ジャガイモ貿易
8月15日
政府は食料不足に伴う緊急輸入としてジャガイモの輸入を開始したことを発表した。
貨物船は港まで入れないため、藁袋に入ったジャガイモ小型ボートで貨物船まで届けた後、コンテナに入れて日本へと輸入する方式が取られた。
最初の輸入量は250キロ分のジャガイモであった。
しかしジャガイモは農作物であり安定供給できるものではなかった。
政府の方針は1、2年は輸入しつつ国内の農業体制を整え3年目には食料自給率を85%まで持ってくることであった。田んぼや畑などの農地の税金の免税と農業参入支援、そして補助金の投入を掲げた。
一応備蓄米もあるので即座に切れることがないのが幸いであった。
しかしこれは上手くいかなかった。
寄生虫の問題
品質の問題
美味しいかどうかの問題であった。
農林水産省の試験では輸入されたジャガイモの30%以上が品質及び寄生虫などの問題で、販売が不可とされた。更には希望者を募って行われた試食会では90%以上もの者が「美味しくない」「不味い」と評価し、農林水産省は「輸入に値しない品質である」と報告した。
8月17日には鉄鉱石と石炭の2つの資源の輸入契約を取り付けることに成功した。
ここに至るまでの2人の努力は讃えられるものであった。
8月19日に国交樹立を宣言し、コルゴン城内に大使館が設置された。
総理大臣の荒木は取り合えず最初の課題をクリアしたことに安堵した。
しかし更なる問題は国内の外国人問題と米軍問題。更には半導体製造の為のレアメタルとか国内では産出できない資源の輸入も必要であった。これについては日本が直接現地の国と交渉し開発を行う必要があった。
8月20日に外務省は魔王国の資料を公開した。
・人族と紛争中
・日本との関係は良好
・戦争による食糧不足と領土縮小の課題がある
等の問題が注目されただけでなく、旧領土の山岳地帯にレアメタルなどの貴重な鉱産資源がある可能性にもついて記されていた。
これについては完全な憶測でしかない。荒木自身が外務省に命令してそう書かせたのだ。
外交官からの報告によれば魔王軍は非常に劣勢でいつ滅びてもおかしくないとのことだった。更には彼らは支援を要求しているとの旨も伝えられており、もし自衛隊派遣の際の国内世論の誘導を早くから進めようと言う魂胆であろう。
8月30日には第二回のジャガイモ輸入が行われ、この時には400キロ分のジャガイモが日本に輸入された。量は少ないもののあちらではジャガイモは安価な主食となっており、日本はそれの代替となる食料品を送る必要があった。
日本からはサツマイモやゴボウ、レタスなどの野菜が輸出された。
しかし魔王国ではあまり見ないものであるため、価格が上がり、日本が狙っていたジャガイモの代替品とはならなかった。
しかし前回分のジャガイモは農林水産省の報告や口コミにより、既に余りが発生しており、政府内からの輸入中止の要請で途中で打ち切られた。
これについてはただ日本が得しているだけであり、魔王国内からも何故そんなに何処の馬の骨かもわからない人族に優遇するのは差別だと、庶民の間で軽い騒動が起こるのであった。
魔王国としてもこれは無視できないものであり、ジャガイモ貿易は第2回を持って中止となるのだった。
日本は予定していたより早くジャガイモ貿易が終了してしまったことに焦りを感じていた。
1トンにも満たない量のジャガイモだけでは数日も持たなかった。
最終的に100トンのジャガイモ及び小麦の輸入を計画していたが一瞬で計画は失敗する。
「他の国とも国交を結ぶ必要がある」との声に日本政府は全く踏み込めないでいた。
何故なら魔法と言う非科学的な能力が存在している以上、我々も下手に出れない上に、人族と魔族の戦争なら、人間の国家も同じような状態にあると考えた。
もし人間側について魔族の国家が崩壊したとしても我々が彼らの領地にある鉱山の資源を確保できるのかと言われれば保証はないし、魔族側についてもそもそも勝てるのかどうかもわからない状況だ。
荒木総理は日本の外交方針に頭を悩ませるのであった───
■
「リース様、これは・・・?」
「これはスルメイカと言うやつらしい」
「はぁ」
大魔王グザノフが一口食べてみると、かなり硬かった。
「噛めば噛むほど美味いんじゃな、これが」
「うーん・・・確かに・・・」
口をモグモグさせながら、下界の様子を見る。
「大丈夫ですかね?」
早速行き詰ってる魔王国を見て、もう少し内政に力を入れればよかったと後悔する。
「まぁ少しアクセントを加えよう」
「そんなことできるので?」
「私は神ぞ」
そう言ってリースは指をクイクイと動かす。
「今何を?」
「奴らが食いつくものを加えた。それだけじゃ」
そう言い終わるとニヤニヤ笑いながら言う。
「日本とやらを見て置け、猛獣のように血相を変えるぞ」
「彼らが血相を変えるほどのモノとは・・・」
グザノフはワインを飲み干し日本を見守るのであった・・・
■
「これは何でしょうかね」
徳岡はカバルが持ってきた白い石を見せる。
どうやら新たな鉱山開発の為に掘り進めていたところ、見たことない白い石が採れたため、輸出できないか持ってきたようだった。
「魔石とはまた別ですし」
カバルもこんな石は見たことないと言う。
「連絡船で本国に送ってみます」
日本大使館は本来のコルゴン城、現在はコルゴン宮殿と言われている場所に設置されていた。しかし水道と電気は繋がっておらず、この地の水の安全性も確保されていないことから、週に1度来る連絡船からペットボトルに入った水と食料を調達している。
連絡船は重要な外交方針が入った資料だけでなく、調査書を送るために必要なものだった。
そしてその白い石が日本政府の魔王国に対する外交方針を一変させるとは、この時は誰も思いもしなかった。




