百合小説【第39話】目が覚めたら病院ベッドの上で
「さゆりん?過去1クマやばいよ」
「あー…うん。大丈夫」
ここ最近は睡眠という睡眠をあまり取っていない。頭は働かず、考えることができなくなり口、で話さないと物事をまとめられなくなるほど疲弊している。
「これは大丈夫じゃないね」
嘉陽田さんに寄りかかりながら歩行をしているが足が思うように動かない。似たような生活をしている嘉陽田さんが何故ここまでピンピン動けるのかが私には分からない。
「芸術どうなってるの、連絡つかないんだけど」
二藤は事件以降完全なる司令塔の位置に確立した。例の、キャプテンシーという名前のものなのかと奇異目で見てしまう。幻覚かもしれないが後ろに後光がありそうな雰囲気を醸し出していてあるはずのない光に眩しく感じてしまう。
「いやー5学系本当に揃うとは、かよちんに感謝だねぇ」
「そんで、集まったとて何をする」
西条さんの言葉に体育学系の人が反応したところで、嘉陽田さんが司会役を始める。
「皆さんには装飾を手伝って頂こうと思います!燈籠祭実行委員国際1年嘉陽田です、こっちがパンフ部門長理数のさゆりん、苗字は影井だよ!」
下を見るので精一杯で、声なんか出したものなら、それは多分叫び声になる。
「うす」
自分でも訳の分からない返事をしてしまったが、これが今できる私の精一杯の挨拶だ。周りには誰がいるのだろう、あがり症なため、下を向きながら話したのは心の安静を保つためにも良かった気がする。
「装飾担当2年の瑞稀でーす。燈籠祭の装飾部門の部門長になりました〜」
瑞稀もいたのかと、もう聴覚ですら仕事をしなくなっている。体制が少しずつ崩れ嘉陽田さんにもたれかかる。
「俺らは何すれば」
「体育は装飾、文はパンフレットの文章作成をメインで手伝って欲しい」
あれ、
目が覚めると病院のベッドの上にいた。見知らぬ天井と、薄い水色のカーテン。右には点滴と私の腕が繋がれているようであるが、体が思うように動かない。体が重い。
「あ、起きた?」
「ん」
左を見ると、手を繋いでいる嘉陽田さんがこちらを向いて微笑んだ。
「さゆりん急に倒れちゃって、」
「ここ」
「病院」
いつの間にか救急車に乗って病院に運ばれていた感じだろうか。実行委員はどうなったんだ、時間はもう1ヶ月を切っているのに、こんなところにいちゃだめだ。
「行かないと」
「ダメだよ、今日は休んで」
「けど私がやらなきゃ」
「他の人に引き継いでもらったから大丈夫。それに今日付越えてるし」
日付、暗い部屋の中で嘉陽田さんがスマホを見してくれた。日付をまたいで1時36分と書いてある。それよりも前に待ち受け、最初に出会った時の顔を伏せた私と嘉陽田さんが写っている写真だった。
「そもそも病み上がりなのにここまでよくやったよね。そだ、先生呼ばないと」
火曜出さんが手を離し、病室のドアを開けどこかに向かった。女医さんらしき人と一緒に嘉陽田さんがこちらに戻ってくる。10分程何かしらの検査が行われた。
「小百合!」
「ママ」
何かしら連絡があったのか、母親が駆けつけて来たが、声の出しすぎで少し注意を受けている。
「最近ママ小百合のこと心配で、小百合周りで悪いことばっか聞くから」
「本当ごめんね、最近迷惑かけてばっかで」
「心配しないでいいのよ」
気がついたようにして母親が奥の方を覗いて嘉陽田さんの存在を認知した。
「ああ白石さん」
「嘉陽田です」
「ごめんねぇそっちの名前あんま馴染みなくてつい」
「いいんです」
「明日あるでしょう?大丈夫なの?」
「これくらい全然ですよ!」
少し雑談を交えながら私の真横で私の話が交わされている。
「さゆりのこといつもありがとうね」
「いえいえ」
「家どの辺?送っていくわよ」
「ではお言葉に甘えて」
「小百合は明日朝になったらまた迎えに来るわ」
「わかった」
「またね〜さっちん」
暗いとはいえ寝ていたから目はある程度冴えている。あと8時間、病院はスマホが禁止らしくあまりやれることがないから暇で暇で仕方がない。考えるのをやめて目を閉じようと思ったその時に病室のドアが開いた。
「ごめん忘れ物した」
嘉陽田さんが息を切らして病室のカーテンをくぐって入ってきた。
「忘れ物なんてあ」
「ふへへ!じゃあまたね」
「///」
忘れ物なんてなかったくせに。少し馬鹿馬鹿しくなりながら病室のドア方向に背中を向けて体を丸めた。
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