INTERMISSION-VI - talking about Secret of Halka -
※当作品は発行元である株式会社ポニーキャニオン(ぽにきゃんBOOKS)に許諾のもと、掲載を行っております。
「ハルカさん、ハチミツとってきました~」
「あら、本当にとってきてくれたんですのね♪」
あくる日、約束どおりハチミツをとってきてくれたリンちゃん。
「いっぱい取れました♪」
「え……」
それは、もう見たまんま、完全にゴロリとまるまる蜂の巣だった。しかも5個。
「あ、大丈夫です、中にはもうハチいませんよ~♪」
ま、まぁそうなんだろうけど、やっぱりドキッとしますわね、蜂の巣って。
「…これって、どうやって調理っていうか、ハチミツを絞り出すのかしら…?」
「あ、それやり方あるのでまた夕飯のときにやりますね♪」
「リンちゃんは本当にお料理詳しいわね♪」
「エヘヘ、お料理だったら任せてください」
まぁ、お料理が得意でも普通は蜂の巣の処理なんかしたことない人の方が多いだろうけど。
「リン~、いくわよ~」
「あ、うん、ちょっと待ってね~」
玄関の方から聞こえたのは亜衣ちゃんの声。今日はこれからクロちゃんにこの周辺のお店とかを案内するらしくて、4人でこれから出かけるみたい。
「ハルカさんも行きますか?」
「ううん、私はお洗濯がまだ残ってるから。あ、塩とレモンが減ってるから、買い足しておいてもらえるかしら」
「あ、ハイ。じゃあ行ってきますね~」
……さて。
みんなが出かけたこの時間のうちにやっておかなきゃいけないことがある。それは、マイティマッスルのマスクを洗うこと。伸縮性インナーは見ようによっては普通のスポーツインナーだけど、このマスクだけはどうしても誤摩化しようがない。それでいて、しばらく放っておくと普通に臭ってくるから、みんなが出かけたタイミングでスペアも含めて手洗いして、乾燥機の速乾モードで急いで乾かして、畳んで秘密の衣装ケースにしまわなきゃいけない。どんなに急いでも15分はかかる。みんなが帰ってくるのは、まぁたぶん寄り道もするだろうから30分くらいかしらね。でも、用心して出来るだけ早く済ませるにこしたことはありませんわ。
3枚のマスクを洗面所で手洗い。はぁ…。つくづく、なんでこんなことしなきゃならないのかしら。
乾燥機を開けて、中にマスクを放り込む。グルグル回るマスクを見つめながら、改めてため息が出る。もっと女の子らしいギフトならよかったのに。たとえば鳥みたいな翼が生えるギフトとか、動物と喋れるギフトとか。…私は無駄にA級なのに、クロちゃんみたいな子に限ってギフトに恵まれてないっていうのは皮肉な話ですわ。
ピーッという音で、乾燥機の回転が止まる。乾ききった3枚のマスク。男っぽくて、カッコイイデザイン。まさか私がマイティマッスルだなんて、きっと誰も思ってないでしょうね…。
マスクを部屋にしまい込んだ私はついでに、さっき入れ替えで外に出した乾燥機の中の洗濯物をリビングに運んで畳むことにした。洗濯物を畳んでる時間は、なんだか心がゆったりする。
…booom………。
…?
いまなにか、嫌な音がした気がしたけど…
気のせいですわよね。いやでも、まさか。
…Booooom………。
洗濯物の中をモゾモゾと動く、何か。
工事現場などでよく見られる、あの黄色と黒の虎模様。危険を象徴する毒々しい鮮やかな警戒色。それが、固いのか柔らかいのかわからない小刻みに揺れる大きなお尻を動かして、洗濯物の上を歩いていた。しかも2匹。
「……ちょ…っと……」
リンちゃん、リンちゃん!ハチは入ってないって言ってたじゃない!しかもこれ、これって、ス、スス、スズメバチじゃない!
禍々しい牙をカチカチ鳴らすように、凶悪な顔で堂々と動き回るスズメバチ。
どうすればいいのかしら。騒いだらまずいわよね、でも、逃げたら刺されるかしら。ああ、どうしよう…!
