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Spell Driver (スペル ドライバー)  作者: vurebis
いざ魔法の街へ 〜フナリス編〜
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22話 夜明け

「ドクター、話を聞くってあの人凍っちゃってるよ」

グレンデルは身体が訴えかける眠気から意識を逸らすようにサリスに尋ねる。


四人の視線の先には一見すると氷彫刻のように見えるベルコの姿があった。

「こいつは氷の魔法で凍らしているだけだから、解除すれば元に戻る」


そう言いながらサリスはベルコに近づきてをかざす。


「『ユミル・フリーズ』解除」


サリスが詠唱した途端、ベルコに纏わっていた氷は蒸発するように消えていった。ただし、サリスが解除したのは上半身のみだった。


「……かはっ!ごほっ、はぁ、はぁ」

氷漬けから開放されたベルコは久々の呼吸に少しむせかえる。


「やっとお目覚めだな。ベルコさん?いろいろ聞きたいことがあるんだ。時間も無い、手短に頼むぜ」

サリスはベルコへと歩み寄り腰に差した片手剣を抜きベルコに向ける。


「っ!サリスっ!!よくも私を……」


「魔道具なら預からせて貰ったぞ。大好きなロキの魔法はもう使えない」


ベルコの視線の先、サリスの足元に凍りついた魔道具が落ちている。


「これでも加減してやったんだ。なんで街を荒らしたか聞かせてもらおうか」


「そ、そんな事言うはずが無いじゃないの!私は既に邪神ロキ様に魂を捧げた身、裏切れる筈がない!」


喉が張り裂けんばかりに叫ぶベルコに近づくサリスに背後から明るい声が響く。


「なるほど聞くってそういう事か~!!サリス君!それならもっといい方法があるよ!」


「ちょっと、おい」


ニコニコしたまま歩みよるリューシュはサリスの言葉にも聞く耳を持たずグレンデルと手を繋ぎながらサリスの隣りに並ぶと、一言。


「街の人をあんな姿に変えて、私の大好きなサリス君、グレンデルちゃん、アベンチュリン君をひどい目にあわせてただで済むはず無いよねぇ~??私あんなに怒ったの久々だよ~!!」


