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魔王国と日本  作者: ヒマジン
第1章オーテシア王国編
7/7

極秘の救出作戦

日本政府危機管理センター

 「異世界派遣隊の情報によると調査隊が襲撃に合い、学者2名が連れ去られたとのこと」

 松尾官房長官の話に対し、荒木総理が口を開く。

 「西牧教授はなんと?」

 「その・・・連れ去られたのが西牧教授です」


 会議室内に静寂が訪れる。

 そこへ防衛大臣の上石順平が駆け込んでくる。

 「すみません。送れました」

 「別に叱責はしない。防衛大臣としてどうするのか?」


 「はい。統合作戦司令部と映像を繋いでおります」

 そう言って秘書に映像を繋ぐように指示する。


 大きなスクリーンに統合作戦司令部内の様子が映し出され、画面の横にはカメラを見上げるようにして統合作戦司令官の小田総一郎が立っていた。

 「私だ上石だ。聞こえているか?」

 暫くして「聞こえています」と合図を送る。

 「すみません。急なことで概要は小田司令官よりよろしいですか?」

 「許可します」


 小田司令は資料を取り出すと読み始める。

 「日本時間昨日11時半ごろ、2名の学者と護衛していた自衛官1名と魔王軍1名が襲撃を受け、2名の学者が連れ去られると言う事案が発生。追いかける際に1人を捕まえたところ『魔王軍に捕らえられた仲間かと思った』と供述しております」

 「それで・・・救出は出来るのかね?西牧教授が連れ去られて死にました。じゃ今後の異世界開発に支障が出る」

 荒木総理は小田を見つめる。

 「はい。可能です。しかしまだ尋問によって位置がハッキリしていないので場所が分かり次第になりますが、総理大臣の決定次第で直ぐに軍を動かし、作戦を実行可能です」

 「言っておくがあまりこの事態は世に出したくない。分かるな?」

 荒木は小田を見る。その目はハッキリと荒木の意味を理解していたようだ。


 【救出作戦が失敗すればお前の首が飛ぶぞ。そして世にバレたら俺の首が飛ぶからしっかりとやれ】



 「陸自に中央即応連隊を準備させるように指示しろ。連隊長につないでくれ」

 

 連絡を受けた中央即応連隊は直ぐに動員を開始し、1個中隊に招集をかけた。

 「指揮権は現地の異世界派遣隊に委ねます」

 1個中隊は高機動車で北宇都宮駐屯地まで移動し、待機していたC-130輸送機に乗り込み、アクスム基地へと出発する。

 西部方面航空隊からはUH-1J輸送ヘリ6機とOH-1偵察ヘリが1機飛び立つ。

 さらには中部方面航空隊よりAH-1Sが4機飛び立つ。


 「水野2等空佐」

 「なんでしょう?」

 ソワソワしていた水野は山下に止められて気を悪くさせてしまったと反省する。

 「確か大使館と電話は繋がっているよな?」

 「えぇ、繋がっていますね。通信は不安定ですけど」

 「水野さん、大使館にお願いしてくれませんか?救出作戦を開始するから兵士を数人貸してくれないかと」

 「分かりました。頼んでみます」



 「カバル殿、緊急のお願いがあります」

 いきなり入ってきた佐藤にカバルはびっくりする。

 「どうしましたか、そんなに急いで」

 「あまり他の者には聞かれたくないのです。直ぐに応接室にお願いします。できればラニア様とエリウム殿も・・・」

 

 佐藤の慌てた様子にラニアは動揺する。

 何かあったのか。いきなりの訪問で紅茶などを用意できていなかった。と言うか紅茶のストックが切れかけていたので逆に有難かった。


 「それでどうしました?そんなに慌てて」

 「これはここ4人だけの秘密事項でお願いします」

 「というと?」

 「カバルさんは知っての通り昨日、我々が襲撃に合い2人を連れ去られたのは覚えていますね」

 「えぇ、勿論のことですけど?」

 

 佐藤はひと呼吸おいて言う。

 「日本政府は救出のためにモルクスを急襲します。それで・・・」

 3人は動揺した。

 そんな無茶な作戦があるのかと

 「あなた方の技術力が高いことは認めますが、魔法には負けるでしょう」

 それがラニアらの意見であった。

 「しかし彼ら全員が魔法を使えるわけではないでしょう?」

 「そう言う事ね」

 

