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スーパーヒロイン学園  作者: 仰木日向
スーパーヒロイン学園
13/22

第5話『最弱のヒロイン、クロコダイル!①』 - Crocodile The Weakest Heroine !

※当作品は発行元である株式会社ポニーキャニオン(ぽにきゃんBOOKS)に許諾のもと、掲載を行っております。

(厄介なことになりましたわ…)


 問屋街のある商業エリア、ウェストサイド地区。このあたりは、老舗のお菓子屋さんやレストラン、仕立て屋さんなんかがある少し大人向けのエリア。お父様へのプレゼントのネクタイを頼んでおいた仕立て屋さんに足を運んだ私は、その帰り道、トラブルに巻き込まれてしまった。


「…人を呼びますわよ。道をあけてください」


 複数人で挟みこむ形で裏路地に誘導された私は、建物の間に追い込まれ、逃げ道がない。


 ウェストサイド地区は、少し治安が悪い。無法地帯のチェルシータウンほどではないにしろ、この街で若い女性が一人で歩くのは少し危険だった。運が悪ければ、この辺りを縄張りにしてる不良グループ『ストンプ団』の軽犯罪に巻き込まれる。


 まぁ…それでいままさに巻き込まれてるのだけれど…。


 こういう場合、たとえば私のギフト『男前十万馬力【マッスルベルト】』を使えば、全くなんの問題もなく脱出できるのだけれど、そうすれば少なくともこの不良達には正体がバレるのと、それ以外にも誰かに目撃される可能性がでてしまう。そう考えると、うかつにマイティマッスルになるわけにもいかない。


 だから必要最小限、例えば腕を掴まれたら腕を怪力でひねり返すくらいのことをして、上手く切り抜けるしかない。面倒だけど、ここで短気にならないように気をつけないと。


「ねぇ緑髪のお姉さん、良い服着てるねぇ。ところで俺たちちょっと金に困ってるんだよね。ちょっとだけでいいんだけどさ、すぐ返すから、お金貸してくんない?そこのATMでおろしてくるから、カード貸してよ。あと暗証番号も教えて欲しいな」


 社長令嬢の私は、お父様から勉強に必要なお金(っていうには多過ぎる額だけど)を預かっている。万が一にもこんな不良達に渡すわけにはいかない。まぁ、どんなに強い不良だろうと、A級ギフト能力者が相手でもないかぎりピンチにはならないんだけど。


「…あなたたち、もしかしてギフト能力者ですか…?」

「あ?なんだ、ギフト能力者じゃなきゃ大丈夫だと思ってんのか?ギフトなんかなくてもな、これがあれば大体の奴は素直にお金を貸してくれるんだよ」


 そう言ってストンプ団の一人は、懐に忍ばせたバタフライナイフをちらつかせた。

 よかった。これくらいならどうってことありませんわ。あと、いまので明確に恐喝になりましたわね。少しくらい腕をひねっても文句は言われないはずですわ。


「…すいません、通してください」

「あーダメダメ!ちゃんと話聞いてた?」


 無理に通ろうとした私の肩を強く押し、裏路地に押し戻すストンプ団。

 仕方ありませんわね…こうなったら。


「そこまでよ!ストンプ団!」


 !?


「なんだ!?」

 

 周りを見渡すと、私の背後、路地の奥の方の少し高いところで叫ぶショートヘアの少女。


「ボーヤ達、そんな誘い方じゃお姫様はダンスを踊ってくれないよ!」

「だ、誰だ!?」


 誰!?


「わたしは『悪を噛み砕く正義の牙、バスターポリス最強のヒロイン・クロコダイル!』」

「…やっべぇ、ヒロインかよ!」

「でもクロコダイルって誰だ?そんなヒロインいたか?」


 クロコダイル…?たしかに、ヒーロー庁の公認ヒロインリストにはそんなヒロインいなかったような。学生ヒロイン?それとも、非公認ヒロインかしら。どちらにしろ、助かりましたわ!


