21話 決戦 破壊王と怪物
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半球状の岩のドームで囲まれた内部では一方的な戦いが続いていた。
「『テラ・スパイク』ふむ。まだまだ君は回復し続けそうだな、一体どういう仕組みなんだか」
ふぅ、と一息つき、不動槌を肩に担ぐアベンチュリンの前には土の棘に貫かれ浅く呼吸をするだけの醜い怪物の姿があった。
「グ…ガァアァァ」
怪物は再び声をあげると無理やり棘から抜け出そうともがき出した。動けば動くほど傷口が広がるが、構わずのたうち回る。
「またか、いい加減こちらも疲れて来ましたね。傷口もどんどん広がって、動かない方があなたの為でもあるのに」
広がった傷はグジュグジュと音を鳴らし、黒い煙を上げ塞がってゆく。次第に元の形に戻るとアベンチュリンと向き合った。
再び不動槌を構えたアベンチュリンは怪物に向け駆ける。
「何度再生しようと同じ事。十回再生するのなら十一回!百回再生するのなら百一回!棘の餌食にしてあげます」
アベンチュリンは飛び上がり不動槌で怪物の頭を横に振り抜く。
「グガアァ!」
怪物は殴られた方向に一歩程よいよろめく。
よろめいている間に着地をしたアベンチュリンはすかさず地面を撫でる様に不動槌を振る。
「グッ!」
足首のあたりを叩かれた怪物はよろめいたまま動きが止まる。
怪物はよろめいた姿勢で無理矢理上半身を捻り、アベンチュリンを薙ぎ払う。
「おっと。危ない。僕の予想が正しければ」
そう呟き、バックステップで飛び退いたアベンチュリンは詠唱。不動槌で地面を叩く。
「『テラ・スパイク』」
叩いた地面から棘が伝い、薙ぎ払った怪物の腕の関節を貫いた。
「グルァァァ…」
腕を貫かれ、動けなくなった怪物の隙をアベンチュリンは見逃さない。
「『テラ・リキッド』」
怪物を貫いていた棘に左手で触れると岩は瞬く間に粘性を持った液状になり、右手で持っている不動槌に纏わる。
その場で一回転し、勢いをつけたアベンチュリンは渾身の力で怪物の横腹を殴りつけた。
「よし、付いたな」
吹き飛ぶ怪物の腹には先程の岩の液体がついていた。
アベンチュリンはそれを確認すると再び詠唱。
「『テラ・スパイク』!」
腹に着いた岩の液体は怪物の腹を抉る一本の棘へと形を変え、空中で更なる追い打ちをかけた。
「アァァァアアァァアッ!!」
腹を貫かれ歪なシルエットになった怪物は地面に落ち、転がりながらも再び起き上がり土の棘を腹から引き抜いた。
「やはりタフですね、君は。おそらくあのベルコという女性が関係するのでしょうが、サリスを待つしかなさそうですね。む?」
アベンチュリンは、吹き飛ばされた先で立ち上がり、腹の修復をしている怪物に違和感を覚えた。
「グガァ!?」
突如、怪物はビクンと大きく体を震わし、もがき出した。腹の傷からは白い煙が上がっている。
「さっきは黒の煙が、今度は白に…傷の治りも不完全。どうやら次で最後みたいですね」
そうつぶやくアベンチュリンはゆっくりと不動槌をゆっくりと両手で構え、飛び上がった。
「とっておきをおみせして終わりにしましょう」
怪物の目前にまで迫ったアベンチュリンは勢いそのままに地面に向け不動槌を叩きつけた。怪物とアベンチュリンの間に土の破片が舞い上がる。
「ガルァァァァ!!!」
視界を塞いだ土埃を怪物は鬱陶しいと言わんばかりに腕を振り続ける。
その動きには力は感じられず命乞いにも似た行動に見られた。
「『テラ・スパイク』!逃れられない土の牢獄に囚われよ」
舞い上がった破片を一つずつ不動槌で殴り、怪物の体に叩き込む。
