五話 同盟
暫くたち席を外していたイエキヨがアキタダを引き連れ戻ってくる。煮え切らない顔をしていた先ほどまでに比べて随分とたくましい表情になった。
「お待たせ致しました、ヒイラ殿。そちらの、マグナの申し出お受け致しましょう・・・つきましては具体的なマグナからの支援についてお聞きしたい。」
「お受け頂き有難うございます。まず我がインペウロ家と旗下の貴族家より魔術師を、それにバーンズ家にも伝手がありましてな。確実にそこからも引っ張ってきましょう、残り二つの貴族家は我等が功績を独占するのを良しとはしない性質でしてな我らが兵を出せば乗ってきましょう。」
ヒイラが援軍の内容について語る。おそらく内容的にレイオットも協力してくれるだろうが無断で決めるとは・・・あとが恐ろしいものだ。援軍についてはアキタダも納得したようでイエキヨにうなずく。
「十分かと思いまする。後はヒデキヨ陣営の切り崩しですな」
イエキヨの決意以来とんとん拍子に話が進む。もともと頭のいい人間であるので変にすれ違うことはないのだ。あとはどれだけ被害を減らせるか、そのためにヒデキヨ陣営の切り崩し案を計画する。
「まずヒデキヨ側に属する大名家として、会談にも付いてきた傅役のアズマ家、クラマ家この二家は厳しいだろう。よって狙うのは国境線のために武力に頼ってきたが立地の悪くないアマギ家、同じく連邦と隣接するアサマ家になる」
「で、どちらを狙いますので?」
「当然本命はアマギ家だ。お二方ともトキワを管理するアカギ家の当主とは面識もありましょう。書状にお二人の名前もお願いしたい。」
「かしこまりました・・・ペル。あれを渡してもいいんじゃないか?」
正直に言って病床の皇帝とあの生意気小僧に渡すくらいなら彼に渡す方が良いと私も思っていた。同意であると頷き袋から勇者の剣を出す。
「「それは!?」」
イエアキとイエキヨが同時に驚くアキタダはどうやら本当に二人には何も話していなかったようだ。
「ご存じの通り勇者の剣です、いずれ誰か皇族の方に渡そうと思っていましたが貴方が最もふさわしいでしょう。御持ちください」
これで妾の子という微妙に欠けていた正当性にも強力な補正が入った。だが、「書状だけでは人は動かない」そう言ってイエキヨ様が聞かないのでアマギ家まで私とイエキヨ様、護衛にアキタダとその家臣でアマギ家まで向かうこととなった。
アキタダは北将軍と呼ばれヒデキヨ傘下で南将軍と呼ばれるアズマ殿と並んで帝国最強の武士と呼ばれているこれ以上ないほど安心できる護衛であった。
翌日早速アマギ家へ向かった私たちだが、その行動を監視する者の存在には気づけなかったのだ。
「これはこれは、イエキヨ様にアキタダ殿・・・それにマグナの使者殿ですかよく我がアマギまでお越しなすった」
「今宵一晩世話になるぞ、カネムネ」
アマギ家当主アマギ・カネムネは豊かな髭に豊かな腹をこしらえた武闘派とは思えない見た目の男であった。それでも眼光の鋭さは歴戦の勇士のものであり、この男がいくつもの修羅場を潜り抜けたことを本能で理解させる。
「私の下についてほしい、カネムネ」
「それは、今後わが家に貧しよということですかな?」
カネムネの眼光がより鋭さを増す、それどころか殺気すら感じるほどである。イエキヨ様も冷や汗を流しながらも懸命に首を振り説得を試みる。
「アマギ家は法国との国境だ。法国との貿易をこれまでアカギ家を通して皇帝の専属としていたがそれを改める。一定の税こそ課すがトキワを含めてアマギ家に管理を任せる」
「なるほど、それならば利はありましょうな・・・アカギ家はどうなされますので?」
「これまでの取り分と同じようになるほどの代地を与える。」
「そのような土地は帝国に余っていましたかな?」
「これから出来るだろう・・・アズマやヒデキヨの領地などな」
二人の視線が交錯する。何分、何十分経っただろうか、口の中が乾いたころ予約カネムネが柔らかな笑顔を浮かべて口を開く。
「変わりましたな・・・イエキヨ様。以前は優しいだけの人でしたが厳しさを持ち合わせたようですな。それに腰に差したその刀・・・随分前を向かれた。」
「では・・・」
「もともとヒデキヨ様に従っているのは我が家の今後のため、今後の不安が無いのであればイエキヨ様にお仕えすることなんら躊躇いございませぬ」
「アマギ家はヒデキヨ様に従いましょう」
帝国 アズマ領
「マグナの使者とイエキヨがともにアマギ家へ向かっただと?」
「はっ」
配下のシノビにイエキヨ様の動向を探らせており、その動向が知らされたためヒデキヨ様へと報告すると烈火の如くお怒りになられた。今一つ気性が穏やかになれば仕えやすいのであるが・・・
「それで、アマギ家はどうなった?」
「イエキヨ様のもとに下ったようです・・・」
「あの、腐れ爺!金だけで動きよったな!これまで俺が働かせてやった恩も忘れやがって」
そういってヒデキヨ様は尚も大暴れする。ひとしきり暴れて落ち着いたのだろう、ひどく冷酷な目でこちらを見て声を上げる。
「下人を攻めるぞ、クラマとアサマにも兵を出させろ」
「御意」
もはやこの方は止まらない。止まれないのだろう。ならば傅役として最後まで忠義を尽くそうではないか私は配下に戦の支度をさせそう決意するのだった。