「ふふふ…わたしを知らないなんて、ちょっと遅れてるよ!どおりでダサいジーンズ履いてるわけだね!家に帰って最新のトレンドをチェックした方がいいよ!」

「降りてきやがれヒロイン。俺はな、ギフトがあるからっていつでも上から目線のお前らみたいなのが死ぬほど嫌いなんだよ」


 ストンプ団の、たぶんこれはこの中では一番偉いやつなのかしら。その男が、クロコダイルさんに向かって叫んでいる。


「おっと動かないで!わたしの右腕はいま、生贄を求めてうずうずしてるんだ。ちょっとでも動くと、このデンジャラスガンが火を噴くよ!」


 クロコダイルさんの右腕は、肘のところまで覆い尽くす金属製のサイコバスターになっていた。…どうやらこの子は、手からレーザービームが出るビーム系のヒロインらしい。


「…ちっ…じゃあこっちはコレだ!」


 ストンプ団の一人が、懐に手をしのばせる。とりだしたのは…やっぱり銃ね!

 まずいですわね、銃は、ギフトの種類によっては耐性がありませんわ。なんとかしないと…


 え!?


「デンジャラスガァーーーン!」

 BEEEEEAAAAAAM!


 ええ!?わりと問答無用ですのね!?


「うわぁーーーー!?」


 しかも普通に一般人を撃ち抜いて…あれ?


「あ、あれ?なんだこりゃ?」


「デンジャラスガァーーーーーーン!」

 BEEEEEEEEAAAAAAAM!


 ストンプ団の男を照射し続ける、クロコダイルさんのデンジャラスガン。けど、これってあれかしら、赤外線スコープ?いまからビームが出るのかしら。見ている限り、このビーム自体には攻撃力みたいなのはないみたいなんだけど…。


「わ…わたしのデンジャラスガンが効かないなんて…!」


 愕然としながら膝をつくクロコダイルさん。

 えっ、やっぱりいまのがそのビームでしたの!?

 なんとなくポカーンとしてるストンプ団と、私。


「おい、クロコダイルって、思い出したぞ」

「なに?」


 なんですって?


「犯罪を見つけてはやたらと首を突っ込むけど、死ぬほど弱いから誰も相手にしない、バスターポリス最弱のネタヒロインがたしかそんな名前だって噂だ」


 なんですって!?


「…デンジャラスガンが効かないなら、仕方ないわ!これでもくらいなさい!」


 え、ちょっと、何をする気ですの?


「クロコダイル~~…たいあたり~~~!」


 高い位置から私たちの方にボディプレスのポーズで落ちてきたクロコダイルちゃん。でも、そのダイヴは敵に届かず、派手な音を出しながら私の後ろにあるゴミ箱の山に墜落した。


 呆気にとられてる私とストンプ団。


「……あの、だ、大丈夫?」


 クロコダイルちゃんはすっかり目を回して気を失っているようだった。

 な…なにがしたかったのこの子…?


「と、とりあえずこの子、どこかで寝かさなきゃ…」


 クロコダイルちゃんを抱き上げようとした私を、ストンプ団が囲む。


「わけわかんねぇ奴のせいで拍子抜けしちまったが、話は終わってねぇんだよなお姉さん」

「…どいてください。この子、頭を打ってますわ」

「じゃあ、通行料はらってくれよ」

「…………」


 私は、散らばったゴミ箱の中から、比較的柔らかそうなプラスチック製のフタを選んで、それをフリスビーの要領で投げる。すると、ゴミ箱のフタは十分な威力でストンプ団の間をピンボールのように跳ねながら飛んだ。


「なんだこいつ!?なんでこんな力が…!?」


 一番近くで倒れた人の足を持ち上げた私は、マイティマッスルの時ほど迫力はないにせよ、ジャイアントスイングに近い形でストンプ団のかたまりに仲間達に投げつける!