 エリウムは納得したようで、4人の人員を派遣してくれることになった。

 しかし死体でもいいから絶対に連れて返すと言う条件を提示した。これに勿論了承した。

 「確認何ですけど、モルクスに住民はいますかね?」

 「居るわけない。いたとしても軍関係者よ。住んでいた同胞は逃げるか殺されるかした」

 エリウムの様子がおかしい。

 佐藤は不味いと思い話を変える。

 「そういえば時計を渡しましたよね?」

 「えぇ、あれですね?」

 ラニアが時計を取り出す。


 それは同盟締結の時にラニアに送った時計である。カチカチと秒針が動いている。


 「その時計の長い針が、12になるまでに増援の兵士を大使館に連れて来ていただきたい」

 「分かりました」



 投入する部隊は中央即応連隊第2中隊、魔王軍兵士4名、異世界派遣隊とUH-1Jが6機、AH-1Sが4機投入される。現地の用数を司令へ送信するOH-1偵察ヘリも投入される。

 作戦は山下1等陸佐によって立案され、中央即応連隊第2中隊長の松田1等陸尉と中川3等陸尉、そして航空隊らによって最終調整が行われた。

 日本政府は一刻も早く作戦を実行するように指示を出したが、初めての実戦であり、さらには敵の本陣に突っ込むような形になるため、朝か夕方のどちらかの実行がベストと選択された。


 作戦概要はこうだ。

 LAV2両、96式装輪装甲車(以後96WAPCと呼ぶ)3両、中型トラック1両の車両隊と、UH-1Jの6機から成る兵員輸送隊、AH-1Sの4機からなる航空支援隊とアクスム基地と現地を結ぶOH-1からなる指揮隊の4部隊に分かれて行う。

 魔王軍からの情報提供により、モルクスは城門が木製であるとのこだったため、城門の突破はAH-1Sの20mmガトリング砲によって破壊する。

 

 既に事前偵察はOH-1により済ませており、警備は朝昼晩同じ体制で、城門の前に2人、城門左右の城壁に最大6人、そして対象者が収容されているとみられる中央の建物には5人ほどの警備しかいなかった。

 城壁全周合わせても20人程度であり、わざわざ城壁の制圧をする必要が無いと見た。


 UH-1輸送ヘリには中央即応連隊と魔王軍兵士2人が搭乗する。1機は城門に、2機は中央の建物広場前、そして残りの3機は中央建物敷地内にて兵士を降下させる。

 その後車両隊が侵入し、降下した隊員らを収容して、1キロ離れた場所にある待機場所にて集合となっている。


 作戦は9月12日の午前4時に決行された。

 先行した車両隊の30分後にヘリ隊が後を追いかけるように出発する。

 今回の作戦でも中川3等陸尉が先頭のLAVに乗車して指揮を執っていた。

 LAVの武装は銃座より銃手が5.56mmMINIMI機関銃を、96WAPCは12.7mm機関銃を車内よりリモコン操作で行っていた。基地からモルクスまでは約45キロほどで長い旅となった。


 車両隊には操縦手、銃手と衛生科と、ヘリに載せれなかった中央即応連隊の1個小隊が搭乗した。

 UH-1J輸送ヘリには隊員が6人から7人ほど登場できた。載せれたのは2個小隊であった。最初のステップとしてAH-1Sによる城壁クリアと城門の破壊任務があった。

 

 AH-1Sによる行動は輸送ヘリ隊が降下を開始してからの開始となった。

 

 「到着まであと3分!」

 まだ日は出ていない。

 前方にかすかな明かりが見える。警備兵のランプだろう。時々動いているのが確認できた。

 そのころ車両隊は少し後方を走行していた。

 OH-1偵察ヘリによる敵の部隊配置をかいくぐり、何事もなくここまでやってこれていた。

 中央即応連隊の第2中隊長の松田は到着前に部隊を鼓舞する。しかし中隊はただ静かに、胸の中に覚悟を決めるのだった。

 

 「ブラックホークダウンみたいにならんといいがな」

 中川がぼそりと呟く。

 「やめてくださいよ縁起悪い」

 運転手が渇いた笑いをする。その顔は冗談じゃないと言った険しい表情をしていた。そもそも魔法攻撃に対するLAVと96WAPCの防御力が分からない以上、不安で仕方が無かった。