とりあえず私はゆっくりと立ち上がると、後ずさりする感じでスズメバチと距離を取った。そして、一歩、二歩、よし、上手くリビングから出てリンちゃんが帰ってくるのを待ちましょう。…三歩、四ぽぉおおおああ!
洗濯物の上を這い回っていた二匹のスズメバチは、急にこっちに向かって飛んできた!
どうしよう!どうしよう!あ、そうだ!そういえばマイティマッスルって銃弾も弾く鋼の筋肉よね、っていうことはマッスルベルトを解放した腕ではらえば…!
私は、ほんの一瞬なら大丈夫と判断して、男前十万馬力【マッスルベルト】を解放する!
幸い、ノースリーブの服を着ていたおかげで服は破れずにすんだ。そして、はちきれんばかりにみなぎる筋肉を見せつけた私の両腕は、二匹のスズメバチを素手で払いのけた!
バシッ!と、手の甲にあたる感触。固いですわね。スズメバチってなんて頑丈な装甲なのかしら。とはいえ、マッスルベルトを解放した腕ならまず安心ですわ。なにせこの腕は銃弾をはじ――チクン!
いっったあああああああああ!
「ぉぉぉぉ……」
ハチの針ってなんでこんなに痛いんですの…?銃弾とは全然質が違いますわ…。そういえば、ハチの針って痛みを和らげる体内麻酔みたいなのを貫通するって聞いたことがあるような…。
「うう…いっ…っ…」
ああ、泣きそう。なんでこんな目に…。
刺された所をギューーっと抑えながら、痛みに耐える。そんな私を、スズメバチ二匹は余裕ぶった様子で旋回して舐めるように飛んでいた。
「よくもやりましたわね…」
強がってみたけど、人相の悪いスズメバチ二匹は、怖い顔で睨み返してくる。もうくじけそう。リンちゃん早く帰ってきて…。なんてことを思ってたら、スズメバチは再び私に攻撃を仕掛けてきた!
「きゃああああああああああ!」
筋肉隆々の腕で、近くにあるものをとにかく投げる!すると、勢いよく投げた椅子は壁で跳ね返ってこっちに飛んできて、それを避けようとした私は足下に散らばった本を踏んで派手に転ん――――― !
…………。
「…カさん!ハルカさん!」
「……ぶですか!?」
「…大丈夫ですか!?ハルカさん!」
「…ん………」
いたた、なにかしら、手の甲がすごく痛いわ。それに後頭部も、痛…こぶが出来てるみたい……。
目を開けると、そこにはリンちゃん、亜衣ちゃん、悠美ちゃん、クロちゃんがいた。
!!!!!!!!!
「……っあ……ぁ……」
終わった。緑色の筋肉が隆起した私の両腕は、みんなの目に晒されてしまった。
「…あの、あ、あのこれはね、その、違うんですのよ、ちょっとなんていうか、そう、そ、育ち盛りっていうか…」
ああ、短い人生だったわ。これでもう私は筋肉隆々スーパーマッチョなキン肉ガールとしてみんなに親しまれてしまうのね。
「おい、落ち着けハルカ。ハチなら大丈夫。もう退治したよ」
「え?」
あれ?おかしいわね。私の腕に対するリアクションはないのかしら。
「ハルカさん大丈夫…?」
クロちゃんが虫刺されの薬を塗りながら心配そうに私の手を握ってる。あ、あ!
「よかった!大丈夫でしたのね!」
「へ?」
そこにあったのは、普通の私の腕だった。そういえば、男前十万馬力【マッスルベルト】を発揮しながら気絶したことなんかなかったけど、気絶したらギフトは解除されるのね!よかった!本当に良かったわ!
「え、全然大丈夫じゃないんじゃ…?」
「あ、えっと、そ、そうですわね!いたたた!でも全然平気よ!うふふ!本当によかった!」
私のおかしな返事でみんながキョトンとしてたけど、ああ、本当に良かった。自分のギフトのことって意外と知らないものね。これからは気をつけなきゃ。危ない危ない!
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熊瀬川リン:三森すずこ
生田目亜依:内田真礼
超野悠美:諏訪彩花
剛力ハルカ:早見沙織
和迩黒子:竹達彩奈




