第6話『私の嫌いなもの②』- My Unfavorite Things
※当作品は発行元である株式会社ポニーキャニオン(ぽにきゃんBOOKS)に許諾のもと、掲載を行っております。
……食後は、なんとなくテレビとかを見ながらそれぞれ過ごす。リビングには漫画を読んで寝転んでる悠美、テレビを見て紅茶を飲んでるハルカさん、その横にクロ子。キッチンでは、私とリンが洗い物をしてる。
「ぎょわぁあああああああ!!」
!?
いきなり叫び声を上げたのは悠美だった!
「でででだでだでだでだでたーーーーーー!」
まさか、また!?
「キャハハハハハ!大丈夫?それオモチャだよ!悠美かっこワル~い♪」
見てみると、悠美の側にいるGらしきものは、オモチャ屋さんで売ってるようなソフトビニール製のものだった。
「お、おまおまえ、おまえなぁ!だい…ほんっとやめろよそういうの!」
悠美が、余裕のない顔で本気で嫌がってる。ほとんど唯一の弱点を見つけたことが嬉しいのか、クロ子は楽しそうにオモチャのゴキブリを回収していた。
「クロちゃん、人が嫌がることしちゃだめよ?」
「ハーイ♪」
少し困った顔のハルカさんの腰に巻き付くようにベタベタしつつ、悠美の方を見てニヤニヤするクロ子。悠美は、全然平気だぞみたいな顔をするのに必死で、珍しく不機嫌そうだった。
*~*~*~*~*~*~*
朝。5人で揃って登校する通学路。
いつもはハルカさんと二人で登校してたこの道も、いつのまにか5人になってちょっと賑やかになった。悠美もみんなに起こされて一緒に登校するようになってる。特に今朝の悠美は寝坊することもなく、朝からシャワーも浴びている様子だった。
「なんか悠美、レモンの匂いしない?」
「ん?ああ、今朝はレモン汁を搾った風呂に入ったからな」
「へぇ、いい匂いね。香水とか興味なさそうなのに、急にどうしたの?」
「…亜衣、あれからあたしは、ありとあらゆるG対策について調べたんだ」
「え?」
G対策?
「…Gには塩やレモンが有効なんだ。だから、隙間とか窓際とかGが入ってきそうな場所に盛り塩なんかしておくと効果的だったりするぞ。Gはそれこそ何でも食べるけど、唯一食べれないものは塩なんだ。塩を食べたGは体内の水分を失って、そのまま弱って死んだりする。Gにとって水分は生命力の要なんだ」
「…そ、そうなんだ」
「レモンは、絞り汁を霧吹きに入れて撒いておくと良い。レモンの匂いはGにとっては致命的なダメージになるんだ。レモン油の蒸気を浴びたGは足が痙攣して動けなくなる。ハーブやアロマオイルなんかも効果的だ。匂いの時点で嫌がって近寄らなくなる。それに部屋も良い匂いになるしね。そして極めつけは寒さだ。冬場なんかは冷蔵庫のモーター部とか、熱をもつ家電の隙間とかに巣を作って暖をとって生き延びてるらしいんだけど、寒い日に窓を全開にして家中を寒い状態にして5時間くらい放置すると、それだけでGも卵も全部死ぬんだ。そして万が一直接対決をしなきゃいけないときは、熱湯をかける。あれで結構熱に弱いんだ。さらに、その熱湯には洗剤やシャンプーを混ぜておくとより効果的だな。Gの呼吸口は油のついた毛で塞がれてるんだけど、洗剤を使うとその油が分解されて水が口に入って窒息する」
「へ、へぇ~」
怒濤の調査報告に思わずポカーンとしてしまったわ。なんて執念かしら。さすが悠美ね。本気を出したら驚くほど勤勉だわ…。
「クスクス…悠美、髪の毛になんかついてるよ?」
「え?」
ニヤニヤした様子でクロ子がささやく。悠美の角度からは見えないけど、ただ、みんなが視線を集めているそれがGであることは、なんとなく伝わった。
「ーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
全身から汗を噴き出しながら、声にならない悲鳴、というか雄叫び?を上げつつ、通学路の上に空高く飛び上がる悠美!そのショックで地面に落ちたGらしき影を見た悠美は、半狂乱で近場にあった建築中のビルの鉄材を持ち出して、地上50mからダーツのように鉄材を投げる!雨霰と降り注ぐ10本ほどの鉄材はすべてそのGの影のあった所に突き刺さり、通学路には鉄材のオブジェが完成した。
「…ハァ…ハァ…」
「あははははは!超ビビってる!レディダイナマイトなのに!キャハハハ!」
「…大丈夫?悠美ちゃん…」
「ああ、平気だ。いまので多分しとめただろ」
そう簡単に息があがらないはずの悠美は、すごい動悸だった。よっぽど嫌いなのね…。
学校に到着するまで、悠美の警戒はピリピリしていた。こんなに真面目な悠美はかつて見たことがないわ。
そして、2時間目の授業、体育の前。
「ああ、次体育かぁ。体操服体操ふ…く」
「っっっっだぁあああああああああああああ!」
ガッシャアアアアアアアアアアン!
