第26話
サクさん達に降ろして貰って皆と別れた後、私は戦場が見渡せる丘の上に来ていた。場所としては魔物達の後方だ。
「あれも魔族なのかな?そういえばキョウジは鬼族って言ってたっけ?じゃあ、あれは獣族かな?」
多種多様の獣顔の魔族達を見てそう思う。狼に犬、虎に猫、狐に鼬、熊にパンダ、色々だ。
パンダの顔に大きな白黒の毛皮を持つ魔族に至っては二度見した。
「うーん、皆強いけど面白そうな奴は居ないなぁ。キョウジ以下のレベルみたいだね。パンダさんと戦ってみようかな……ん?」
獣族達を品定めしていると、後ろで結界に反応があり振り向く。
「おお、間に合ったようだな」
「そうですね、始まってまだ間もないようです」
其処には私と同じように戦場を眺める、男女がいた。
あれは人っぽいけど、大会に出てたローブが取れた人に似てるなぁ。
取り敢えず挨拶してみる。
「こんにちは」
「ん?ああ、こんにちは」
「はい、こんにちは」
ちょっと驚いたように男性の方が返してくる。私が居る事には気付いていたと思うけど、声を掛けられるのが意外だったのかな?
女性の方はそれに続いて穏やかに返してきた。
「私はシェラハって言います。はじめまして」
「俺はシュベルムだ。よろしくな」
「私はミラです。よろしくお願いしますね」
キョウジの時も思ったけど、思ったより礼儀正しいよね。こういう考えはちょっと失礼かな?
「お二人は魔族ですよね?あれに参加しなくて良いんですか?」
「ふむ、そうだが、よくわかったな」
「そうですね。此処に来るまで村等に寄ってみたりしましたけど、普通にバレませんでしたし」
「お二人に似た方を前に見まして、その人の事を魔族だろうと推測していましたので」
「それは多分私の部下ね……後でお仕置きが必要ね」
「ふーん、理由はわかったが、よく気軽に声を掛けれたな。お前等と俺達は戦争中だぞ。子供だからという訳でも無さそうだが」
「いえ、前に鬼族のキョウジとも普通に会話出来たので、今回も出来るかなと」
「キョウジ?」
「鬼族の『三文字』に最近成った者ですね。確か『三文字』以上の中で唯一地上に行けるレベルだった筈です」
「ふーん、あの肉体馬鹿が期待の新人って言ってた奴か?話したのか?」
「ええ、戦うついでにちょっと」
「戦いもしたのか……ん?もしかして、武具に関して何か話したか?」
「武具を持つのを勧めはしましたね。それが何か?」
「……ふははっ!、はははっ!あの肉体馬鹿が考えを変えた理由が!くくっ!敵の子供の助言って!はははっ!」
突然笑い出すシュベルムさん、しかもそれは止まらず笑い転げている。
「……どうしたんですか?」
「気にしないで下さい。偶にこうなるんです」
ミラさんに訊くと、にっこり笑いながらそう返される。
二分程経ち、やっと笑いを収め起き上がるシュベルムさん。
「ふう……それで、何でそんな事を勧めたんだ?」
笑い転げていた事を無かったように話を続けるシュベルムさん。
乗って上げる事にした。
「別に大した理由はありませんよ。ちょっと勿体無いかなと思って」
「勿体無い?」
「ええ、武具を使った方がもっと強く成れそうでしたので」
「くくっ、面白いものが見付かったな。来て良かったぞ」
「そうですね、地上の子供は皆こんな感じなんでしょうか?」
「違うだろう、なあ?」
ミラの疑問にシュベルムは返すと、私に顔を向けて訊いてきた。
「私に訊かれても困りますが、そうですね多分私は少数派だと思います」
「だろうと思った。もしお前みたいに面白いのが沢山居たら、我等は地上の者にあっさり負けそうだな」
「意味が良くわかりませんが、褒められているんでしょうか?」
「そうですね、多分彼にとって最大級の褒め言葉だと思います」
「そうですか、余り嬉しくありませんが」
「ははは、遠慮無く受け取っておけ。それで、キョウジとの戦いはどうであった?」
「一応、私の勝ちでしたよ。これでも勇者ですからね。まあ、その時は違いましたけど」
「ん?勇者とは何だ?」
「魔族に対して攻撃するのに選ばれた者達ですね」
「ほう、そのような者がいるのか」
