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Spell Driver (スペル ドライバー)  作者: vurebis
いざ魔法の街へ 〜フナリス編〜
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19話 決戦 ヤブ医者と侵略者

 風の奔流で一直線に大地を抉った一撃はベルコの頭部を捉え簡単に獲物を吹き飛ばす。


「おいおい、邪神の力なんてそんなもんかよ。ヤブ医者に吹き飛ばされてるぞ?」


 右手から空気を放出した攻撃の反動を受け半歩ほど後退したサリスは片手剣を弄び挑発する。その顔には笑みが浮かんでいる。


「私の弱点ですって?はったりもいい加減にして頂戴」


 ベルコは吹き飛ばされた先で起き上がり土埃を払うと怒りを露わに再び短剣を構えサリスに向かい一直線に駆ける。

 一瞬で距離を詰めたベルコは短剣を片手で振りサリスに肉薄する。辺りには剣戟の音が響き絶え間なく続く。無数のベルコの斬撃をサリスは片手剣でいなす。ひたすら攻撃をかわすだけのサリスは考え事をするように無表情を貫く。


「ふふ。なかなか貴方からは切ってくれないのね。それとも私の美しい剣捌きに圧倒されて切れないのかしら」


 笑いながら短剣を振る姿はまさに鎌鼬。近づくものは木っ端微塵にする風になりつつある。


「『フレイ・ショット』。人が考え事をしている時は静かにするもんだ。そのくらいグレンデルでもできるぞ」


 片手剣の先端をベルコに向けると一発の炎の弾丸を発射する。


「あぁぁ‼」

 燃える弾丸により右肩に銃創と火傷を負ったベルコは思うように短剣が振れず苦悶の表情を浮かべる。


「このくらい大した怪我ではないわ!ロキ様の力さえあれば!」


 そう言うと今まで肩の傷口を押えていた筈のベルコは突然先ほどと同じく軽い動作で短剣を構え振りかぶった。

 勢いそのままに両手で短剣を構え横に振ると同時にロキの力を発動。短剣を大鎌に変換し切っ先による刺突攻撃を繰り出した。


「しまっ・・・」

 

 サリスの回避も虚しく鋭い大鎌の先端はサリスの左太腿を捉え肉を簡単に裂く。


「ぐがぁあぁぁあ!っくそ!見誤ったか『ウイン・ジェット』!」


 鋭い痛みに声を上げたサリスはとっさに傷ついた左足を抑えながら足元に空気を押し出しベルコともの距離を取る。


「見誤ったが見えたぞ。確かにあいつは両手で構えた。はったりで見抜いたとか言ってみるもんだな」


 この時サリスの脳裏には一つの仮説が立っていた。

(あいつはさっき片手で振っていた筈の短剣を大鎌に変換する寸前だけ両手で握り直し振った。ここにあいつの魔法の弱点がある筈。考えろ。今は敵の情報が欲しい。その前に足だな。これじゃ攻撃は躱せれるが反撃ができんな。)


「くそったれ。フナブの治癒色はあまり使いたくないんだがな。『フナブ・リバイブル』。これで多少は動けるか。長期戦は少し厳しいかもな。」


 サリスの太腿が緑色の光に包まれ傷を癒す。止血はできたが未だ素早い動きは出来ずにいる。


「この足がばれたらお終いだな。一気に殺されかねんここから動かないのが吉だろうな」


 見た目には完治しているように見える足だが外傷だけの話だった。フナブの治癒魔法は詠唱者が最も直したい部分を素早く直し、残りはジワジワと回復する魔法が多い。その為継続的に魔素を必要とする。特に『フナブ・リバイブル』は見た目の治癒速度に特化した魔法な為、全快にはまだ時間と魔素が必要だった。



(ここからはあいつの魔法の性能と俺のこの傷の治癒具合と余分に使える魔素の量の騙し合いってところか。こっちから仕掛けないと不利な戦いになるな。)


「おいベルコ。お前の魔法だが何となく想像がついた。」


 サリスは今までと同じ声のトーンで声をかける。なるべく弱っていることを悟られないように。


「あら。さっきも同じ事言ってなかったかしら?ロキ様の魔法を破れるのかしら。」


ベルコはわざとらしく首を傾げてサリスにゆっくりと歩み寄る。サリスとの会話を楽しんでいる様にも見える。


「ああ。太もも切られながらしっかりと確認させてもらったからな。お前の攻撃の癖をな。」


 対するサリスもヘラヘラと笑いわざと逆なでをするように答える。

 未だに鈍い痛みと熱が残る足に力を入れ、ふらつかないようにひたすら耐える。


「癖、ねぇ。それがわかった所で何か変わるのかしら?今まで通り切られてお終い。じゃなくって?」


「そりゃねえな。お前の癖が分かれば次にくる攻撃が分かる。未来予知が可能になる。ここまで言ってやったんだ。勿体ぶらずに近くで見せてくれよ。お前の大好きなロキの魔法をさ。俺も見せてやるよ。スキャナーの力。」