「どうしたの悠美!?」
急に悠美は、勢いよく鞄を投げ捨てた!その中には体操服、そしてG。鞄は、教室の窓を割って空の彼方に消えていった。
「ちょ…また出たの!?」
「っハァ…ハァ…なんで…こんなに対策してるのに…!」
深刻な顔で青ざめながら席に座り込む悠美。…ん?
「悠美、これ?」
「え?」
悠美が鞄を投げ捨てた時に落ちたそのGらしきものは、昨日のオモチャだった。
そして、教室の外から聞こえる誰かの声。
「キャハハハハハ!あーおっかし!」
まぁ、クロ子の声なんだけど。
「…そういうことかクロ」
どうやら、通学途中の件もクロ子の仕業だったらしい。悠美の背中から、ゴゴゴゴ…という地鳴りが聞こえる。どうやら、クロコダイルはレディダイナマイトを本気にさせてしまったようだった。
でもまぁ、面白そうだからほっとくことにした。
*~*~*~*~*~*~*
…夕方、悠美はどこかに行ってたと思ったら、なんか泥だらけで帰ってきた。その手には、なにか大きな箱。
「おかえり。…ちょっと、どうしたの?服それ着替えなさいよ」
「あ、うん。ちょっと色々あってね。ねぇ亜衣、クロっていまいる?」
「? ええ。リビングにいるけど」
「そっか、じゃあさ、あたし風呂入るから、3分後くらいにそれとなくクロに『あたしが風呂に入ってる』って言ってくれないかな」
「え?どういうこと?」
「いいから」
よくわからないけど、まぁ言われた通りにしようかしら。
一度自分の部屋に戻った悠美は、その後すぐ宣言通りお風呂に向かった。
「……悠美、外でなにしてたのかしら。なんか泥だらけで帰ってきたのよね。すぐお風呂に入らせたけど」
言いつけ通り、世間話っぽく悠美が風呂に入ってることを伝えてみる。
「悠美いまお風呂はいってるの?」
すると、なぜかクロ子は食いついた。
「え…? まぁそうだけど」
「へぇ~」
「どうかしたの?」
「ひひひ…シーッ!」
満面のイタズラ笑みを浮かべるクロ子は、自分の部屋から虫かごに入ったG、今度は普通に生きてる奴を持ってきた。
「ちょ……」
私が止める間もなく、悠美の部屋に入っていくクロ子。
これは、最悪ヒロインハウスが崩壊しかねない事態に発展する奴だわ。さすがに止めないと…。
お風呂に入ってる悠美にこのことを伝えにいこうとすると、悠美はお風呂には入らず、汚れた服のままリビングに戻ってきた。
「あれ?どうしたの?」
「クロ子は?」
「ええ、その…あの虫の入った虫かごを持って悠美の部屋に入っていったから、いまそれを悠美に言おうと思って…」
「そうか。ならOK、むしろ完璧だ」
「え?」
ドシッ。
自分の部屋の前に座り込んでクロ子を閉じ込めた悠美。ご丁寧にオリジン・オブ・ザ・ヒーローズを全開に発揮して青いオーラをみなぎらせ、どんな怪力でも絶対開かないように扉を塞いでいた。
そして10秒後…。
(ぎょえええええああああああああ!だだあだだだだだだ出して出して出して~~!)
ガチャガチャ!ドンドンドン!
「どうしたんだークロ子。あたしの部屋になんか入って、なにしてるんだ?」
(ごめん!ごめん出して!謝るから!ああああああ!)
「ん~?ごめん、よく聞こえないなぁ」
な、中で何が起こってるの…!?
クロ子の絶叫が響く中、私は悠美に近寄って聞いてみる。
「ど、どういうことなのこれ?」
「ん?いやさ、今朝言ってたG対策の中でね、実はもう一つやったことがあるんだよね」
「もう一つ?」
(ゲコゲコ、ゲコゲコゲコゲコ)
…部屋の中から、なんかゲコゲコ聞こえる。
「カエルって、Gを食べるんだ。あたしの部屋に忍び込んだGを食べてもらうために捕まえてきたんだけど、うっかり勝手にあたしの部屋に入ってGを仕掛けてる人とかいたら大変だなー。餌を狙ってるカエルに凄い襲いかかられるんじゃないかなー」
(ぎゃああああああああとんだぁああああああこっちくんなあああああ!)
「…そのカエル、何匹捕まえてきたの?」
「できるだけでっかいウシガエルを10匹ほど」
…………。
(ご"め"ん"なざ"あ"あ"あ"あ"あ"い!)
悪意に満ちたニッコリとした笑顔の悠美は、黙ってドアの前に鎮座している。
カエルが苦手なワニの絶叫は、悠美の気が済むまで響き続けた。
TO BE CONTINUED!!
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熊瀬川リン:三森すずこ
生田目亜依:内田真礼
超野悠美:諏訪彩花
剛力ハルカ:早見沙織
和迩黒子:竹達彩奈




