第25話
今は洞窟から帰って次の日、工房に来ている。
洞窟での戦いは満身創痍のユリウスと足を怪我したツカサ以外は問題無く終わった。ツカサは癒魔法で直ぐに回復したし、ユリウスは全快とは行かずとも普通に動けるレベルまで治せた。
赤竜達の素材を剥ぎ取り、取り敢えず今回はここまでとして引き上げてきた。
その日は長宅で休ませてもらい、今日は再び別行動をしている。
ユリウスはまだ身体が痛むだろうに、闘神武具を見せびらかしにローレンを伴っていき、フィアナはまたお婆ちゃんと話をしに行った。
そして私達三人にとってはこれからが本番である。
先ずは私が見定める鉄鉱石と似ていながら違う二種類の鉱石をドグさんに見せてみる。
「ああ、緋鉄鉱石と白鉄鉱石だな。よく見分けがついたな」
「ドグさんはどうやって見分けを付けてるんですか?」
「光を当てた時の光具合と、手に持った時の質感だな。ほんの少し違うんだ。落ち着いて集中しないと無理だから洞窟内で見分けるのは無理だけどな。お前等はどうやって見分けたんだ?」
「魔力と闘気を流した時の反応ですね」
「ん?……違うといえば違うが、そんなの同じ鉄鉱石でも中の成分が違えば違うだろ。どうやって見分けるんだ?」
「そうなんですけど、大体の規則性があってそれが少し違うって感じですかね。ちょっと言葉では説明し難いですけど」
「そうか……それなら、精製も出来るかも知れないな。あれも言葉で説明し難いからあんな風になったんだろうし」
「だといいですけどね」
取り敢えず、緋鉄鉱石を炉に入れる。温度は緋鉄鉱石が溶ける最低温度で先ずは試してみる。
十分程で緋色に光り始める。そこから明度、彩度を変えながら十分程光り、消えていく。消えた後、その溶けた緋鉄を取り出し型に嵌めインゴットにする。
そこからは試行錯誤だ。同じやり方で温度を百度単位で変えていき炉の限界まで試す。
次は光っている途中に取り出す。出来れば全ての温度で試したいけど、そんなに鉱石がある訳ではないので、試した中で一番光り方が良かった温度で試す。この良い悪いは私の主観で適当だ。
この温度の時だけど、そんなに大きく変わる訳ではないが三つの変換点がある。
先ず光り始めそれを基準とすると、一回目が鮮やかな緋色になる、そして二回目が光りが強くなる、そして三回目に暗い緋色が混ざる、そして消える。
その全部の状態の最初と最後で取り出す。
そして最後に魔力、闘気、魔闘気を熱す時に込める。これを試すのは二回目の光りが強くなる時の最後で取り出すバージョンだ。写本の内容をそのように解釈してみた。というかそうとしか解釈出来なかった。
簡単じゃんとか思うかもしれないが、三回目の暗い緋色が混ざるのに一回で気付いたのは私だけだった。
時間が短く直ぐ消えるし、元々緋色に光るのもそんなに平坦じゃないというか、蛍光灯の光りじゃなく蝋燭の火の光りみたいな感じなのだ。そこに少し暗い色が混ざっても解り辛いのはしょうがない。
そうなるまでに掛かる時間が鉱石毎に変わるのもあって、そこでいくつもの失敗作、だと思われる物が出来た。特に魔力と闘気は属性毎、私とノエルとツカサのそれぞれがやったのだが、ノエルとツカサが感覚を掴むのに多少の数が要った。
結果、この試行錯誤で採って来た鉱石の九割を消費するという事に。これで温度の段階で間違っていたりしたら、もう一度採掘に行かなきゃいけないだろう。
では、次の工程に入る。インゴット化した緋鉄を再度溶かし、そこに白鉄鉱石を加える。
取り敢えず同じ位の量で試してみる事にする。いくつも出来た失敗作と思われる物を使う。
直ぐに失敗だと判った。白い光りが強過ぎる。
緋色の光りが見えなくなるほど白い光りが眩しく光っている。
一応出来たものを取って置くけど、光量を合わせるように配合していく。
大体3:1位の量で合う事がわかる。
そこで、最後の工程に入る。今迄の試しでは白鉄鉱石も三回の変換点がある。内容も殆ど同じだ。
一回目でそれがわかったのは良かったんだけど、ここで問題なのが前の温度で溶かすと『苦しむ』時間が白鉄鉱石の方が後なのだ。
写本を読んでて少し疑問だったんだけど、『喜ぶ』温度と『心地良い』温度は違うらしい。
多分光りが強くなるのが『喜ぶ』だと思うので、『心地良い』は光りは強くないけど鮮やかなままと考えよう。
で、最初に試した中で、それに当て嵌りそうなやつを試していく。
そうして幾つか試した所で、やっと『白が苦しむ』時まで『緋が心地良い』温度を見つけた。
……出来た!
