百合小説【第40話】
「さゆりんだ久しぶりぃ」
久しぶりと言いながら実は3日振り程である。久しぶり…とはいつからだろうか?仕事用のスマホはあるが、家用のスマホはまだない。というのも家用のスマホは壊れたままで、倒れている間の状況が把握できてない。
「どうも…その…」
「じゃーん見てこれパンフレットヤバくない」
ことを察したのか、それともたまたまか、私が気になっていたパンフレットのデータを見せてきた。
「なんで友里恵が誇らしげに言うんねん」
「だって今までのパンフレットこれよ?!これが!これになったん!しかもうちらまだ1年だぜ」
いつの間にか西条さんと瑞稀ちゃんが仲良くなっている。学祭マジックとまでは言わないが、女子同士だしこういう機会があった方が絡みやすくはなるかと納得したような頭でいる。
「さっちゃん」
「瑞稀…これ全部…?」
「さっちゃんの思った通りかな?」
パンフレットの表は業者に頼んだような凝られたビジュアルで、夜景に灯篭で作られた龍が月光を浴び昇っている。ねぶた…なんというかねぶたを連想させる。
「すごい…」
「あらあらうれぴよ」
少しページをスライドして中を覗くと、私が提案した構成が灯篭を模した背景と上手い具合にマッチする。文も読みやすく想像以上のデザインで驚かされる。
「文書は人文と」
巻末辺りに関わった人たちの集合写真が載っている。私が休んでいた時に撮ったものだろうけど、私が居なかったせいか右端に嘉陽田さんが撮ったであろう写真が上手く加工されてそこに載っていた。
「私遺影みたい」
瑞稀が背中を丸め抱腹絶倒して、私の背中を笑いを堪えるように叩き始めた。釣られるように西条さんが笑いつられて私も笑ってしまった。中学の卒アルを引っ張って来られずに済んだだけまだ良かった気がする。
「まだ提出してないっしょ?」
「まだしてないね」
「これからや撮ろうや」
顔写り自体学校から控えるように言われているが映っていいのだろうか。幸いにも小規模開催だからともいいつつ写真に映るのがそこまで好きな方では無い。
「どちてさ」
「私…ちょっと…顔良くないし」
西条さんの問に答えると、両頬を右手でつまんで顔を下ろすように引っ張った。
「ビジュいいだろうがよォ…う○ちゃんみたいな髪型にしてるしさ!」
「私なんかがそんなう○様に近づこうなんて大変おこがましい事でして」
「とか言って髪型う○ちゃんっぽくって言ってたくせに」
「とはいえ角っぽく髪巻いてないし、ね」
「かよちんから聞いたよ〜う○ちゃんの話で美容師さんと盛り上がったって、それって好きじゃん」
「それは…その…ね!うん。その」
「メイク得意なやつ!」
「私が来た!」
隣にいた瑞稀が胸を張り両手を腰にやる。
「いや元々いるやないかい」
「衣装持ってるやつ!まぁ居ねぇよな」
気が付かれない程度に胸の下辺りまで手を上げるが西条さんがそれを見放さなかった。
「さゆりん?!」
「いや…その…いいかなって…。買ってみた。」
目を輝かせるようにこちらを見つめられる。
「今度持ってきてくれ。」
仕事を放棄して、30分ほど私の顔を魔改造された。
手のひらサイズの鏡を斜めがけバックから取り出し、私の顔を見せてくる。自分の顔がういちゃんになってる。
「完璧だな、抱きてぇ」
「嫌だが」
マシュマロを捌くような速さで返答するも「ママぁ」と声高く西条さんが当たってくる。そういえばそういう人だったと今思い出した。せめてう○ままにしてくれ気持ち悪い…なんて私もママ呼びたし人のことが言えない。
「黒髪ういちゃんってそそるくない?」
西条さんが抱きついてきたが少し言葉に詰まって怪訝そうな表情で胸を叩いてきた。
「ここ解釈不一致」
強情にも程がある。
「これでもサラシ代わりにタオル巻いたんだぜ」
「よし!知らん!」
西条さんが諦めてまた抱きついてくる。子供のように押しが強く気が引ける。瑞稀は私を見つめて悩むように顎に手を添えている。
「あとカラコンかなぁ」
「写真♪写真♪」
瑞稀の独り言に西条さんが割り込み、ポケットからスマホを取りだした。そのまま写真をツーショットで写真を撮り始め、その間に瑞稀が割り込んできた。
「単体もいい?」
「えぇ…まぁ…別に」
瑞稀がカメコのようなポージングでこちらを撮り始める。
「ポーズお願いします」
へ?
「う○ビーム打って!」
「こ、こう?」
「聖なるインターネットに血の雨が降り注いだ日…」
「暗唱すな」
「ぷ」
西条さんが暗唱し始めると本気の瑞稀が真面目にツッコミし馬鹿馬鹿しくて微笑をかました。
「お、いいよいいよそれそれ」
楽しいなぁ、卒アルの写真、いつ撮るのかなぁ?
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