11話 別れ
あれから2か月間、レインは毎日レイオットの家臣から教養や、基礎的な魔法の扱いから剣の扱い、魔法学校ではバーンズ家との繋がりを隠すため、寮に入ることになっているので最低限の家事まで叩き込まれていた。そしてどうゆうわけかそのしごきは私にまで降りかかっていた。
毎日の稽古はヒイラが騒騒しくバーンズ家に突撃することで終わりを迎える。いつも満足のいく夕食であったが今日は格段と豪華な食事が並べられる。
「さて、いよいよ明日は魔法学校の入試だな!基本的な魔法と教養は十分合格できる圏内だし今日はさっさと寝ろよ」
「ヒイラ!貴様この2か月うちに入りびたりやがって!もともと研究といってほぼ法都にいなかったやつがいったいどうゆう風の吹き回しだ」
インペウロ卿とはじめは呼んでいたレイオットだが、日に日に態度はフランクになり気づけば、呼び捨てにしているほどであった。レインは合格すればこの家から居なくなる。私もヒイラもいつまでもここにいるわけにはいかないのだ。このメンバーで食卓を囲むのも今回が最後になるだろう。
「ペルちゃんも明日レイン君と一緒に旅立つんだね」
「まだ、3人の遺品を故郷に届けれていないからね」
私もこの2か月人化の魔法を練習していたため、話すことは随分と流暢になったと思う。そして、私も明日レインが試験に向かうのと同時にこの家を出ることにしたのだ。
「俺も、もう少ししたら仕事でムサシ帝国に向かわなくちゃならねぇ・・・ペル一緒に行くか?」
ヒイラも仕事でムサシ帝国、勇者の出身国に向かうようなので、ともに向かうことになった。彼のマグナ貴族の証はどこに行くにしても便利なので、存分に利用させてもらうことにしようとしよう。食事が終わると馬に戻った私をレインがブラッシングしてくれた。
かつての一方通行のコミュニケーションとは異なり、今は私も念話で話すことが出来るがポツリポツリと話すレインの言葉をただ聞いていた。その後暫くそうしていると冷えるから戻ってこいというヒイラの声で我に戻る。
「ペルさん、あなたがあの日私を助けてくれたから明日クレント族を助けることが出来るかもしれない一歩を踏み出せるんだ・・・ありがとう。ペルさん」
『私こそ、レインがいたから寂しさを感じずに旅が出来たんだ。ありがとう」
翌朝、早くにレインはバーンズ家の敷居を後にした。その見送りには屋敷の中限定だが普段は地下にいることを強制されていた屋敷のクレント族、レインの親戚たちも顔をそろえていた。彼らは正式にクレント族への差別の撤廃宣言に伴って小さな家を都市内に与えられることになっているそうだ。
昨日言いたいことはすべて言ったそういわんばかりに大きく一礼し「ありがとうございました!お世話になりました!」と叫んでレインは小走りでバーンズ家を後にする。しばらく見送っていたがふとヒイラが
語りかける
「で、レミーの、お前さんの娘の杖・・・俺が言えたものじゃないが本当に良かったのか?」
「決めたことだ。」
レミーの杖はレインに渡されることになった。といっても無事に合格したのちにバーンズ家から呪われた杖を扱える者に託すという形で渡されることになっているため、関係性はばれることはないだろう。本来であれば必要になった時に貸与する方針であったが、レイオットが入学祝いとして渡すそうだ。レインが落ちる事なんて何一つ考えていない信頼しきった眼をしていた。
そのまま無言でいたが私達もレインを見送るとレイオットに別れを告げる。
「寂しくなるね・・・」
『全力で念話を練習していつか旅先から連絡しますね』
「それは楽しみだ・・・ヒイラ、ペルちゃんを頼んだぞ。それに・・・すべてが終わったらここに帰っておいで・・・私も妻もレミーも待っているからね」
『ありがとう、レイオット様。じゃぁまた』
「ヒイラは・・・また学園で会うか。帝国で仕事を終えればすぐ戻って来いよ。じゃ、またお会いしましょう」
春先にこの国に来たのだが、門を出るとそこには真っ赤に染まった紅葉が街頭を飾っていた。
見慣れた学園都市を後にして街道を進む。魔王の脅威でやむなく避難してきた者たちも魔王の脅威がなくなったことが発表されると故郷に戻ることになったのだろうか学園都市へ続く街道は人でごった返していた。
街道を警備する中には見知った顔も居り、先日私たちを襲った野盗達は罪をしっかり償ってから故郷に戻るらしく、今はボランティアで街道を埋め尽くす人の護衛を行っているそうだ。
彼らの実力は勇者パーティーを近くで見てきた私からしても大したものであり、人々の安全は守られるだろう。
歩き続けて少ししたのち、マグナへつながる大きな街道からは逸れ帝国へ続く街へ通じる舗装もされていない街道に姿が変わる。次の目的地は帝国とマグナが共同で管理している両国の国境に位置する町、トキワへ向かうのだった。