「ドグさん!これ、出来てますか?」
「……おう、ヒヒイロカネに間違いない」
「やった!」
ノエルとツカサ、それからドグさんと一緒に喜び、そして全ての物を合わせインゴット化していく。
だけど、この過程でも幾つもの失敗作が出来る。魔力や闘気等を込めた物では温度や時間、配合率が変わってくるのだ。
結果、成功作と言える物は、普通の物、私の魔力を込めた物、魔闘気を込めた物、ノエルの闘気を込めた物、ツカサの闘気を込めた物の五つだけだった。
それも、試行錯誤の為にそんなに多くは使えなかったので、インゴット一つで短剣一本位しか作れる量はない。
まあ、今回の分だけで成功作が出来ただけでも喜ぶべきかも知れないけど。
「じゃあ、加工の仕方教えて下さい!」
「おう!ヒヒイロカネの加工はな、精製では光り方を見て判断していったが、それとは逆で光らせないようにしないといけない。光る寸前で取り出して叩いて行くんだ。なるべく光る手前まで熱さないといけないが、絶対に光らせちゃいけない。そこを見極め加工していく……こんな感じだな」
ドグさんが何度か鎚で叩いた後、ドグさんの手には見た目鉄の、でも決して鉄で出来ているとは思えない短剣があった。
「凄いですね」
「よし、じゃあやってみろ」
私は魔力を込めた物を、ノエルもツカサもそれぞれ自分で作った物を加工する。
そして三人共加工を習得する。ちょっと取り出すのが手前過ぎたかもしれないが、後は経験だろう。
「ドグさん「「ありがとうございました」」」
「おう、俺も精製が出来たからな、助かったぜ」
もっと色々試したかったけど、もう外は夜中になっていたので休む事にする。
ドグさんにお礼を言って長宅に帰る。
「ヒヒイロカネ出来たよー!」
「本当?凄いわね」
「うん、それでもっと鉱石欲しいからまた洞窟に潜りたいんだけど、明日大丈夫?」
「いいわよ、話も一段落したから」
「俺もいいぞ!俺の闘神武具の強さを見せてやるぜ!」
「僕もいいよ」
「じゃあ、よろしくね」
再び鉱石を集め、そろそろ帰る事にした。
最後にドグさんには鉱石、長には私が『闘神の指輪』を参考にして作った腕輪(効果は半分位)、お婆ちゃんにノエルが作ったヒヒイロカネのイヤリング、サクさんにツカサが作ったヒヒイロカネの短刀をプレゼントした。
それで、帰る事にしたんだけど……
「どうして、私達国境を越えているのかしら?」
「大丈夫だよ、勇者になった時に国間の通行許可貰ってるから」
「そういうことじゃなくてね」
「だって、ヒヒイロカネが出来たんだから、ハイミスリルも欲しいじゃない」
「……はあ」
私達は帰る前に、ハイミスリルの精製を編み出した、ドワーフとエルフが一緒に住む国ドリサイファス国に寄り道する事にした。