「グガッ!…ガァ!」
不動槌によって叩きつけられた破片は怪物の体に届く頃には鋭い棘へと変わり、的確に弱点を突くことで、次々と動きを封じてゆく。
数十発と打ち込まれた時には土で出来た奇妙な形の塊が出来ていた。さながら土の牢獄の様に見える。
「やれやれ、魔法を使うのも、楽じゃ、無いんですがね」
縦横無尽に飛び回り棘を打ち込んだアベンチュリンは息を上げ、土の牢獄に近づく。
「やはりあなたは人間から作られた怪物のようだ。先程から観察させて貰ったが、運動における人体の弱点とあなたの弱点が似ている。関節に棘を打ち込めば動きが鈍り、腱を叩けば一瞬動きが止まる。さて、今度も再生しますか?しませんよね」
土に囲まれた怪物は声をあげることはなく、煙も出ることはない。
「怪物、完全に停止。僕の勝ちですね。サリス達と合流しなければ」
アベンチュリンは怪物を一瞥し、土のドームの壁に近づくと不動槌で壁を砕き外へ出た。
◇
外に出たアベンチュリンを迎えたのはリューシュ。アベンチュリンが出た穴とは少し離れた所で土の壁にもたれ掛かって座っていた
「あ!アベンチュリン君!!勝ったんだね?あの怪物に勝ったんだね!?こっちは少し前に終わったみたいだよ~!私はさっき来たばっかりだから、詳しくは分かんないや」
「なるほど、僕の予想が当たったみたいですね」
アベンチュリンは不動槌を背中に担ぎながらリューシュに近づく。
「ん~?予想?よく分かんないけど、サリス君のところ行こっか!」
アベンチュリンとリューシュは二人並んで前方に見えるサリスとグレンデルの元へと歩く。
「それにしても…すごい光景だね」
リューシュは「うわぁ…」と少し引き気味に呟く。
「全くだ。僕の愛する街を…」
二人が向かっている広場の向かって左は恐らくサリスが戦った跡。周りの地面や木ごと氷漬けになって、白い冷気を放ち続けている。
もう片方、向かって右は恐らくグレンデルが戦った跡。竜の様な巨大なトカゲに幾つもの炎の槍が突き刺さり、今でも激しく燃えて、陽炎を上げている。
絶対零度と灼熱はサリスとグレンデルのふたりが立っている所がちょうど境目で、凍ることもなく、燃えることもない比較的安全な場所が作られていた。
少し近づくとグレンデルが気付き、声をかける。
「あ、リューシュ、アベンチュリンさん」
グレンデルは二人に手を振り迎える。
「お、二人ともお疲れ、そっちも片付いたか」
「君が早くにベルコを倒してくれたおかげで早めに方が付いたよ。彼女からの魔力の補給が絶たれた途端に怪物は倒したよ。助かった」
「なるほどねぇ、あの人の魔法は離れていても効果が続くから本体を倒さないと、永遠に終わらないのか~」
「リューシュ、でも、教会の化物はすぐにやっつけれたよ?」
「確かに!!グレンデルちゃんそこに気付くなんて鋭いね!天才だねぇ??」
リューシュとグレンデルの会話を横目に、アベンチュリンはそう言いながらサリスの元に行くと、
「それにしてもサリス、君は限度というものを知らないのか」
合流するなりアベンチュリンはお説教を始める。
「あぁ、すまんすまん、文句なら後で聞くさ。そんな事よりやるべき事がある」
頭をかき、片手でアベンチュリンを制したサリスに全員の視線が集まる。
「やるべき事?敵はみんなやっつけたのに?」
首を傾げるグレンデル。もう帰って寝たいと言わなくても伝わってくる顔をしている。
「悪いなグレンデル。もう少し頑張ってくれ。あいつから話を聞かなきゃならん」
そう言ってサリスが指を指した先には氷の塊と化したベルコの姿があった。




