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魔闘士シェラハ  作者: ミーネ
洞窟探索編
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幕間20話

「全くシェラハはしょうがないわね。ここからはどんな危険があるかわからないっていうのに」


フィアナがぼやきながら歩く。

それなら、一緒に部屋でちょっと待ってれば良かったんじゃと思うけど、口には出さない。

それに、出来れば僕より前を歩かないで欲しいけど、それも口には出さない。

まあ、実際の所大丈夫だと思う。五階層までは一応情報があるから。

シェラハもそれを見越しての行動だと思う。そうじゃなくても同じ行動をしそうだけど。


「フィアナ、落ち着けよ。いつもの事だろ?魔術師の癖に前に行くなって」


おお、勇者だ。勇者がいる。


「……そうね、わかったわ」


ちょっとイラッとしてたけど、何も起きず後ろに下がった。良かった良かった。

普段頭が良いシェラハやフィアナが馬鹿な行動する時って、指摘すると八つ当たりが来るんだよね。

その対象殆どユリウスだけど。

まあ、いいや。あんまり緊張感が無いけど、此処は危険な洞窟の中なんだから気を引き締めないと。


第一階層。枝分かれした長い洞窟。

出て来る魔物は、アームドアント。それの働き蟻、兵隊蟻、近衛蟻そして女王蟻らしい。

どの蟻も巨体で、この深淵の洞窟を掘ったのはこいつらじゃ、という話もあるけど、二階層からは出て来ないので、実際の所はわかっていない。


「来るわよ」


フィアナの索敵に反応があったようで、言葉から少しして2m位の高さに、5m位の全長の身体の蟻が視界に入る。茶色の固そうな甲殻を持っていて、あれが働き蟻だろうと思う。