「多分、あの獣顔の魔族と戦っている人達も勇者だと思いますよ。全員そうかはわかりませんが」
勇者への応援や感謝等の声が彼等に向けてあったので、多分彼等はこの国の勇者だろう。
「ふむ、数に勝る獣族達を上手く抑えている。高い実力を持つ様だな。鬼族の『三文字』と同等の実力の持ち主が、一つの国にあの程度はいるわけか」
まあ、一つの国かどうかはわからないけど、勇者以外にも実力者はいるだろうし、そこまで間違ってはいないだろう。
それから戦場を見物しながら、二人と雑談していた。
魔族の魔法もあまり変わらなかったり、魔族(鬼族、獣族、翼族を含む)の生活は種族毎に全然違っていてその中でも魔族(含まない)の生活は人間と殆ど変わらなかったり、実はシュベルムは魔王だったり、
面白い事を起こす為に地上への侵攻を始めていたり、等がわかった。
シュベルムは私と似たような思考回路をしているなと思った。自分にとって面白そうな事が一番な所とか。その為に危険を厭わない所とか。まあ、私はその為に他人に迷惑を掛けるような事は極力避けるけど。
……仲間は別だよ。
「そうだな、少し戦ってみないか?」
雑談も一通り終わり、獣族と勇者の戦いにそろそろ私も参加した方が良いかな?と思っていた所でシュベルムが戦いに誘ってきた。
「あの戦いに参加してみないかって事ですか?」
「いや、そうじゃなく私とだ」
「でも、その魔具で力を抑えて居るんでしょう?」
首に巻いている魔具が、力を制限している事には気付いていた。どういう魔法陣が組んであるのかちょっと興味がある。
「ほう、気付いていたか。そうだな半分以下の力しか出せないな」
「それを外して戦うんですか?」
「いや、これは帰るまで外せない。嫌か?」
「そうですね。全力でなら喜んでと言いますが、そんな制限の付いた状態では戦いたくありませんね」
「むう、どうしても駄目か?出来ればお前の力を知りたかったのだが」
「……わかりました。お受けします」
「おお!感謝する」
大斧を持ち、シュベルムと向かい合う形で距離を取る。始める前に一応ミラさんにも訊いておく。
「えっと、止めなくて良いんですか?危険ですよ」
「構いません。魔王様が望んだ事ですし。ふふふ」
「よし!では始めよう!」
「はあ、わかりました……でも、そんな状態で私の力を測れると思われるのは心外です」
私は魔闘気で強化はしつつも、本気等出す事なく力任せに大斧を振り下ろす。
シュベルムは剣で防いで来るが、私の力に押されて片膝を着く。
逸らそうとしているようだけどさせず、そのまま押し込んで行く。
そして、大斧の刃が身体に当たる前に私は大斧を引っ込める。
と同時に私達の事に気付いた獣族とローレン達がこの場にやって来る。
「魔王様!何故此処に!?大丈夫ですか!?」
獣族達が声を掛けるとシュベルムは立ち上がり、獣族達を一瞥すると私に向かって声を掛ける。
「これは失礼したな、すまん」
「いえ」
「出来れば全力で相手したいが、地上では出来ないのが残念だ」
「少ししたら私の方からそちらに行きますよ、その時にお相手して下さい」
「そうか、ならばそれを楽しみにしておこう。お前等、引き上げるぞ」
最後は、狼の獣族に言うと、シュベルムはそのまま北の方向に歩き出す。そしてそれに追従するミラさん。
獣族達もそれを追い居なくなった所で、私達も街に向かう。
「あれが、魔族の頂点なの?」
シュベルム達が去った方を見ながらフィアナが訊いてくる。
「そうらしいね」
「随分あっさり勝ってたようだけど」
「何かある程度以上のレベルの者は地上に出る為に制限の掛かる魔具を付けなきゃいけないらしいよ。半分以下の力しか出せないんだってさ」
「それなら、今の内に倒しておけば良かったのに」
「え?そんな事したら面白くないじゃない」
「はあ……まあ、わかってはいたけどね」
ノエル達とも途中合流し、この国の長と交渉した事も聞く。
私はともかく、他の皆は大活躍だったようなので、多分ハイミスリルの事を教えて貰えるだろう。
ちょっと嫌な気分だったけど、それも無くなり、すごく楽しみな気持ちで一杯になった。




