変化
――帰宅――
「ただいま~」
「おぅ、おかえり~、どうだ…っ……」
……と言いかけて、お父さんの言葉が止まった。
口をパクパクさせている。
そりゃあ、そうだろう……。私たちがキレイになりすぎて……。
「え? え? なんで? 若返ってる?」
「ふふん、すごいでしょ!」
ドヤ顔のお母さん。
お母さんの変貌ぶりは、私の比ではなかった。
老廃物とか、不純物とかいうのは、
年齢が上がる程、多く蓄積してるらしい。
今回、そういうのを、体中から取り除いた結果、
シミだけでなく、シワとか、たるみとかもなくなり、
毛穴の奥まで不純物などが除去されて、肌はツヤツヤ。
肌色さえ、健康的な発色になった。
化粧も、不純物とみなされてすっぴん状態になったハズだけど、
化粧してた時より、数倍、美人だ。
もったいないので、今日は、すっぴんのまま、帰って来た。
あの機会は、昔出来た古キズの跡や、
体内の不調なども、同時に治してしまうそうで、
お母さんは、体の調子も良くなったと言っていた。
「な、何があった?」
「私も、奈子も、家畜契約というのをして、
体の不純物を取り除いてもらったら、こうなったの?」
「へぇ~」
お父さん、お母さんの事を、まわりから、シゲシゲと眺め、なんかうれしそう。
「あなたも、家畜契約してみたら?
あたしみたいに、若返るかもよ?」
「う~ん、これを見てしまうと、ちょっと考えてしまうな」
実は、お父さんは、最近、お腹についてきた贅肉と、健康診断で数値が悪くなってきている事に悩んでいる。
――翌朝――
学校に行く際、スカートがゆるい。
あれ?
ウエストが、閉まりすぎて、スカートがぶかぶかになっている。
幸い、ベルトも通せる仕様だったので、それで履いて、学校に……。
もしかすると、家中の服、総入れ替えしないといけないのかも……!?
――翌朝、学校――
「おはよぉ~」
クラスに入り、友達の「真弓」に声をかけたのだが……
しばらく、返事がない。
「おぉ~い!!」
彼女の目の前で手を振る。
彼女は、考えた上で、おそるおそる口を開く……
「誰?」
「私だよ。越智 奈子だよ」
そう言って、胸の名札を示す。
すると、クラスの中が、一斉にザワついた。
皆が「誰?」って思っていたらしい。
自分で言うのもなんだけど、今の私は、超絶美人だ。
そりゃぁ、気にもなるでしょうよ。
「いやいや、数日の間に、突然、変わり過ぎでしょ。成形でもしたん?」
「違うよ。『体内の不純物』を全て取り除いただけ……」
「え!?。どこで?」
「京都の病院で……」
「それって、いくらかかるの?」
「ただだよ。っていうか、むしろ、お金が貰える」
「ちょ……。どういう事よ!? もっとくわしく……」
「家畜契約っていうのあるでしょ」
「うん」
「その契約をすると、
月に1回、体の『贅肉』を納品するんだけど……」
「うん」
「この『贅肉』を採取する際に、
副作用で『体内の不純物』を自動除去する事になるらしくて……」
「不純物?」
「そそ……。
人がキレイじゃなくなる全ての物質みたいな……」
「その『不純物』で、何でお金がもらえるん?」
「お金になるのは『不純物』じゃなくて『贅肉』の方。
なんかね。試しに、この『贅肉』を食べた人がいて……。
そしたら、超絶おいしかったらしくて……。
それ以降、この『贅肉』が、
破格の値段で取引されるようになったんだって……」
「ふぇ~」
「つまり、毎月、お金もらえて、キレイになれるのです!」
私は、ドヤ顔で、そういう……。
クラス中から、人が集まってきた。
私のまわりに、ひとだかりが出来る。
「越智さん、もっと、詳しく……」
それから、私は、クラス中の子から、質問攻めをうける羽目になった。
「家畜」契約するクラスメイトが、増えるかもしれない…と思った。
――体育の授業――
問題が発生した。
ウエストが閉まりすぎてしまったので、
体育で使うショートパンツが、ゆるゆるだ。
これで動くと、絶対に脱げる!?
仕方ないので、先生に、事情を話す。
そしたら、保健室に、
各サイズのものがあるので、今日は、それを借りてきなさいと言われた。
急いで保健室に向かう。ダッシュで向かう。
あれ、体が軽い。
まぁ、実際、体重も、大幅に減ってるんだけど……。
でも、感じてるのは、そういう「重さ」ではなくて、体の動きの「軽さ」だ。
スムーズに動く、息切れしない。
なんか……、無敵になった気分だ。
実際に、体育の授業で、いろいろ体を動かしたけど、
何をやっても、体がスムーズで、いつも出来ないような事が普通に出来た。
走るのも、跳ぶのも、なんでも自由自在だ。
体から出る汗も、全く臭くない。今までの汗は、不純物の塊だったのだろう。
名実共に、気持ちの良い汗をかいた。