「うぉあ!おい!待て!」


 隙間の開いた瞬間に、クロコダイルちゃんを抱き上げて路地を出る私。

 少しギフトを解放した私の脚力は、すぐにストンプ団の追跡を逃れた。


*~*~*~*~*~*~*


「う~ん……」

「あ!ハルカさん!お友達、気がつきましたよ!」


 氷袋を用意していると、クロコダイルちゃんはわりとすぐに目を覚ました。


「あれ…?ここは?」

「ここは私の家ですわ。ごめんなさい、出来ればあまり動かさない方がいいと思ったんですけど、あそこじゃ危なかったから、とりあえずうちまで運んで手当してたの」

「ありがと…あ!ストンプ団は!?」

「ああ、それなら大丈夫。えっと…あの後すぐおまわりさんが来て、追い払ってくれましたわ」

「そっか。お姉さん、気をつけなきゃダメだよ?ウェストサイドはあんまり治安が良くないから、一人で歩いたら狙われやすいんだ」

「え…ええ。そうですわね」


 あなたの方がもっと危ないと思うんだけど…。


「今回は偶然わたしが通りかかったからよかったものの」


 ええ~…。


「でも、無事で良かったね!お姉さん♪」

「う、うん。どうもありがとう♪」


 悪い子ではないんだろうけど、なんだかちょっと、危なっかしいですわね…。


「あ、ハルカさん、リンゴ剥いちゃったんですけど、食べますか?」


 ヒロインハウスのリビングにいたリンちゃんは、クロちゃんの介抱を手伝ってくれていた。でも、脳しんとうを風邪かなにかと勘違いしてるのかしら、リンちゃんはリンゴを剥いてくれている。


「ええ、じゃあいただくわ♪クロちゃんもどう?」

「あ、じゃあ貰います。ありがとう♪」

「うん♪じゃあいま切り分けるね♪」


 ベアクローを出してリンゴをスパスパ切り分けるリンちゃん。話によるとそれぞれの爪で研ぎ方を変えてるらしくて、果物ナイフや出刃包丁みたいな感じで使い分けてるみたい。ある意味では、一番このギフトを活用してるのかもしれないわね…。


「あぁあああああ!」


 なに!?


「あなた、ベアクローのラブリーテディでしょ!全戦全勝のA級スーパーヒロイン!ここであったが百年目よ!わたしと勝負しなさい!」

「え、ええ~~!?」

「ど、どうしたんですのクロちゃん…?」

「どうしたもこうしたもないよ!バスターポリス最強の座はゆずれない!さぁ勝負だよ!」

「ええ~…やめようよぉ…」


 泣きそうな声で嫌がるリンちゃん。ダメですわね、これはちょっと止めないと。


「ダメですわよクロちゃん、喧嘩なんかしちゃ」

「お姉さん、これはヒロイン同士の悲しい運命なんだ、わたしたちは戦いを避けられない!」


「くらえ!デンジャラスガァアアアアアアン!」

 BEEEEEEEAAAAAAAM!


 あ、こら!


「きゃーーーーーー! ………あ…あれ?」


 ああ、別に大丈夫かもしれませんわね。そういえばそうでしたわ。


「…えっと…あれ?ビーム?」

「…わ、わたしのデンジャラスガンが…効かない…!?」


 愕然としながら膝をつくクロコダイルちゃん。

 っていうかそれ、さっき同じことやってましたわよね…。


「え、えっと……」


 リンちゃんが困ってこっちを見てくる。ど、どうすればいいのかしらね…。


「が、がおー!」

「きゃーーーーーっ!」


 ベアクローを出して両手を上げてみるリンちゃん。クロちゃんは目をつぶって小さくなってる。


「……えっと…」

「こ、今回はこれくらいにしておいてあげるよ!」


 涙目になりながら強がるクロちゃん。

 なんてことかしら、リンちゃんより弱いヒロインがバスターポリスにいたなんて…。


*~*~*~*~*~*~*


「へぇ~!クロちゃんもヒロイン学園【アカデミー】の生徒だったんだね~♪」


 せっかくなので、お昼も食べていくことになったクロちゃん。それぞれの部屋にいた亜衣ちゃんと悠美ちゃんも集まって、5人で囲むテーブル。ちなみに今日はビーフシチュー。リンちゃんが来てからはお料理当番はリンちゃんに任せっきりだったりする。そのかわり、私はお洗濯係で、亜衣ちゃんはお掃除係、悠美ちゃんはなにもしない係。


