。私の羽織でよろしければ着てくだされ」


そう言って腹心で従妹のイエツナが羽織を差し出してくる。私の軍勢は前方にイエツナの軍を、後ろを私が右翼を家臣のアキスケに左翼に息子であるアキヨシを配置した。総勢は二千とはいえ領内ですぐに集めれる常備兵に戦上手な家臣も多くつれてきたので不安はない。


「敵の右翼・・・あれはご次男のトキマル殿ですな。攻撃を仕掛けてきますぞ」


三男のランマル殿に比べてトキマル殿は武芸に不慣れと聞くが先陣を切ってくるとはなかなか優秀である。


「魔法隊、魔法用意!放て!続いて騎馬隊突っ込め!!」


敵の右翼が魔法を放ってきたことにより静寂だった平原に喧噪が起こる。前線で声を必死に飛ばしている若武者がトキマル殿だろう。本来なら次代を託せるほど良い青年であるのに敵となるのは残念である。


ぶつかったのは息子アキヨシが守る左翼であった。


最初は押されていたようだが徐々に押し返す、息子には経験豊富な家臣を多く付けている。これくらいはやってもらわねば困るというものだ。そして逆に攻め続けてきた敵の右翼に隙が出来、そこを前方に展開していたイエツナが逃さずに叩く、また戦場の反対側アキスケの右翼でも敵の左翼を押し込み若干こちらが優勢になっているようであった。


「申し上げます、どうやらマツシマの包囲にもクラマの旗が確認できたとのことです。」


伝令の兵士が陣に入ってきて報告を挙げる。どうやらここにいるクラマの軍勢は本当に足止め目的で本体ではないようであった。どうりで敵の抵抗が弱いわけである・・・そうであるならば早く蹴散らしてマツシマに救援物資を届けに行く決死隊の援護を送るべきだろう。


その時敵の右翼が完全に崩れたのが目に入る、陣内にいる他の家臣たちも同じ意見のようだ


「突撃する!クラマを一兵残らず蹴散らしてやれ!」


敵の右翼で最も秩序を守っていた一団に徹底的に魔法を浴びせさせる。さらに敵の抵抗が弱まったように見える。


私も自分の直属の兵を率いて追撃戦に加わる、道中伝令から敵の名のある武士を打ちとったという報告がなされるたび私の周囲は更なる熱気につつまれる。そしてついに


「申し上げます。クラマ家次男クラマ・トキマル打ち取ったようでございます」


敵の中でもっとも壊滅していた敵右翼の大将であるクラマの次男を打ち取ったのだ。あの秩序を守っていた一団、あそこがトキマル殿の本陣であったらしい。魔法で護衛が壊滅し最後はわが軍の兵に囲まれて壮絶に討ち死にしたそうだ。このままツネマル殿の首を取れれば・・・

しかしその時彼らの部隊は上空から見れば突出してしまっていた。


「今だ撃てぇぇぇぇぇ」


いつの間にか平原を超え小さな森の街道に入っていたようであたりに潜んでいた敵の魔法兵から一斉射撃を浴びる。私を守ろうとして周囲にいた家臣たちがその身を挺して盾となる。何発撃ち込まれたのだろう魔法の音がやんだ時にはそれまで万全であった我が本体はほとんどが骸となって地に付していた。


「逃げてくだされ殿」


「アキツナ!?」


「どこかの味方が伏兵の後ろを取りましたが逆に逃げ場のなくなった敵はこちらへ流れてきます。ここは私たち前衛が食い止めますので、早く逃げなされ」


「すまない・・・アキツナ後で会おう」


生き残った少数の家臣、兵と他で戦っていた部隊と合流するため撤退する。元居た平原に戻るとそこには五分の戦いで追撃出来ず結果として最も損耗の少なかった右翼を除いてボロボロになった私の軍勢がいた。


受けた報告では途中で罠だと気づいてアキスケが助けに入ったようだ。それによって九死に一生を得たらしい、彼は何処にいるのか尋ねると、帰ってきたのは死体となって敵に持っていかれたという報告であった。その後も詳しい報告が上がってくる。


前衛の従妹イエツナ死亡、左翼の大将アキスケも死亡。私の長男であったアキヨシは行方知れずということであった。敵は大将を率先して魔法で狙ったのだろう。兵の損耗はさほどのものであったが指揮官クラスの壊滅。


対して相手方は右翼の対象トキマルの死亡。指揮官クラスはそれだけであった。


初戦は第二皇子陣営の敗北で幕を閉じたのだった。

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