幕間18話
「あの人とかどうかなー?」
ツカサとノエルは街の中に来ていた。そして、目的の指揮しているエルフを見付けた。
シェラハは偉い人に恩を売っておこうとか言っていたけど、もういっそ初めから交渉しといた方が話が早いんじゃないかと思ったのだ。
そのエルフが一通りの指示を終えた所で話し掛ける。
「すみません、ちょっと良いですかー?」
「まだ、こんな所に居たの!?避難所は街の南側よ、急いで避難しなさい」
街の子供と勘違いされたようで、避難を促される二人。兵士の一人を付けようとされた所で、誤解を解く事にする。
「違うんですよ。僕達は東のマライブル王国の勇者なんです」
「は?」
「本当ですよ?これが一応勇者の証です」
国間の通行許可証としても使える、勇者になった時に王から貰った証を見せる。
「え?これ本物?ちょっと待ってね、いや、待って下さい」
「いや、勇者って言っても子供なのも確かですし、別にさっきまでの言葉使いのままでいいですよ」
「えっと、いやそういうわけにも、取り敢えず私は只の一つの隊の隊長でしかありませんから、国長の所に案内させますね」
「宜しくお願いします」
さっき避難の為に付けようとしていた兵士に、長達がいる指揮所に案内するよう命令する隊長。
その兵士に付いて連れて行かれたのは、街の外の戦場も見渡せる程高い塔の最上階だった。
部屋にはドワーフとエルフが一人ずつ席に着いていた。
二人が通されると、エルフの方が話し掛けてくる。
「そなた等がマライブル王国の勇者か?」
「はい」
「証は確かめさせて貰った。マライブル王国の勇者パーティーの一つが十歳前後だという事も聞いておる、その事は信じよう」
「ありがとうございます」
「それで、今この街、いやこの国は危機を迎えておる。その時に何故此処に来たのかね?」
「元々の目的は僕達の強さの向上の為、この国で作られているハイミスリルを目的に来ました。来る途中、此処が襲われていた事に気付きました。それで出来れば僕達もこの国を守る為に力を尽くしますので、終了後我々の目的であるハイミスリルの技術を教えて貰えないかと来ました」
「ふむ、それは助かるが、技術は秘匿なので教えられないと言えば、そなた等は帰るのかね?」
「いえ、もう既に僕達の仲間は戦っていますし、帰りはしません。今話している事も出来れば教えてもらえれば嬉しいというだけで、秘匿技術なのであれば戦いの終了後ハイミスリルの現物だけ買って帰ると思います」
「いいじゃねえか、別に秘匿技術って訳でもねえだろ。勇者様が教えて欲しいって言ってるんだからよ、教えてやれば」
ドワーフの方がそこで割り込んでくる。
「おい、一応この国で生み出されたこの国独自の技術だぞ。軽々しくそういう事を言うな」
「実際俺等の街の戦力だけじゃ、敵いそうになくて、偶然居た連合の勇者達に武具を報酬に戦って貰ってるじゃねえかよ」
「我が国も含む連合の勇者に武具をやるのと、他国の勇者に技術をやるのじゃ全然違うだろうが」
「相変わらず固えな、そんなんだから部下に怖がられるんだよ」
「余計なお世話だ!お前の方こそ緩過ぎて、部下に舐められてるだろうが!」
ツカサとノエルの前で、どんどん激しくなる口喧嘩。それが始めに話していた事とは全く関係無い所まで行った所でエルフの方が呆然と見ている二人に気付く。
「ごほん!……ええと、ハイミスリルの製法はこの馬鹿が言った通り別に秘匿技術という程でもない。だが我が国にとって大事な技術である事も確かだ。なので、この戦いでのそなた等の活躍を見て、教えるかどうかは判断したい。それでどうだろうか?」
「はい、構いません」
「そういえば、もう既に仲間は戦ってるんだったよな?どいつらだ?」
窓から見渡してシェラハ達を探す。
戦場が見渡せるとは言っても、ある程度距離が離れている為、個人の識別は出来ない。
でも、ツカサとノエルの仲間達はとても目立っていた。