「へぇ~クロコダイルって言うんだ。私は悠美!よろしくなクロ!」

「よろしく!悠美もヒロインなんだよね?」


 なんだか、お互い遠慮がありませんわね。でも、相性も良さそうだしいいのかしら。


「ああ、私はレディダイナマイトって名前でヒロインやってるんだ」

「レディダイナマイト!?A級の!?」


 ああ!これがあるんでしたわ!


「ク、クロちゃん?いまはお食事中だから、お行儀よくしてね?」

「そ、そうですよね!ははは!はは…」


 あれ?妙に聞き分けがいいですわね…?


「なんだクロ?なんか言いたそうだけど」

「い、いや、なんていうか、レディダイナマイトはわたしのラスボスっていうか…」


 クロちゃんが冷や汗を流してる。なるほど、レディダイナマイトがどれくらいメチャクチャなのかは、流石に知ってるんですのね。


「でも…わ、わたし!あんたをヒロインだなんて認めてないから!」

「な、なんだぁ突然!?」


 ああ!もう!


「毎回毎回街を壊して、あんなのダメに決まってるでしょ!」

「なんだよ、みんな助かってるんだからそれでいいじゃん!」

「ダメ!あんなの全然かっこよくないもん!」

「かっこよさは関係ないだろ!?」

「かっこよくなきゃダメだよ!マイティマッスルならもっとかっこよくやるもん!」


 !


「マイティマッスルは凄いんだよ。誰かのピンチには必ず現れて、どんな強い悪者でも一瞬で倒して、無駄にビルを壊したりせずに事件を解決するんだから!マイティマッスルの方がかっこいい!」

「うん!そりゃそうだな!あたしもそう思う!」

「あれ!?えっと…うん!マイティマッスルってカッコいいよね!」

「ああ、ありゃ超かっこいいな!」


 なにかしら、この二人の、仲がいいのか悪いのかよくわからない感じ。

 それはそうと…。


「クロちゃん、マイティマッスルが好きなんですのね」

「うん!わたしくらいヒーローに詳しいヒロインはいないよ!」

「アクアマグナムとか、カッコイイよね~♪」

「ダメね!わかってないよリンちゃん!アクアマグナムなんて偽物だよ!わたしが好きなのは、あんな恰好ばっかりのヒーローじゃなくて、本物のヒーローの方!英雄ヘラクレックスとか、超人スーパーダイナミックマンとか、雷帝サンダーボイルドとか、そういうホントのヒーローが好きなの!」