「俺が行く!」


ユリウスが大剣を構え飛び出した。が、それを追い越して、幾つもの雷光が飛んでいく。その内の数本が働き蟻の甲殻を貫き命を刈り取った。


「おい、フィアナ。俺が行くって言ったじゃん!」


「ユリウスの大剣だと切れ過ぎて試せないし、一体しか出て来ない時に私達の攻撃がどこまで効くかを試した方が良いでしょう?」


「ええー、まあ、そうかも知れないけど……」


確かに正論ではある。でも、先に口で言わずにユリウスが向かった後魔術で追い越すとか、八つ当たりの一種じゃないかと思ってしまう。口には出さないけど。


「うん、確かに固いけど、これなら殆ど問題無いわね」


働き蟻の死骸を確認しながらフィアナが言う。雷光の強度を変えて放つ事で、甲殻の固さを測ったようだ。

ある程度確認したら、先に進む。


それから度々出て来る働き蟻をノエルとツカサにも試して貰った後は、ユリウスに全て任せて進んだ。

そうやって、進んだ所で広間に出る。


「緑の甲殻、兵隊蟻ね。五体いるから一人一体倒しましょうか」


フィアナの言葉と共に全員で広間に飛び込む。

兵隊蟻の色の違う甲殻は働き蟻の数倍の硬さを持ち、足が槍みたいに尖っている。防御力も攻撃力も働き蟻とは比べ物にならない。

とはいえ、僕達からすると物足りない。

その硬い甲殻をユリウスは一刀両断し、フィアナは魔法の実験台にする。

ノエルは鎚で叩き潰し、ツカサの矢と小刀で解体される。

僕もそれを横目に見ながら、一度兵隊蟻の足による刺突を防盾で防ぎ、大体の力を測った後攻盾で貫く。

広間に入って数分と掛からず、兵隊蟻は全滅した。


それから、兵隊蟻と働き蟻を瞬殺しながら先に進んで三日。

今迄の数倍の広さの広間に出る。


「あれは、女王蟻と近衛蟻ね、やっと一階層も終わりのようね」


「うわっ、うじゃうじゃ居るな」


そこにはフィアナとユリウスが言う様に、赤い女王蟻、二匹の青い近衛蟻、そして十を超す兵隊蟻が居た。

大きな蟻が十以上居るので、広い広間も殆どが埋まっている。


「なあ、他の勇者達が先に通ったんだろ?何で居んのこいつ等」


「さあ、わからないわ。幾つも群れがあるのか、復活しているのか。確かなのは一階層の終わりに女王は居るって事だけね」


「……まあいっか、わかった所でこいつ等倒さなきゃいけないのは変わんないし」


「そういう事ね。じゃあ行きましょうか。そろそろ蟻を見るのに飽きてきたわ」


フィアナの広範囲の魔法から戦いは始まる。

幾つもの雷が蟻達に降り注ぐ。

それは、これまでであれば兵隊蟻の甲殻を貫いて命を刈り取っていたが、ダメージはあるものの一匹の蟻も殺せずに終わる。

これは、女王蟻の能力。女王は自分自身に戦闘能力は殆ど無いが、他の蟻を強化する事が出来る。

兵隊蟻も近衛蟻もフィアナの魔法が放たれる前に、甲殻が光り輝き始めた。

結果、フィアナの魔法を甲殻を焦がしたり、足を一本無くしたりする程度で凌いでいた。

なので出来れば女王蟻から仕留めたい所だが、それは二体の近衛蟻が確実に防いで来るらしい。

フィアナの魔法からも、自分の身体を盾にして女王を守っていた。


とはいえ僕達は、それを予想していたので驚く事なく攻め入る。

フィアナの広範囲に繰り出す雷を防げても、ユリウスの大剣はそんなの関係無く切り裂き、フィアナも一体一体に集中して魔法を放つ事で蟻を殺していく。

僕とツカサは火力が少し足りなくて、ノエルは火力はあるけどこの状況で前に出ると少し危険なので、二人のフォローに入る。

今迄みたいに瞬殺は出来ないけど、確実に兵隊蟻の数を減らして行く。

そして、兵隊蟻を全て倒して近衛蟻が前に出て来る。


「くっ、硬い!?」


ユリウスの大剣が初めて跳ね返される。甲殻に薄く傷を付けるだけに終わる。


「そういえばシェラハが言ってたわね。ユリウスはあの闘神武具に頼る様になって、技量が衰えたって」

「なっ!?マジか!?」

「さあ?ただ単に女王が強化した近衛達が硬過ぎるだけかも知れないけど」

「……悪いけど、手を出さないでくれ。こいつ等を斬れるまでやってみたい」

「二匹居るわよ?」

「……ローレン、ごめん、お願い」

「うん、いいよ。抑えておくから」

「サンキュー、絶対こいつ等一刀両断してやる!」


一時間経った。

こいつ等は硬く力も強いけど、それ程速くは無い。特殊能力も無いので、抑える事は難しくなかった。

でもユリウスはいまだに一匹目を斬る事が出来ていない。ちょっと、甲殻に入る傷が深くなったかな?と思える程度だ。


二時間。

蟻の方も疲れが見えてきている。僕は守りに徹しているからそれ程でも無いけど、ユリウスの疲れは相当だろう。

ちなみに、三人は優雅にお茶と軽食を取っている。テーブルとイスまで土魔法で作っているのはやり過ぎじゃないかな?偶に兵隊蟻が後ろから来ているようだが、フィアナが近付ける事無く倒しているようだ。


三時間。

僕も結構疲れてきている。ただ、蟻からの攻撃が少なくなっているので、問題は無い。

ユリウスの方はまだ斬れないようだ。無理なんだろうか?

いつの間にか、イスが一つ増えている。シェラハを加えて女子会みたいになっていた。ツカサが違和感無く入っているのが凄いと思う。


四時間。

ユリウスが大剣を振るのもかなり少なくなってきている。

僕の方は戦闘休止中だ。僕は攻撃するつもりが無く、女王を脅かさないと思ったのか、女王の下まで引いていった。疲れただけかも知れない。

そして動き出す、


「ユリウス!見てなさい!」


シェラハが女王蟻に向かって踏み出すと引いていた近衛蟻が立ち塞がる。

そして、振り下ろされる大斧。それは、甲殻の隙間等ではなく、真っ向から甲殻そのものを切り裂き、蟻の身体を両断する。

女王への道が出来てしまったので、ユリウスの相手をしていた近衛蟻がこちらに動こうとする。

そこに振り下ろされる大剣。

シェラハの一撃に何かヒントを得たのか、それとも発奮したのかわからないが、ユリウスの大剣が近衛の甲殻を切り裂いた。

守る者が居なくなった女王蟻を倒し、第一階層を突破した。


けれど、僕と特にユリウスの疲れが酷かったので、暫く休憩のお茶タイムに入る。

近衛蟻の甲殻を切り裂けたのに、ユリウスの愚痴が凄かった。


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