 サリスは肩をぐるぐる回しそう言う。


「楽しみだわスキャナーの力がみれるなんて私光栄よ。鑑賞させてもらったら殺すことにするわ。」


 ベルコは獲物の攻撃範囲までサリスに近寄ると大鎌から大鉈に武器を持ち替え地を這うような軌道で下から切り上げる。


「『テラ・ウォール』意外と素早い奴め。」


 サリスの喉笛を切り裂こうとするも土の壁に激突し動きが止まってしまう。


「っく!こんなはずじゃ・・・!」


 ベルコは素早く大鉈をレイピアに変え正面にできた壁を回り込みサリスの側面から鋭い突きを繰り出すもサリスは上半身を仰け反らせ躱す。今度はと斧に変換しサリスの頭を割ろうと大きく振りかぶるも、隙だらけになった腹部にサリス渾身の掌底を叩き込まれ数歩後ずさりをして距離が離れてしまう。そればかりか掌底の影響からか吐しゃ物を辺りに吐いてしまう散々な有様だった。


「どうして私の攻撃が・・・さっきまであんなに追い詰めれたというのに!」


 怒りの表情を隠すことなくサリスを睨むが視界の先の男はヘラヘラと笑うばかり。


「言ったろ?お前の攻撃は予想可能なんだよ。」


「あれははったりじゃ無かったっていうの!」


「最初ははったりだったさ。正直まったく予想もつかない攻撃だった。でもな、その魔法は大きな弱点を抱えたままだ。」


「あ、ありえないわ!そんなこと‼」


 ベルコは今度は細長い棒へと武器を変換させ大きく振り回す。しかしサリスは棒が届く範囲のさらに遠くへと移動していた。


「人が武器を使うとき同じ構えで違う武器を扱えると思うか?答えはノー。不可能だ実際お前も変換する直前に次の武器に備えた構えをしている。隠しきれるわけないよな。すべての武器の達人ならあるいはとは思うがお前の戦い方を見るとわかる。あとは構えを見極めればおおよその想像はつく。避けるのも容易い」


「そんな筈ないわ!私の魔法は完璧なのよ・・・もっとも美しい魔法の筈!!!」


「あぁ、うるせぇよ。美しいだの完璧だの聞き飽きていい加減どうにかなりそうだ。丁度よく足も治ったしそろそろ終わらせるぞ」


 お互いの武器の射程外から喋るベルコを無視したサリスは、動かせれない右足を軸に左足を強く一歩踏み出し大地を踏みしめる。するとベルコとサリスの足元に青い幾何学模様の魔法陣が浮かび上がる。二つの魔法陣を繋ぐようにして一筋の青い光が延び、繋がる。


「『テラ・ベリー』!」


 サリスが呪文を唱えるとベルコの視界が一段低くなる。


「っ!これは⁉」


 足元を見ると足首までが地面に埋まり身動きが取れなくなっていた。

 ベルコは槍を持ち足元をザクザクと土を掘ろうと苦戦している。


「ジタバタすんな。お前はこのまま俺の魔法の餌食になってもらうぞ。『テラ・ドロー』」


 再び詠唱した魔法によって足が埋められた状態のベルコは青い光に沿ってサリスに引き寄せられるように向かっていく。


「土が⁉足ごと体を押してる⁉」


 ジタバタと腕を動かし抵抗するも勢いは全く止まらない。


「止めれる筈はない。見せてやるスキャナーの力。すべての属性の魔法を使って屠ってやる。まずは創造色と攻撃色だ。とりあえず大魔法見せてやるよ」


「『ユミル・フリーズ』」


 サリスがかざした左手から白い風が巻き起こる。その風はすべてを凍てつかせる絶対零度の暴風。


足が埋められ身動きが取れないベルコの肌を優しく、しかし鋭く撫でる。


「こんな広範囲を凍えさせる魔法なんてっ!まるで神の力じゃ、な・・・い」


凍える風はベルコの全身を吹きさらし指先から腕、鼻先、顔そして全身へと凍らせていき氷の彫刻を作り上げた。


「とっておき見せるまでもなく逝っちまったか。神の力か。悪くない回答だな」


 氷彫刻を前にサリスはふぅ。と一つ白い息を吐いた。


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