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魔王国と日本  作者: ヒマジン
第1章オーテシア王国編
5/7

同盟国?

 「総理、総理!」

 どうした?

 カップに眠気覚ましのコーヒーを淹れていた荒木は、秘書からの呼び出しに眠そうな顔で答える。

 「魔王国にて重要な資源が見つかりました」

 「なんだ?」

 「ケイ石です」

 「すまない。なんだそれ」

 荒木はコーヒーを淹れおわり、チビチビと口をつける。

 「シリコンの原材料。つまり半導体の原料という事になります」

 「・・・という事は」

 「はい。外交方針を変える必要がありそうです」


 ケイ石の出現は日本政府の外交方針を一変させた。何とかしてこの権益を確保して守りたかった。

 臨時閣議では異世界に対する日本政府の外交方針と特別予算の計上について話し合われていた。

 その中で「魔王国との関係は守りつつ、第三国として双方の戦争を見守るべきだ」と言う意見が多数を占めていた。しかしそれにはリスクもある。

 もしいきなり現れた島から使節を送ってきた国を信頼できるだろうか?信頼以前に理解に苦しむだろう。その点、魔王国は我々の転移を予測していたようだった。

 魔王国のように我々の転移を人族が把握しているならまだしも、もし知らないのであれば使節が切り殺される可能性だってあるわけだ。


 そんな話が平行線の中、魔王国で重要資源が見つかったという知らせは、魔王国の重要度を更に一段階上げる必要が出てきた。


 今回の国会では居眠りするような愚か者は現れなかった。

 なぜなら今回の議決次第で戦後初めて日本が戦争に身を投じる可能性があるからだ。



【魔王国との軍事同盟締結に関する案】【魔王国の資源開発に関する案】の二つについて話し合われた。

 軍事同盟締結であるが、国会は割れた。そもそも軍事同盟事態に反対する者と軍事同盟には賛成するも、魔王国が自衛権を発動した際にのみ、最小限の戦力の派遣又は後方支援に限る案の2つである。


 国会内は軍事同盟反対派が劣勢であったが、もしかしたら戦争に身を投じてしまうかもしれないと言う恐れから、中々話し合いは纏まらなかった。

 一方で魔王国の資源開発に関しては、直ぐに技術者派遣とJICAの投資を行い、そして政府主導の投資では1000億円の予算が計上された。

 しかし技術者派遣と開発には戦争中という事もあり、自衛隊による安全確保が必要であった。

 そうなれば軍事同盟締結は避けられないのではないかと言う声も出てきた。


 結局国会は3日に渡って反同盟派と制限付き同盟派の激しい口論が続いたのち、ついに制限付き同盟の締結を承認することが発表された。

 それに伴い、自衛隊には魔王国派遣予算として拠点設立費用含めて550億円を計上した。


 「魔王様」

 いきなり声をかけられたラニアはヒッと声を上げる。

 

 「なんだカバルか」 

 「ええカバルです。日本国の大使がお見えですよ。どうやら話したいことがあるようで」

 「分かった。直ぐに応接室に通して」 

 「もう通してあります」


 ラニアはまだ魔王と言う自覚が無かった。というか正式な魔王にはまだなっていないが、魔王国の政府内ではほぼラニアで決まりのような雰囲気だった。対抗馬もおらず、ラニアが特別無能と言うわけではないからだ。彼女は声をかけられるまで各地の戦場から送られてくるレポートに目を通していた。

 ここで~が足りないとか、もっと~を欲しいとか、要望が送られてくるが、対処できずにいた。


 「お久しぶりですラニア様」

 「えぇ」

 佐藤が頭を下げる。

 「今回はエリウム殿はいないので?」

 「はい。エリウムは外せない仕事がありまして私が」

 カバルが代わりに出席した。

 「ところで徳岡さんはどちらへ?」

 ラニアは徳岡がいないことに気づく

 「徳岡は別の用事がありましてね」

 「そうですか。ところで本日はどのような用件で?」

 ラニアが用意された紅茶に口をつける。


 「少し前に我が国で決まったことなのですが・・・」

 そう言って資料を取り出す。

 ラニアとカバルの2人が資料を読んでいく。


 暫くしてラニアが言う。

 「この条件で同意しますが・・・現在の人族との戦争には関わらないので?」

 「はい。しかし、もし彼らが我々に攻撃を行えば参戦も十分にあり得ます。我々は争いを避ける国ですので」

 「そうですか・・・しかし心強い」

 「えぇ、それと基地を建てる前に魔法について学んでおきたいのですが、武官を派遣して魔法戦に関する研修を行っていただけませんか?」

 そう言って持ってきた箱を取り出す。

 

