第28話
私達は今、深淵の森の手前の村、リクレール村に来ている。もう此処以降には街も村も無い。
一週間前に他の勇者は此処を出発したらしい。多分もう洞窟に入っているだろう。
「シェラハ、準備出来たわよ」
「そっか、じゃあ出発しようか」
準備も終え、森に向かう。途中作り掛けの砦を通る。
皆必死に作っていて、こういうのを見ると魔族に対して脅威を感じているんだなぁと実感する。
キョウジにアドバイスしたり、シュベルムを見逃したり、出発を遅らせたりした事がちょっと気まずかったりする。まあ、ちょっとだけだけど。
私達が勇者で、これから森に入る事を説明すると、期待の眼差しが凄い。ちょっとが少しに進化する。
ちょっとと少しの差については私の感覚的なものなので、あまり気にしない方向で。そんなには変わらないと思って頂ければ良いかと思う。
まあ、魔王退治なんていう勇者らしい事は『光輝剣』の皆さんに任せたい所だ。シュベルムとは戦う約束してるけど。
森に入って丸一日、それ程危険な魔物とも会わず、勿論魔族とも会わず、順調に進めた。
私達の前には巨大な入り口が拡がっている。
「さーて、ここまでは順調に来れたけど、ここからが本番だね」
更に気を引き締めて中に入る。
そして、中に入って直ぐの事。
「ん?ちょっと待って」
「どうしたのシェラハ?」
「うん、この壁の向こう空間がある。隠し部屋か何かかも、調べてみよう」
それから六人で調べる事数十分、何も見付からなかった。
「あれー?絶対何かあると思うんだけどな」
「何か仕掛けがあるかも知れないわね。只、闇雲に探しても見付からなかったから、今の私達には無理じゃないかしら?」
「いや、こういう時は最終手段だよ、壁壊しちゃおう」
「おい!いいのかよ?」
「え?駄目かな?」
「いや、知らねえけど、出来んの?」
「ユリウスの剣で斬れない?」
「え?俺の闘神武具を壁を壊すのに使うの?」
「うん」
「……はあ」
ユリウスは私の目を暫く見続けた後、溜息を吐いて壁に向かって茜色の大剣を構える。
そして剣を振り下ろすと同時に爆発する壁。
爆発に飛ばされ、逆の壁に叩きつけられるユリウス。
一応準備していた小さな水の盾で、一緒に飛んでくる壁の残骸は防ぐ。
「そういえば、ユリウスの闘神武具って超高熱で切れ味を増している大剣だったよね。壁が水を含んでいたりすると、危ないかもね。水蒸気爆発とか起こすかも」
「絶対こうなるってわかってただろ!先に言えよ!」
「そんなに元気なら大丈夫そうだね。ほら、壁は爆発で崩れたみたいだよ」
内側から爆発した壁には、大きく穴が開き、粉塵が治まった後は中の様子が綺麗に見えた。
中は一つだけ魔具らしき物が置いてあり、床全体に魔法陣が書いてある。
これは、置いてある物が魔具では無く、それも含めた部屋全体が魔具の様だ。
……これは壁を壊したの拙かったかな?
「おい、シェラハ。拙いかもって感じの顔してるぞ?本当に良かったのか、壁壊して?」
「……済んだ事は仕方ないよね」
「開き直った!」
「うるさいなぁ。ごめんごめん、部屋全部が魔具なんて予想してなかったよ。これでいい?」
「軽いな!」
「はいはい、もう済んだ事はいいから。ここ何なのかしら?」
「そうだね、こういうのは初めて見るよ」
全員で部屋を調べる。
調べてみて、空魔石が幾つも付けられている事、転移の魔法陣に色々付け加えられている事、これは直ぐに解った。
そして驚いたのは、空魔石に時間経過と共に魔力が補充されるようになっている事だ。
「これ、どうやってるんだろう?この魔石の特性とこの魔具っぽいのの組み合わせみたいだけど」
「魔族の技術なのかしら?そこまで技術が優れているイメージは無かったのだけど」
「そうだよね、鬼族も獣族も自分の肉体のみって感じだったし。ああ、でもシュベルムとミラさんは能力抑制の魔具付けてたなぁ、あれは中々凄かったよ」
「まあ、いいわ。それで、この部屋が何かはわかった?」
「うん、同じ魔法陣が刻まれた場所同士を転移出来るみたいだね。多分魔族はこれを使って地上に来てたんじゃないかな?」
「じゃあ、これを使えば私達も魔族の下まで行けるって事?ああ、そういえば壁壊しちゃったわね」
「壁は何かで防ぐだけで大丈夫みたいだよ、魔法陣自体は刻まれてないから。ただ、それでも無理みたい。レベル制限っていうか、能力制限が掛かってるみたい。私達のレベルだと使えないね」
「ふーん、強い者は使えない転移装置?何でそんな機能付けたのかしら?」
「うーん、付けざるをえなかったんじゃないかな?フィアナも転移使えるけど、出来るの小さい物だけでしょ?多分転移する物のエネルギーが多い程、転移に必要な魔力が跳ね上がるんじゃないかな?例えば穴みたいな物だとして、エネルギーが大きいものは大きい穴が必要、そして穴の大きさを広げるのに魔力が必要なんじゃないかな?人数制限は無いみたいだから、順番に通れば良いという事かな。多分穴を開けておく時間も制限があるから、無限には無理だろうけど」
「へえ、じゃあ私達には使えないし、他の勇者も多分無理、そして魔族侵攻の立役者と。壊す?」
「ええー、これ凄い技術だよ?特に魔力集める機能」
「でもね、前回のドリサイファスへの侵攻、勇者が偶然居たから良かったけど、今はもう洞窟の中でしょ。多分殆どの勇者が中に入ってるだろうし今度来たら防げないわよ」
「うーん……わかった。空魔石を盗って行こう」
「え?」
「魔石盗っちゃえば装置使えないし、この魔石研究すれば作れる様になるかも知れないし」
「……はあ、まあいいわ、じゃあさっさと盗って先に進みましょう」
「うん、ただその前に……うん、やっぱりだ」
「どうしたの?」
「魔石をこれから外したら魔力補充が止まったみたい。この魔具の部分もやっぱり重要みたいだね。私、これもう少し調べて行くから先に行っといて、直ぐ追い付くから」
「……直ぐ来なさいよ」
「うん、気を付けてね」
「そう思うんだったら、こんな事はしないで欲しいわ」
文句を言いつつも、あっさり部屋を出て先に向かうフィアナ。他の皆も慣れた物でそれに付いていく。
さて、これどうなってるのかな?




