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二話 帝国の内情

村長の家の火災は村をすべて焼き尽くす勢いであった。ランマルは自分たちの不手際で私たちを危険に晒したと過分なまでに護衛を付けてシキシマ領へ送り出してくれたが、ニヘエと数人の村人は住む場所もなくなったので帝国軍で働くそうでランマルに付いて帝都へ戻っていった。


「では、自分達はこれで失礼します」


ランマルがつけた護衛と離れて私とヒイラはシキシマの城へと向かう。私たちのことはすでに聞かされていたのであろう、すぐに城主と面談が叶う運びとなった。


「私がこのシキシマを治めるシキシマ・アキタダと申す。まずは我が国のご無礼、大変失礼いたした。」


「ヒイラ・マギア・インペウロです、こっちは娘のペル」


ヒイラとアキタダが挨拶を交わすが私はこのアキタダという男を知っている。私が生まれた牧場はこの男が所有するものであり、仲間内でもっとも足の速く毛並みの美しかった私は彼に献上され、その後聖女の馬として献上されたのだ。要は彼が私の初代主である。


「しかし何故我らがいるにも関わらずあのような襲撃を・・・」


「第三皇子殿下の指示なのです、彼は従っただけ罪はないとは言えませんがどうか許してやってほしい」


彼が話した内容はアカギに聞かされていたものよりより深刻な話であった。


この国で今発生している跡目争い、その内実はほぼ内乱と言っていいほどのものであった。この国は大きくわけて八人の大きな貴族【大名】が権力を有しており、そのうち武闘派、領地の拡大、争いの継続によって己の勢力の維持を目指している者たちが第三皇子の派閥に付いて兵を貸しそれを基に第三皇子が功績挙げのため各地の魔族がいると言われた村であれば有罪無罪問わず襲撃しているとのことであった


反対に次男は争いを好まず、治世で帝国の安定を目指しており残った四名の大名が支持している。妾の子であるものの、長男の勇者と同じように皆から好かれる性格をしており時期後継者の本命だと目されている彼は帝国の統治にも一枚嚙んでおり、私たちの来訪も第三皇子には日程しか伝わっていなかったらしい。

だんだんと第二皇子側に権力が集まっていく現状に焦った第三皇子は近頃一層暴力的な手段に出ているとのことだ。


さらに皇帝は勇者の死のストレスか最近認知症のような症状を発症しており後継者の指名を二転三転させているといったありさまであったため最早争い無く皇位を継承することは不可能なほどこじれているのだった。

ちなみにシキシマ家は第二皇子の支持を表明しているらしい。


いずれ私が皇家の誰かに返そうと思っている勇者の剣、これは争いの火種になるのではないか。そんな考えに至った私は彼が信頼できる人物であること含めヒイラにそのことを念話で伝え、私の正体を明かすことの了承を得る


「シキシマ卿、言いずらい事よく私たちに教えてくださいました。そんなあなたですので私たちも腹を割って話させてもらいましょう」


ヒイラが言い終わると私は中庭に出て馬の姿に戻る、はじめは呆気に取られていたアキタダだが私をじっと見つめると思い出したかのように声を上げる


「聖女様に献上した馬じゃないか!」


「嘘をついたことは誤らせてもらいますが、これをご覧になってください。きっとご理解いただけるかと」


そう言って私は持っていた袋から勇者の剣を持ち出すとアキタダは顔面を蒼白にした。聞けばこの剣は勇者の剣であると同時にこの国の正当な皇位継承者の証であるとのことであった。


「・・・その剣を持っていることはもはや今の皇帝陛下にも見せない方がいいだろう。はやく会談を済ませてこの国を出られよ」


「意外ですな・・てっきり第二皇子に渡してほしいとでも言われるのかと」


「貴殿達が私を信じて教えてくれたのにどうしてそのようなことが出来ましょう・・・私たちが、第二皇子殿下が皇帝となられたとき改めて、お引渡し願いたい」


やはり、彼は信頼に足る人物であったようでヒイラも彼に好感を抱いたようであった。その後は宴席となり二人はいつの間にか下の名前で呼び合うようになっていた。私は人間の姿になると少女であるので酒は飲めず仕方なく先に退散する。




イチマルたち村人の中でシキシマへ来た者たちには仮の住まいがあてがわれており、様子を見に城下へ向かう。村人にイチマルの居場所を教えてもらい彼のもとに行くと、彼は誰かと話しているようであった。


「あぁ・・・ペル様ですか。こちら城の役人様だそうで私たちの今後を支援してくださると」


「マグナの使者の方ですね。この度はとんだご迷惑を・・・」


城の役人にしてはえらく若い男であったが、若くして役人になれるだけのことはあり、迅速に村人たちへの支援を決めていく。イチマルは村長を失った以上村の代表の代行をせねばならない立場であり悲しみから無理やり抜け出したようであった。


ただ尋常であれば誰かしら自分たちの避難の原因の一端であるイチマルに反抗しようとすると思うのだが誰も反抗するような態度は表していなかった。


一通りやり取りを終えたのか役人が城に戻るというので一緒に戻ることにする。


町を歩けば彼はよく慕われているようで、露店の店主から井戸端のおば様がたまで挨拶を交わしていく。城に戻るとアキタダとヒイラと合流できたがいつのまにか役人の姿はなかった。

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