アクスム基地完成
4人の持ちかえった資料や経験は直ぐに解析が行われた。その結果出された判断は
「既存の防御装備で十分な防御が可能」と結論づけられた。
そのため派遣隊はイラク派遣のように、派遣される車両には追加装甲や多少の改良を加えるだけにとどまった。
山下と水野の視察の元、自衛隊基地は海近くの開けた場所に建設されることが決まった。
戦場とは35キロほどしか距離が無いが、ここしか適した土地が無かったため無事に双方の承認を得て建設が開始された。
港がないためおおすみ型輸送艦のLCACを利用して機材の搬入を行った。
第一回派遣隊の陸自45人が協力してわずか2日かけてプレハブの宿舎と本部を完成させた。
その後の発電機の設置や周囲を囲む柵などの設置に加え、未舗装滑走路の建設は本土から派遣された民間作業員と施設科隊員によってわずか1週間で設置された。
約150人を収容できるエアコン付き宿舎と本部、そして倉庫と簡易的な管制棟が完成した。
陸上自衛隊からは55人、航空自衛隊からは25人が派遣され、海上自衛隊はわずか4人と連絡員だけの派遣となった。
未舗装滑走路は1500mが整備され緊急で部隊の展開が必要になった際は不整地着陸が可能なC-130輸送機が下りることが出来る。
未舗装滑走路が整備されたものの、舗装滑走路の整備も同時進行で行われ、舗装滑走路の整備が終われば未舗装滑走路は誘導路及び駐機場として整備される予定だ。
第一回派遣隊は異世界派遣隊として陸海空で部隊式が統合された。
隊長は陸自の山下1等陸佐が、副隊長は水野2等空佐が就任した。
派遣される自衛官は志願制で、未婚であることが条件であった。更にはレンジャー隊員であることを推奨した。
装備品は89式小銃と5.56mmMINIMI軽機関銃、12.7mmM2ブローニング重機関銃。そして84mm無反動砲が普通科装備として。
そして軽装甲機動車通称LAVの改良型が5両、重機関銃が搭載されたB型の96式装輪装甲車(II型)が4両配備された。96式装輪装甲車(II型)はイラク派遣時に追加装備が施されたタイプで重機関銃の攻撃に耐える設計となっている。防空兵器などの配備は予定されていない。
■
日本から派遣された調査隊や開発関係者などの宿泊場所としても使用される。
本土から空自のC-130H輸送機に乗ってやって来る。
最初の訪問は日本政府より特別顧問として西牧教授とその一行に加え、大手商社マンの計18人である。
キッチンなどはあるものの、コンロが無いため食料は電気ポットを使ったカップ麺か、電子レンジを使った冷凍食品しかない。
「入りなさい」
異世界派遣隊の隊長となった山下は1人の部下を呼ぶ。
背丈が180センチはあるだろう大柄の男、中川3等陸尉である。彼は山下の指揮する連隊の小隊長として活躍し、現在は山下と共に異世界派遣隊の小隊長として勤務している。
「山下1等陸佐、例の任務ですか?」
「あぁ、分隊での行動という事だが大丈夫か?」
「はい。分隊長は中島ですし、私も随伴します」
「それならよい。護衛任務には魔王軍から2人随伴するそうだから仲良くやれよ」
「ははっ、まるで私が喧嘩好きみたいな」
「実際そうだろう」
次の日
西牧教授とその一行はケイ石が採れる鉱山へと向かうために準備をしていた。
途中の街で魔王軍を拾ってから行動する。移動には2両のLAVと1両の73式中型トラックを使用する。基本的に中型トラックに教授らを乗せ、前後をLAVが挟む形だった。
車両には大きな日の丸がついており、魔王軍にハッキリと存在を分からせることが出来た。
と言うより彼らは車両を知らないため、それを見た瞬間にびっくりして後ずさ背っていたのだが・・・
そんなこんなで魔王軍の兵士2人を先頭のLAVに載せる。
先頭のLAVには分隊指揮官の中島2等陸曹、後方LAVは中川3等陸尉が乗車している。
魔王軍の案内の最中にちょこちょこ雑談を挟む。
「君の名前は?」
「オカスだ」
「いいねその角。めっちゃイケてる」
「黙れ」
「コンプレックス?」
「こんぷれっくすぅ・・・?」
そんな会話をしながら鉱山へと到着する。
西牧教授らは尻が割れるような痛みを訴えていたが、トラックで風を感じながらケツを痛めるか装甲車に乗って腰を痛めるかどっちか選べと言う中川の問いにケツの痛みを選んだのだから文句は言えない。
その後現地に来ていたカバルと外交官徳岡と共に鉱山の案内と地形の調査を行った。
「この国は魔法使えるってマジすか?」
中島とカバルが偶々森の中を歩いていた時だった。先に開いたのは中島である。
彼は非常にフレンドリーな性格の持ち主である。海外での訓練では英語が出来ないのに現地の兵士とメールを交換するほど仲良くなるような男である。しかし小柄なその体からは想像もつかないほど強烈なパワーと強靭な体力を持っている。勿論レンジャー徽章の持ち主である。問題なのは敬語を使わない事と、フレンドリー過ぎて嫌われるところだろう・・・
「あぁ・・・」
カバル自体無口であるが、話しかけられれば話せないわけではない。しかし、生きてきた中でこんなにもフレンドリーな者は見たことが無かったため、困惑が勝ってしまっていた。
「いいよなぁ・・・俺も魔法使ってみてぇなー」
「魔道具を使えばもしかしたらあるかもしれないですよ」
そんなこんな言いながら森を抜けようとした瞬間だった。
ドン!
