12話 さらば法国
法国と帝国の国境にある町トキワに到着したのはマグナから出発して2週間ほどたったころだった。この2週間私たちはシルヴィアのことをひたすらに語り合い棲ごしていた。彼女が生きていれば、きっと二人とも杖で殴られていただろう。
「やっとついたな!トキワに来るのは久しぶりだぜ」
ムサシ帝国はもう一代前の魔王を討伐し、周辺にあった小国を勇者が統一したことを始まりとする国であった。初代勇者はこの世界ではなく異世界から召喚された存在であり、勇者の生まれた異世界の国の様式を取り入れた国家である帝国は他の大陸の国に比べ異質な文化が発展してた。
町の検問はヒイラのマグナ貴族証と正式な国交の任務である書類で即座にパス出来たため、速やかにトキワに入ることが出来た。やはり彼を連れてきたのは正解だった。マグナ側の管理者は私たちが来ることを知らさせれていたため入ってすぐに挨拶して解散となる。
「俺はこの町のムサシ側の領主に挨拶にい行ってくるが・・・そう時間はかからねぇだろう。ペルはどうする?」
『私も人になって付いて行っても構わないか?』
「それはかまわねぇが面白いもんじゃねぇぞ・・・あっ言うの忘れてたが身分の保証のために今日から人の時のお前は俺の娘ってことにするからな」
ヒイラの娘になるなんてなんの罰ゲームだと言いたいが、彼が嫌いなわけではない。むしろシルヴィアの兄なのだ彼の娘になるということはシルヴィアの姪になるということである。最高だ。だが、彼は少々暑苦しい・・・うっとうしいのである。誠に不本意ながら、身分の保証がなければこの先人でいるときに面倒になってしまうため、しぶしぶ彼の提案を受け入れる。
ヒイラについて向かった建物は見覚えがあるものであった。なんといっても私は帝国生まれの馬なのだ、この屋敷と呼ばれる和風建築になつかしさがこみ上げる。応接間に通されてすぐにこの町の領主が現れた。
「インペウロ殿、お久しぶりですな・・・そちらのお子さんは?」
「これはこれはアカギ卿、お久しぶりです、一応私の娘です、挨拶しなさい」
「ペル・インペウロです」
インペウロと名乗るのに気恥ずかしさを感じる。アカギと呼ばれた男は着物という帝国の衣類に身を包んだ初老の男であった。
「確か聖女様が茶色の髪でしたな・・・叔母に似たのですかな。儂はヨシシゲ・アカギ、この町を帝から預かる爺ですぞ、以後よろしくな・・・で、この町には如何ほど滞在を?」
「ムサシ様と魔王討伐失敗の件で今後の魔王城近辺の強力な魔獣に対する防衛の計画を立てなばなりませんので、明日すぐにでもムサシ帝国に入らせていただきたい。」
「防衛・・・ですか?攻勢ではなく?」
アカギが話したないようは驚くべきものだった。魔王がもはや脅威になりえないことは法国もつかんでいたが魔王亡きあとの魔族たちについては情報を得られていなかった。各地で拠点を作って抵抗していた魔族だが帝国軍によって次々に蹴散らされているらしい。
「しかし、魔族の拠点など攻撃するだけ損でしょう・・・一体何故?」
魔族の拠点の攻略といえば聞こえはいいが、魔族は拠点に執着しないのだ、危険が迫れば即座に放棄する。さらにあくどいことに彼らがそこに居ただけで彼らの纏う魔力、人間にとっての毒素が滞留し向こう数年間は使用できないありさまである。
「現在のムサシ帝国では、跡目争いが起きていることは御存じか?」
そのような話は法国では聞いたことがなかったし、ヒイラも初耳であったのか驚いた顔をしている。私たち父子が揃って知らない反応をしたため、アカギは事の顛末を話出した。
「ムサシ帝国の皇太子が代々勇者を継承してきたのは、ご存じですな?そして、魔王との決戦で勇者様はお亡くなりになられた。本来であればご次男のイエキヨ様が勇者になるはずだったのですが・・・」
「ですが?」
「イエキヨ様は妾の子でしてな、そのうえ武力を嫌っております・・・そこで三男のヒデキヨ様が自身が皇太子に・・・勇者になりたいと。そのため、少しでも功績を稼ぐため・・・」
「魔族を狩っているわけですか」
帝国を起こした初代皇帝は先代の魔王を倒した勇者であり、その血族が今の皇帝家である。故に勇者は代々の皇位継承者がその地位を名乗っていたのだ。今代の勇者も例外ではなく、この国の後継者だったのだが、彼が死んだことによりこの国は今騒乱の最中だということであった。
さらに聞いた話
しかし今大の皇帝はいまだ存命であり、ヒイラの交渉自体になんら影響を及ぼすものではないし、私も勇者の装備を返還し弔ってやれればこの国にそれ以上の用はないのだ。ゆえに所詮は他人事であると思って楽観視していたのだが、私とヒイラはこの国の泥沼の抗争に巻き込まれることになる。