ニコニコと満面の笑みを浮かべながら怒りを顕にするリューシュはグイッとベルコに顔を近づけ


「やった事には責任を取らないとダメなんだよ?」


眠気で半目のグレンデルでさえ目が冴える様な底冷えする様な声で言い放った。


「っ、拷問で命を奪おうってならそれで構わないわ。とっくに覚悟を決めてこの街を襲っているもの」


リューシュの脅しに一瞬たじろぐ。

しかしベルコは頑なに拒否を続ける。


「ぷっ!アハハハハ!命は取らないよ~!私そんな趣味ないし、後味悪いじゃん~!!ベルコちゃんは面白い子だなぁ」


予想に無かった返答なのかリューシュは突然吹き出した。


「何がおかしいの!?あなたまさかこの後に及んで敵に情けをかけるっていうの!」


これから自分の身に降りかかる事を思ってかベルコは涙目で訴えかける。


「あ〜、お堅いなぁ~・・・もっと気楽に考えようよ!ね?アベンチュリン君!?」


ため息を吐きながらクルンとその場で振り返ったリューシュは、少し後方でことの顛末を見守っていたアベンチュリンの方を見る。


「僕かい!?まぁ、確かにお堅いのは君の性分ではないのかもしれないな」


仰け反る様に驚くアベンチュリンだったが、フッと微笑むと腕を組み再び見守るようにベルコに向き直った。


「あなた達が分からないわ。なぜ生かすの?なぜそんなに笑ってられるの?それにベルコ"ちゃん"だなんて本当に分からないわ」


やれやれとリューシュに近づき彼女の肩に手を置いたサリスは


「分かんねぇ奴なんだよ昔からコイツは」


と言った。リューシュはサリスに振り返ると

「そんなこと無いよ!!私は約束守っただけだもん!」


「よくわからない事がわかったわ。それで、私は何をすればいいのかしら。奴隷?それともあなたのお世話係?」


ベルコもリューシュの掴みどころのない性格に押されたのか諦めた様子だった。


「そんなことはお願いしないよ~お願いはもっと簡単さ!」

リューシュの脳裏には決戦直前にグレンデルに呼び出された記憶がしっかりと焼き付いている。





◇





夜に決戦を控え、まだ太陽が落ちきっていない夕方の事。戦闘の準備のため部屋に戻るリューシュをグレンデルが呼び止める。


「リューシュの背中で寝たから大丈夫。それよりお願いがあるの。」


「ん〜?何かな?私に出来ることなら何でも言ってね!」


そう言いながら部屋に入った二人は向き合い、グレンデルは俯きながら頼みを話し始める。


「あ、あのね、もし闘いで悪い人をやっつけてその人を殺してしまう事になりそうなら止めて欲しい・・・ダメ、かな?こんなの頼めるのリューシュしか居ないから」


ポツポツと敵への情けを喋るグレンデルをリューシュは愛らしく思いそして不思議に思った。


「どうしてか聞いていいかな??」

少しの返答でグレンデルの主張は折れてしまいそうな、当たり前の会話が重くのしかかる、そんな様だった。


「確かにこの街にした事は許されないし、ドクターもアベンチュリンさんもリューシュも許して無いと思う。でも、ドクターが拾った化け物の髪の毛を見て少し、感じたの。多分魔法をかけた人は悪い人だけど、本当は悪い人じゃ無いと思う」


それを聞いたリューシュは目を見開き驚いた。

グレンデルが魔素からそんなことまで読み取れる様になったとは予想外のことだった。

だからこそリューシュはいつもの笑みを浮かべグレンデルの頭を撫でた。


「そっか、やっぱりグレンデルちゃんは優しいんだね~!!私は会って話してみないと分からないけどグレンデルちゃんがそう言うなら合ってると思う!だから」


リューシュはグレンデルの顔をのぞき込みより一層笑う。


「私に任せてよ!!」





◇





「ベルコちゃん!私の友達になってよ!!」


「「っ!?」」

「リューシュ・・・」


サリスとアベンチュリンはリューシュの口から飛び出た言葉に驚きを隠せない。

一方、手を繋いだままのグレンデルはリューシュを見上げ、手を強く握った。


「リューシュ!お前、何言ってるのか分かっているのか!」

「僕は彼女らしくて良いと思うけどな」


それぞれ声を荒らげたり、頷いたり、友達になろうと言われたベルコは声も出ない状態だが、リューシュはお構いなし。グレンデルと繋いだ手を離すと歩みよる。


「グレンデルちゃんから話を聞いて、さっきのベルコちゃんと話して分かったよ。ベルコちゃんはずっと寂しかったんだね。だから、あんな獣を作って周りに置いていたんでしょ?だから、私達が最初やっつけて髪の毛を燃やした時も罠と分かってもすぐに来たんでしょ?大切な大切な仲間だったから」


そっとベルコを抱きしめた。凍りついた足とリューシュの足が当たるが気にしている様子もない。


「あなたに、私の何が、何が分かるって言うのよ・・・」


抱きしめられたベルコは声を震わし瞳からは涙が溢れていた。


「私があの子達の代わりになる事は出来ないかな?グレンデルちゃんもサリス君もアベンチュリン君もいい奴だよ??ね???」



ひとしきり涙を流したベルコは弱々しく頷いた。先程までの強気な面影はなく、一人の寂しがり屋の姿がそこにはあった。





◇





目が覚めるとそこは見知らぬ空間だった。

目に優しい木目が特徴の装飾の凝った寝室。朝の光が部屋を照らし、気だるい身体を奮い立たせてくれる様だ。


「ここはどこかしら・・・」


布団をどけ、ベッドから降りると見覚えのない服を着ていた。少し大きいが気になるほどでもない。よく見ると自分ではとても手が出ない高級な服だ。


「なによ、この服」


独り言をつぶやきながらドアノブに手をかける。

ドアを開けると部屋と似た装飾の廊下が伸びている。人の声が聞こえる。騒がしい声がよく響いている。

声にひかれるように歩みを進める。


廊下の先の部屋に入るとそこは食堂だった。


「おはようございますベルコ様。お飲み物はコーヒーでいいですか?」


男の声が聞こえたかと思うと名前を呼ばれる。反射的に顔を上げるとそこには四人、テーブルに座っていた。


「おはようベルコ。飯が覚めるぞ」

「ベルコさん、おはよう。ここのご飯美味しいよ」


白衣姿の男と眼帯の少女が私に声をかける。


私に背を向けるようにして座っていた緑髪の女がこちらを振り向き満面の笑みで声をかける。


「ベルコちゃん!おはよう!!よく寝れた?しっかり寝れたかな!?」


うっすらだが昨日の記憶が蘇る。この人達は、私の新しい、仲間。

心で確かめるようにつぶやくと自然と笑みが浮かんできた。


「おはよう」

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