「えっと……あの魔物を何匹も相手しながら抑えつつ、魔物の魔法を跳ね返している黒い盾を持っている男の子がローレン、片っ端から一太刀で魔物を斬り殺している茜色の大剣を持つ男の子がユリウス、街壁の上の端で色んな魔法をぶっ放している女の子がフィアナです。もう一人シェラハっていう女の子が居るんですけど彼女は何処に居るかここからだとわかりませんね」
「ふーん……ありゃあ中々凄えじゃねえか。連合の勇者達と遜色無い戦いを見せてるぜ。勇者は伊達じゃねえな」
「確かに。今の時点でも、技術を教えても惜しくない活躍をしているかもしれないな」
連合の勇者は獣族相手をするだけで精一杯で、街の戦力は多過ぎる魔物に押され気味だったのを三人で拮抗するレベルまで戻していた。
「それじゃあ、僕達も参戦してきますね」
「ああ、宜しく頼む」
「頼んだぜ」
二人の国長に礼をして部屋を出る。
戦場に向かうが、二人はシェラハから言われていた。多分二人の実力だと、一人で獣顔の魔族一人と良い勝負だと。複数を相手したら逃げるのも難しいだろうと。魔物の相手だけにしといた方が良いよと。
そして二人はあくまで本分は生産者。その言葉に反発する事も無く、言う通りに後方支援で魔物の相手をする事にした。
フィアナと同じ様に街壁の上から矢を飛ばすツカサと、土で魔物を抑えたり、街壁を補強するノエル。
然程目立たないが二人の活躍も合わさり、魔物を逆に押し返す事が出来るようになった。
それから暫く経ち、街壁も街の兵士もボロボロだけど、魔物を街に侵入させる事なく撃退する事に成功する。
只、それは魔物だけで、獣族と勇者の戦いはまだ続いていた。
最初勇者二十八人、獣族二百人で始まった戦いは、魔物を撃退した時、勇者二十と三人、獣族百四十人程に減っていた。約七倍だった戦力を六倍まで減らした勇者達は確かに優れていた、八人も怪我を負った時に無理せず撤退しただけで回復すれば戻ってくるだろう。だけど、二十人は疲労がかなり溜まっていた。
体力の面では勇者達は誰も獣族に勝てない。それは種族的な圧倒的な差異であった。
怪我等で動きが鈍い獣族は居ても、体力が無くて衰えた者は居なかった。
そんな数も体力も勝る獣族に抗えているのは、魔物の数が減ってから途中参戦した三人、ローレン達の力だった。
ローレンが防ぎ、ユリウスが攻め、フィアナが補助する。その三人に、疲れていても力の限り戦う勇者達が頑張る事で何とか拮抗していた。
只、このままだとどんどん不利になるだろう。街の兵士達もほとんど満身創痍の為、助けにこれない。
その状況に勇者側がどうするか考えていた時に前方、獣族にとっては後方から大きな衝撃がやってくる。
「なんだ!?」「魔王様!」「シェラハ!」
その衝撃の中心では、人間の女の子と魔族の男性が武器を衝突させそれを傍で女性が見ていた。
シェラハと魔王と幹部の女性である。
状況が全くわからない勇者達と、魔王に気付いた獣族達と、シェラハに気付いた三人が声を上げる。
そして、獣族と三人がシェラハ達が居る所に向かう。勇者達はそれにあっけを取られて見送った。疲れていたのもあるだろう。
獣族と三人が着いた時、其処には片膝を着く魔王とそれを見下ろすシェラハ、そしてそれをただ見ている女性が居た。
「魔王様!何故此処に!?大丈夫ですか!?」
獣族達が声を掛けるとあっさり魔王は立ち上がる。ダメージ等は殆ど無いようだ。
魔王は獣族達を一瞥するとシェラハに向かって声を掛ける。
「これは失礼したな、すまん」
「いえ」
「出来れば全力で相手したいが、地上では出来ないのが残念だ」
「少ししたら私の方からそちらに行きますよ、その時にお相手して下さい」
「そうか、ならばそれを楽しみにしておこう。お前等、引き上げるぞ」
最後は、獣族の狼の指揮官に言うと、魔王はそのまま北の方向に歩き出す。そしてそれに追従する女性。
獣族達は数秒立ち止まり現状の把握に努めるが、把握等出来ず魔王の言葉に従って北に向かった。
そして、ドリサイファスを襲った獣族の侵攻は街への侵入を許さず、防衛側の勝利に終わった。