強烈な衝撃が中島とカバルを襲う。
「なん・・・だ・・・?」
カバルはまだしも中島は衝撃を直に受けたため呼吸が整わない。
中島が立ち上がった時には目の前に居た学者の2人が消えているではないか。
森を抜ける寸前であった為、外で待機していた中川もその様子をしっかりと見ていた。
中島とカバルが吹っ飛んだあとに学者2人が何者かに連れ去られていくのを
「おい!エンジンかけぃ!」
「了解です」
中川は直ぐにLAVに乗り込み銃座へと座る。
「総員に告ぐ!襲撃が発生!今すぐ集合場所へ集合!」
中川は車内からMINIMI機関銃を手に取って銃座にセットすると、直ぐに連れ去った人物を追いかける。
ブルルルルルンン!!
車体が浮いて森へと突っ込む
そして突っ込んだ先には身を隠していた敵が潜んでいた。西牧教授と一緒に───
■
LAVの直撃を受けた1人を除いて彼の仲間に逃げられてしまった。LAVの直撃を受けた者は人間だろう。肋骨にヒビが入っているのか苦しそうであった。
「衛生兵!」
直ぐに衛生兵が駆けつけ、医療キットを取り出す。
傷を確認して肋骨の骨折と足の打撲を確認。生死に関わる事ではなかったのでその場で問いただす。
「貴様らは何処のものじゃ!」
「お前ら人間か!?」
「あぁ、そうさ。何処の者だ!何処から来た!彼らを何故連れ去る!」
彼らを追いかけた自衛官らが逃げられたと言って帰って来る。
どうやら物凄い速さで空を飛んでいったらしい。
「その肩のマークはオーテシア王国だな」
カバルが苦しそうにしながら兵士の肩のワッペンを指さす。
「その様子から偵察部隊で、我々に捕らわれた人族の兵士と勘違いしたところだろう」
カバルの考察は当たっていたのだろう。分かりやすいほど顔に出ていたのだ。
「だが残念。この方らは我々の同盟国であり救世主である日本国の兵士。そして彼らは日本国の学者だよ」
オーテシア兵は衝撃を受けていた。
「何故人族が魔族を手を・・・」
「まぁいい。こいつはうちらで少し遊ばせてもらってもいいかな?」
中川の問いにカバルはうなづく。
後にこのことを聞いた山下は額に血管が出るほど激怒していたという───
■
「・・・ここは?」
「安心しろ。もうモルクスだ」
「モルクス?どこだそれ」
「はぁオーテシア王国の前哨基地だよ。連れ去られた時に魔法でも掛けられたか?」
「はぁ・・・」
西牧教授は本当のことを話して解放させてもらおうとした。
しかし西牧教授はしっかりと異世界情勢を把握していなかった。このことが後の悲劇へと繋がるとは知らずに・・・
「ほう。人間の裏切り者か・・・」
「はい。どうやら日本国と言う聞いたことのない国家から来たそうです」
「あとは任せろ」
「はい。宮廷魔術師コリンズ様に期待しております」
坊主頭の男は宮廷魔術師のコリンズと言うらしい。
魔法杖を地面につき、部屋へと向かう。
ここはかつて魔王軍の都市であった。ここで何をしていたかは分からないが、現在はここを司令部として使用している。
彼が最初に入った時に感じたのは2人ともかなり身なりが良く、しっかりとご飯を食べれている点だった。つまり、それなりの地位に居る者だと推測できる。
「さて、何から話してもらおうか・・・」
手のひらに魔法陣を浮かべる。
「待て、私はこの戦争に関与していないし何も知らないのだ!」
「違う、お前の祖国日本国の事だ」
「・・・話したところで?」
「さぁ、話さないのならコレを使うだけさ」
尋問魔法。魔力の保有量が多いければ多いほど効きにくいが西牧らには効果抜群であったようで、魔法耐性が無いために直ぐに体調を崩してしまうだけでなく、尋問魔法は掛かったものに苦痛を与える者でもあった・・・