「へ…へぇ~、そ、そうなんだ~」


「古いヒーローが好きなんだな。いまどきの女子高生にしては珍しいねぇ」

「ところでクロさん、あなたってうちの生徒なのよね?ちなみに、ギフトは何級なのかしら?」


 亜衣ちゃんが、落ち着いた雰囲気でクロちゃんに尋ねる。


「え、えっと…なんで?」

「いや、クロコダイルっていうヒロイン、うちじゃあまり見かけなかったから、ちょっとした興味なんだけど」

「…言わなきゃダメかな…?」

「別に恥ずかしがるようなことじゃないわよ?」

「だって、言ったらバカにされるし…」

「言いたくないなら別にいいけど…ギフトのレベルのことで笑ったりしないわよ。それに、うちではハルカさんがE級だしね」


 え? あ、そうでしたわ。そういうことになってましたわね。


「ハルカさんもE級ヒロインなの!?」

「え、ええ!そうなんですの。私のギフトはE級の子守唄【ララバイ】っていうギフトですわ」

「うわぁ~そうなんだ!わたし、わたし以外でE級の人に会ったのって初めて!」


 ごめんね、私も実はA級なんだけど…。

 っていうか、本当にE級っているんですのね。E級って都市伝説かなにかだと思ってましたわ…。


「ねぇクロ、その右腕のやつちょっと見せてよ!」

「ああこれ?いいよ!」


 クロちゃんの右腕、デンジャラスガン。威力こそはないけれど、見た目はかなり物々しいのよね。これって、ギフトが発現した時に腕が変質したのかしら。


 スポンッ


「スポン?」


「はい。これ、お父さんが作ってくれたんだ!」


 えええええ!?それって取れるんですの!?しかも手作り!?


「おお~、超カッコいいねこれ!あたしもこういうのつけてみようかな!」


 デンジャラスガンを腕につけてポーズをとったりしてみてる悠美ちゃん。それを、クロちゃんも一緒になってハシャいでる。


「でしょー!?この銃口の穴のとこから指差破壊光線【ポイントフィンガー】を出すんだ!」

「指差破壊光線【ポイントフィンガー】?ああ、ギフト?」

「うん。指から出るビーム。いまはまだ弱いけど、いつか絶対強くなるから、来るべき日のために秘密兵器として鍛えてるんだ!このビームは世界を救う切り札なんだよ!」

「そっかー!すごいなー!」


 たしか、悠美ちゃんがラスボスなんじゃなかったかしら?堂々と秘密兵器の話してるけど。


「…でもデンジャラスガンって重いし戦うときちょっと邪魔なんだよね」

 邪魔なんですのそれ!?じゃあつけなきゃいいのに!?


「リンちゃん!おかわりちょうだい♪」

「あ、ちょっと待ってね~♪」


 さっき揉めたかと思ったらもうすっかり友達になってるクロちゃんとリンちゃん。

 ちょっと変わってるけど、いい子には違いないですわね。


*~*~*~*~*~*~*


 お昼過ぎ、クロちゃんは誰かと待ち合わせがあるらしく、ヒロインハウスから帰っていった。騒がしい子だったけど、元気で可愛らしい子でしたわね。


「おお、ハルカ、なんかさっき任務携帯【ミッションベル】に連絡あったんだけど、今日ウェストサイドに行くんだっけ?だったら、ちょっと気をつけた方がいいよ。もしあれだったらあたしも一緒に行くから」

「なにかあったんですの?」

「いや、なんかストンプ団って暴走族みたいなのがちょっと騒いでるんだってさ」


 私を捜してるのかしら…。


「…ううん、お買い物は午前中に済ませちゃったの。ありがとう悠美ちゃん♪」

「そっか、それならいいんだけど」

「ところで、悠美ちゃん、その右腕につけてるのって…」

「ん? …あ」


 そこには、クロちゃんのデンジャラスガンが。


「…たしかクロちゃんが友達と待ち合わせしてるのって中央公園でしたわね。じゃあ届けに行ってきますわ」

「お、いいの?」

「ええ。お天気がいいから、ついでにちょっと公園でお散歩してきますわ♪」


*~*~*~*~*~*~*


 デンジャラスガンを届けるっていうのもあるけど、なんとなく嫌な予感がするのよね。さっき悠美ちゃんが言ってたストンプ団が暴れてるっていう話とか。もしかしたら、クロちゃんが巻き込まれるかもしれない。無事ならいいけど、一応ね。


 カレッジタウン中央公園は、6区の一つを代表する公園だけあってそれなりに広い。外周をぐるっとまわればヒロイン学園【アカデミー】が見える道。大きな丸い形の公園の中に入り、休日の午後の穏やかな景色を見る。公園には、ボール遊びをする親子、ベンチに座ってる老夫婦、自転車でどこかに向かってる子供達、フリスビーで犬と遊ぶ男の子。公園の景色はいつ見ても気持ちいい。そんな中を、クロちゃんを探しながらお散歩。広い公園だけど、端から端まで歩いたらきっと見つかりますわよね。


「あー!マイティマッスルだぁ~!」


 !?