 箱の中を開けるとドライアイスで冷やされた3つのショートケーキが取り出された。


 「こっ、こっ、これは・・・」

 「はい。ケーキです。お願いできますか?」

 「勿論!」


 まともな食事が不足している中、苺と生クリームを使ったキンキンに冷えたケーキは格別だった。魔王ですら食べれなかったものに感動する。

 これには普段あまり笑顔を見せないカバルも笑顔を見せるのであった。



 カバルはエリウムの指揮する第三軍団第一軍の指揮官であった。

 そこでそのままカバルは自衛隊から派遣されてきた武官の相手をすることになった。


 自衛隊からは中部方面総監部の山下1等陸佐、航空自衛隊からは水野2等空佐、他にも防衛装備庁から2人と合わせて4人が派遣された。


 4人は実際に魔法の威力などを調べ、模擬戦闘なども行ってくれることになった。

 エリウム自ら訓練場にやってきて解説をしてくれた。

 

 魔法攻撃は主に水、風、土、火を元に構成される。

 魔力が多く、魔力を操るのが上手い人ほど攻撃の威力が強く、さらに多様で複雑な魔法攻撃を行えるため、戦闘する上で厄介である。

 魔族と人族の魔法戦闘における優位性はハッキリしており、魔族の方が魔力量が生まれつき多く、魔力を操るのが上手い。


 「試しにあの鉄の板を破壊します」

 エリウムは手を前に出す。エリウムは剣を介して魔法を使う魔剣士型であるが、剣を使わずとも魔法攻撃は可能だった。手のひらに火の玉を生成し、軽く押す。

 するとプロ野球選手の投げるボールより少し遅いぐらいの速度で鉄の板へと向かっていく。


 直撃すると同時に左右へ炎が逃げていき、炎が晴れた時には火の玉より少し小さいぐらいの穴が空いていた。

 「熱いよ」

 エリウムが無表情で警告する。それを聞いた4人は慌てて鉄の板から離れる。

 

 「熱ではなく、衝撃で穴を開けるんだ」

 水野が興味深そうに見る。

 「貴方達は熱で溶かすのですか?」

 カバルが少し不機嫌そうに水野を見る。エリウムの魔法が予想よりしょぼくて残念だと勘違いされたのだろう。慌てて水野は訂正する。

 

 「いいえ、我が国も魔法ではないですがこのような形で穴を開けるので、少し安心したのです」

 カバルは納得していない顔だったが、それ以上聞くのをやめた。


 一通り見せてもらった後、エリウムが山下に木刀を投げる。

 山下は慌てて木刀をキャッチする。「見せたんだから、一戦良いよね?」

 エリウムの無表情な顔からは殺意は見られないが、山下たちを圧倒するような何かがあった。

 「・・・分かりました。仕方がありません。1戦だけです」

 そう言って山下は木刀を手に取り構える。


 「大丈夫ですか山下さん」

 「・・・一応剣道はやってたので多分」


 木刀を握って構えた山下の雰囲気が変わったことにエリウムは気づく。

 

 「やっぱり」


 そう言ったと同時にカバルの掛け声が響く。

 カバルの強烈な一撃が山下の木刀にのしかかる。

 山下はなんとか抑え込み、反抗しようとしたが力の差が違いすぎた。

 

 ただ踏ん張る事しかできそうにない山下の現状に「こりゃ負けるな」と一言。カバルもそう思っていた。

 しかし山下は踏ん張るのをやめ、一気に横へと逸れる。その結果木刀を折ろうというかの如く力を入れていたエリウムは前に体勢を崩す形となった。

 その様子を見た山下は直ぐに彼女の背中めがけて最短距離で木刀を振る。

 しかしエリウムも負けてはいない。体をひねって山下の脇腹めがけて木刀を振る。


 勝負は引き分けであった。

 双方同時に木刀が当たったことから引き分けとなった。

 「いい勝負だった」

 山下は笑顔で手を差し伸べる。エリウムがその手を掴み2人で握手する。遠くから見れば和やかな空気だが、カバルはエリウムのその表情に心が凍る。

 「あぁ・・・」

 そのピクリとも動かない目には闘志が燃え滾っているのをカバルは見逃さなかった。

 可哀想に・・・

 カバルはそう思いながら4人を大使館へと案内するのであった・・・



 

 

 

 


 



 

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