表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/6

大統領更迭

 地下シェルターの入り口に着いたエリツィン中佐は中央警備室のボロディン少佐を呼び出した。

「ここを開けられるか?」

「おそらくできます。少し離れていてください。あいにく中の様子が分からないので何が待ってるかわからないんです。」

「分かった。すぐに開けろ。」

了解しました、という通信のあと、鋼鉄でできた厚さ20センチの扉がシューという音を立ててスライドし始めた。エリツィンは突入部隊に待機の合図を出した。事前に入手した設計図の通りだとすると、シェルター内の執務室は1番奥にあるはずだった。執務室までの道のりには倉庫や武器庫、警備室が配置されていた。

「予定通り進める。開始しろ。」

先頭の黒ずくめの戦闘員が軽く頷くと、開き始めた扉に向かってカラシニコフを構えた。扉が4分の1開いたところで、弾丸が空気を切り裂く音と共に、背後のタイルにヒビが入った。空挺軍の突入班は軽く応射すると、すぐに破片手榴弾を3発投げ込んだ。それが爆発すると、今度は本格的な制圧射撃を始めた。軽機関銃が連射で相手を釘付けにしている間に、正確な射撃で着実に警備員を撃破した。応射が止んだのを合図に、突入部隊はシェルターへと雪崩れ込んだ。先頭を行く空挺軍の大尉はAKS-74Uを左右に警戒しながら廊下を進んでいた。廊下の途中にあった武器庫に1人残して進み、執務室までは残り6メートルのところまで迫っていた。シェルターに入ってから執務室の扉まで出会った敵は8人だった。予想よりも少なかったが、残りは執務室に集まっているのだろう、と大尉は判断した。

「エリツィン中佐、突入班です。本当に爆破しますか?」

「もちろん。我々の目的は大統領の確保だ。」

「分かりました。」

と言って、通信を終えると大尉は爆破担当を呼び、扉に規定量の2倍の爆薬を設置させ準備が整うと、爆破担当の肩を軽く叩いた。執務室の扉は内側に向かって吹き飛んだ。すぐに音響閃光手榴弾が投げ込まれ、室内で炸裂した。空挺軍は素早く突入すると、数秒で警護官5人を射殺した。拳銃とサブマシンガンしかない警護隊ではカラシニコフと軽機関銃で武装した襲撃部隊に歯が立たなかった。立ち向かう警護官は全て薙ぎ倒され、室内に残ったのは大統領ただ1人になった。大尉は机の下でうずくまる大統領の前に立つと、軍曹と両脇を抱えて執務室から引きずり出し、シェルターの入り口まで連行した。

 エリツィン中佐率いる空挺軍は中央警備室に集合していた。警備室の真ん中では、大統領が後ろ手に椅子に縛り付けられていた。シュレンコフの計画では中央警備室にテレビカメラを持ち込み、国営テレビ放送を通して、政権掌握を発表する予定だった。

「シュレンコフ大将はまだか?」

苛立った様子のエリツィンがボロディンに尋ねた。

「まだみたいです。配下の兵士と市内に向かってきていますが、FSBのアルファ部隊が阻止に向かってきているようです。」

「対処できるんだろうな?」

「私のスペツナズがSPG-9を持ち込んでいます。あれで乗り物ごと破壊すればいいんです。」

「では、すぐに準備しろ。」

ボロディンは近いところにいた部下を呼び寄せ、指示を出した。すぐに1個小隊が警備室を出て正門へ向かった。

 ボロディン少佐の指示通り、スペツナズの大尉は自分の小隊を連れて正門に来ていた。4門ある無反動砲を全て装填し、正門に照準を合わせて待機していた。準備が整った時、正門からティーグル軽装甲車が5台滑り込んできた。

「少佐、友軍はティーグルを使ってますか?」

「それを今、持っているのはFSBだけだ。撃破しろ。」

「了解。」

大尉は撃ち方用意を指示した。それぞれの無反動砲の射手が装甲車に照準を合わせた。

「撃て!」

号令と同時に砲身から73mmロケット弾が飛び出した。弾はほぼ一直線に飛翔し、ティーグルに正面から激突した。無反動砲が直撃した車両は燃える鉄屑に成り変わった。後続の車両も次々に撃破され、正門には4つの燃える残骸が残された。最後の1両が異変に気がついて、遮蔽物に入ろうと方向転換したがその時にはすでに最初の射手は再装填を終えていた。爆風と共に発射されたロケット弾は最初と同じように飛び、ティーグルの側面を捉えた。炸薬が薄い装甲を溶かし、燃料タンクに引火した。炎上する軽装甲車は、燃えながらも進み続け、壁に激突して止まった。

「正門の敵は一掃しました。」

「了解、引き続き警戒しろ。」

しばらくすると、BTR-82の車列が正門から入ってきた。その車両には、モスクワ軍管区の軍旗が掲げられていた。

 中央警備室についたシュレンコフ大将はボロディン少佐とエリツィン中佐と握手すると、セットされていたカメラの前に立った。これからシュレンコフが話す内容は、歴史上の偉大な台詞になることは間違いなかった。少し経つとカメラマンが準備ができたことを伝えた。シュレンコフが開始の合図を出すと、カメラが撮影していることを示す緑のライトが点灯した。

「ロシア国民の皆さん、私はロシア連邦陸軍大将のミハイル・シュレンコフです。私は皆さんに今日、ロシア連邦の現政権が打倒されたことをお伝えしなければなりません。政権は我々を裏切り、騙し続けてきました。しかし、もうこれ以上我慢する必要はありません。我々は国民を危機から救うために立ち上がりました。国民の皆さんは、いつもの生活を続けてください。」

ここでシュレンコフは一息おき、カメラのレンズを見つめた。

「そして、私は同時に全世界に対してロシアによるウクライナ侵攻の完全な停戦を提案します。我々がウクライナから奪い取った土地を元の持ち主に返します。賠償金をもらうこともありません。私は政治家が犯した過ちを正そうとしているだけです。すでにウクライナに展開している部隊には撤退を命じています。彼らは我々の国境内に戻り、家族のもとへと戻ります。もう誰も死ぬ必要はありません。私からは以上です。1週間以内にまたお会いしましょう。」

カメラのライトが放送停止を意味する赤色に切り替わると、ボロディンの方に向き直った。

「よくやってくれた。感謝している。もう1つやってもらいたいことがある。大統領を、いや、元大統領をGRUのセーフハウスに連れて行くんだ。しばらく彼には休んでもらおう。」

「了解しました。すぐにそういたします。」

ボロディンが部下に合図すると、元大統領は両脇を抱えられ、正面入り口に連れてこられた。そして待機していたBTR-82に乗せられると、モスクワ郊外のGRUのセーフハウスに連行された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