 いまなんて!?なんで私がマイティマッスルだって知ってるんですの!?

 小さな男の子が、私に向かって走ってくる。いや、待って、どうして!?


「え、えっと…ひとちが…」

「……え?」


 男の子は私の横を素通りして、私の後ろを走って行く。その先にいたのは…。


「やぁチビッ子のみんな!マイティマッスルだよ!ワーッハッハッハ」


 そこには、お手製のマイティマッスルお面をかぶったクロちゃんの姿が!


「よーし!今日も悪を探してこらしめよう!」

「おーーーーーー!」

 

 ……大勢の小さい子供達が、クロちゃんに並んで歩いてる。あと、なにかしらこれ。マイティマッスルの歌?そんなのないんだけど、たぶんクロちゃんが考えたオリジナルの歌をみんなで歌ってる。


 でも、お休みの日に子供達と遊んであげるなんて、面倒見が良いんですのね。

 ちょっと危なっかしい子だけど、やっぱりいい子ですわね。


「…ねぇねぇ、マイティマッスルやりたい」


 男の子が、クロちゃんの袖を掴んでねだっている。マイティマッスルの役になりたいってことかしら…?


「ダメ!マイティマッスルはわたしの役!」


 ……えええ~……。

 クロちゃん、それはどうなんですの…?


「ズルいよ!いっつもそうじゃん!」

「不公平だよ!」

「んん~~~…。じゃあ、マイティマッスルの弟ならいいよ!」

「うん!」


 お、男の子も、それでいいんですの…?


「じゃあ私、今日はフレイムテイルがいい!」

「じゃあ俺ヘラクレックス~!」

「じゃあ俺サンダーボイルド~!」

「じゃあ僕、スーパーダイナミックマン」


「あ!みんな見て!いまあの人ゴミ捨てた!出動だ~!」

「お~~!」

 ……た、楽しそうでなによりですわね…。


「あっ!」


 足の遅い子(フレイムテイル役の女の子)が転んでる。膝から血が出てますわね…。


「大変だ!フレイムテイルがやられた!マイティマッスル、大変だ!」

「え!?ケガしたの!?」


 ふいに真面目な顔で駆け寄るクロちゃん。泣いている女の子の擦りむいた膝を見たクロちゃんは、手際よくバックから水と消毒液と絆創膏を出して、手当をした。


「痛いよぉ…」

「泣いちゃダメだよフレイムテイル。ヒーローはね、辛い時には泣いちゃダメなんだ。嬉しい時だけ、泣いていいんだよ」

「…うん」


「スーパーダイナミックマン!仲間のピンチに一番に駆けつけた君はスーパーヒーローだ!だから今日は先頭を歩いていいよ!今日のリーダーはスーパーダイナミックマン!」

「え~~ズルいよ~」

「なんだよそれ~!」

「ズルくない!今日はスーパーダイナミックマンが一番えらいの!」

「え…でも僕、弱いし…」


「強いとか弱いとか、関係ないよ!仲間を守れば、スーパーヒーローだ!」

「…うん!」


 やっぱり、いい子ですわね。

 デンジャラスガンを届けにきたけど、邪魔してもいけないので私は近くのベンチで座っていることにした。公園に響く子供の声が、とっても心地いい。


当作品は毎日朝7時更新です!

全国書店にて第1巻好評発売中!

また、スペシャルボイスドラマもニコニコ動画にて無料公開中です!

http://ch.nicovideo.jp/superheroineacademy

熊瀬川リン:三森すずこ

生田目亜依:内田真礼

超野悠美:諏訪彩花

剛力ハルカ:早見沙織

和迩黒子:竹達彩奈

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