三話 三者会談
翌日、これ以上私たちに危険が及ぶと外交問題になりかねないと判断したのか、第二皇子、第三皇子双方の合意で敷嶋で両国の会談を執り行うことになり、第二皇子、第三皇子両者がこちらへ向かっているらしい。両者を待つ間暇であるので城下を見て回ろうと門まで向かうとイチマルが門番に頭を下げていた。
「頼みます!私をどうか兵として雇ってください!第三皇子へ復讐させてください!」
彼のような一般人であっても両名の対立の噂は広まっているのか、昨晩悲しみを忘れたようであったがそれは代わりに復讐心へと変貌していたようであった。丁度朝馬で散歩に出かけていたアキタダが戻ってくると今度は彼に頭を下げる。
彼だけなく、村の若者の何人かはイチマルに続き、兵士として志願しに来ていた。村がなくなった悲しみを違う方向へと向けようとしているようだ。
「シキシマ様、どうかどうか私を兵として雇ってください!」
「うむ!許す」
アキタダは迷うことなく彼を雇い入れることにしたようだ。そうでもしなければ彼は悲しみに潰されてしまう。幾多もの戦場を駆けてきたアキタダはこういった者もよく見たらしくその対応も手慣れたものでった。
翌日から私は馬としてアキタダと共に散歩に出かけるようになった。いつぞやの役人もともに散歩に出かけていたがどうやら乗馬が苦手なようで落馬しかけてはアキタダが助けていた。器用なものであるが、仕える側の役人がそれでいいのであろうか・・・
ちなみにその頃ヒイラはもっぱら暇を持て余しており町中へ遊びに行ったと思ったらふらっと帰ってきて仕事を終えたアキタダと毎晩のように酒を酌み交わすだけの生活であった。名義上とはいえ彼の娘であることに頭痛を感じる。
暫くし第三皇子の軍勢がシキシマに到着し、第二皇子を待つのみとなったが、すでに会談の準備はなされていた。第三皇子とその家臣たちヒイラ、アキタダと役人、見たことのない大人が一人と私は一部屋で対面していた。
「この度はマグナから遥々良く来てくださった、皇太子のムサシ・ヒデキヨである」
「ヒデキヨ様の傅役、大名のアズマ・ヒデムラと申します。」
「同じく家臣にして大名クラマ家の三男クラマ・ランマルです。先日は大変申し訳ございませんでした」
第三皇子側が名乗り、私とヒイラが自己紹介する。傅役というのは最初に皇帝に付けられた家臣であり、腹心である者でる。アキタダはまだ決まっていないのに公式な外交の場で皇太子と発言するヒデキヨに怒り心頭のようであった。次に役人であったはずの男が口を開く。
「第二皇子イエキヨと申します」
「傅役のシキシマ・アキタダと申します」
「同じく家臣の大名カツラギ・イエアキと申します」
役人ただの役人でないことはなんとなく察していたが第二皇子であったらしい。恨めし気にアキタダを見ると目線をそらしていた。あとで文句を言うとしてもう一人の見知らぬ大人は第二皇子の家臣であったらしい、どことなくアキタダと似ているのでもしかしたら親戚かもしれない。
「マグナの周辺の強力な魔物との対峙にあたる支援要請ということでよろしいかな」
「その通りです」
まずは会議の議題について双方の確認が取られる。私たちがムサシに来てからもなおもマグナでは魔物は活性化しているらしい。学園に無事合格したレインからは学生にも討伐の補助の依頼が来ていると念話が送られてきた。
「であれば、この要請受けてやる。ただし相応の対価・・・トキワは完全に帝国のものとするそれでいいな?」
ヒデキヨが気だるげに話しを進める。第一、そんな権限はないのに上から目線の彼に対してヒイラもだんだんと怒りを貯めているようだ。
「待て、ヒデキヨ。マグナへの支援となると莫大な金額になる。今の帝国にそんな余裕はないぞ」
「誰を呼び捨てにしてんだ!半下人!」
イエキヨが待ったをかけるがヒデキヨは止まらない。【半下人】いつからだろうかヒデキヨはイエキヨを呼ぶとき最大限の軽蔑を込めて呼ぶ名前である。場が混沌としてきた中ヒイラが何とか取り持とうとする。
「ヒデキヨ様のご提案、私一人では決断出来る代物ではございませぬ故、一度マグナへその旨伝える必要がございます。返事は書面にしてまた届けさせていただきます」
なんとか場を収めたヒイラであったが最後っ屁とばかりにヒデキヨが爆弾を残していく。
「ならばついでにマグナへこの下人と戦になれば俺に加勢するように伝えておけ」
そういい捨てると彼は乱暴に部屋を後にする、ランマルとヒデムラはっ申し訳なさそうに一礼して彼を追いかける残された私達にも微妙な空気が流れるが口火を切ったのはイエアキであった。
「そういえば初めましてでございますな・・・改めてアキタダの弟にしてカツラギ家の当主のイエアキと申します。」
「私も正体を黙っていてすみませんでした。第二皇子のイエキヨです。ヒイラ殿、ペル殿が馬であることはアキタダが聞いているから大丈夫ですよ」
そして残されたメンバーで第二皇子側のマグナへの支援案を話し合うことになった。先ほどから黙っていたヒイラが口を開く。
「殿下、一つご提案があるのですが・・・」
「私たちマグナが貴方を支援します。その変わり貴方が帝位に着けば私たちに支援をする。如何でしょう?」
静かになった一間にヒイラの提案が響く。広間から見える中庭には快晴であったはずの空から雨が降ってきた。