 輸送ヘリ隊が到着し、それぞれの位置にホバリングした後、ロープで降下する。

 「降下完了。攻撃ヘリ隊は行動に移れ」

 その瞬間だった。車両隊との距離は1キロないところでも見えるほど大きな閃光と銃声が木霊する。


 ブロロロロロロ・・・


 城壁の上のランプの光が消えるのが見える。

 「城門破壊完了。クリア」

 城門監視の分隊の横を通り過ぎる。

 

 「車両隊、機関銃手はいつでも撃てる準備しておけ、戸惑いが命取りになる」

 中川がそう言った直後だった。目の前から武具を持って慌てている兵士らが出てくる。

 しかしブレーキは危険。回避は間に合わない。彼らがこちらに気づいた時にはもう遅かった。

 「轢け!」

 ドン!と言う音と共に身体が吹き飛んでいく。

 「気にするな」

 「は、はい・・・」

 運転手は若干戸惑いながらもアクセルから足を離さない。

 「前方!敵!」中川の掛け声に機関銃手は少し戸惑う。「はよ撃たんか!」中川の叱責によりLAVの銃手が5.56mm弾を発射するMINIMI機関銃を兵士に向け発砲する。彼らの来ている鎧など布切れと変わらないかの如く貫通する。


 目標地点に到着した時には殆ど抵抗がなく、無事に到着した。

 「小隊下ろせ」

 中川が指示を出す。96式装輪装甲車のハッチが開き、小隊が展開する。

 「オメガから車両隊。10時の方向より敵5」

 「了解」

 接近してくる敵は隊員らの89式小銃によってあっけなく殺される。


 中隊長自ら建物に乗り込んだあと、建物内をクリアリングしていく。建物内は予想とは裏腹に人が少なく、接敵することが殆どなかった。

 「救助者が収容されてると思われる場所は?」

 「地下かと」

 建物内に直に乗り込んだ部隊とは別に、入り口から制圧を開始した部隊は、激しい攻撃に晒されていた。

 どうやら敵主力は1階部分に集合していたようで、魔法と思わしき攻撃が飛び交う。

 その度に魔王軍兵士が魔法使いを特定し、攻撃を加えると言った方法でジリジリと詰めていった。最終的に地下を目指すために降りてきた松田率いる小隊によって挟撃に合い、敵は全滅する。


 「地下はどのくらい広い?」

 「入ってすぐ、大きな広間が存在します。お気を付けください」

 隊員は地下への階段を見つけると、ドアを銃で破壊し、その隙間から閃光弾を投げ入れる。

 バンと大きなフラッシュが部屋内を包み込んだ後、隊員が続々と部屋へと入る。

 しかしそこに待ち受けていたのは宮廷魔術師のコリンズだった。




 宮廷魔術師の仕事は大変だ。なるまでも大変だし、なった後も大変だ。国王の相談役、戦争の火力支援。しかしそれに見合う十分な金と地位はもらえている。皆の不満点は休みが少ない事だろう。

 余りに魔法耐性が無いために、部下の尋問魔法の練習台にした。自分は西牧とやらが喋る内容をメモに取っていたのだが、話すことが無茶苦茶なのだ。まるでこの世界の話とは思えなかった。

 西牧とやらは日本と言う国の学者で、日本は魔王国と協力関係にあるとのことだった。日本と言う国を良く知らなかったので、更に追及すると「転移」だとか「科学技術」だとか聞けば耳を疑うような言葉ばかり話す。

 取り合えず、メモ用紙をそのまま映したものと、内容をまとめたものの2枚を本国へと送った。

 1日中行われた尋問と報告書の作成に追われ、西牧の状態を確認しに行ったら激しい物音が聞こえたので戻ってみればこの様だ。

 

 警備兵は全滅したのだろう。取り合えずこの目の前に居る謎の兵士らを殺すところから始めなければならない。

 即座に防御魔法を展開し、彼らの攻撃を防ぐ。

 しかし防御魔法に魔法で対抗する者が現れる。その見た目は明らかに魔族だった。


 「そうか・・・君らが日本か」

 

 コリンズは不敵な笑みを浮かべるのだった・・・ 




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