幕間14話
一つのテーブルと五つの椅子のみの部屋に、一人の男が入ってくる。そして、椅子の一つに座る。
他の椅子は既に埋まっていて、男が座ると同時にこの中で唯一女と思われる者が発言する。
「では、揃いましたので会議を始めたいと思います。先ずは状況確認からですね。現在地上の街の内五十を侵攻し、結果成功したのが八、ふふふ、そして今の時点で保持出来ているのが三になります」
「ちっ」
「ふん」
丁寧な言葉ではあるが、面白そうに、あるいは馬鹿にした様に話す女に対して、獅子の顔をした男が舌打ちし、角を頭から生やした男が鼻を鳴らす。そして、背に翼を持つ男が反論する。
「仕方ねえじゃんさー、地上と此処とを行き来出来る転移装置は俺等レベルの奴は使えねえし、そんなに沢山は送れねえ、更に一度送ったら暫く使えねえし、地上の魔物を操れる『操魔の笛』は役に立ってるけど、大した指示は出来ねえみたいだしさー」
「そうですね。今回の会議はその転移装置に関してです。転移装置の改良が出来、一度に送れる数に上限が無くなりました。まだ、レベルの上限と使用後の冷却期間に関してはそのままですが、これで地上の魔物を使わなくても我等の兵士をまとめて地上に送る事が出来ますよ。とはいえ、部屋に一度に入れる人数に上限がありますから、平均的な人型で一度に五十人位ですね」
「へー、それは凄いけど、まだレベル上限解除されねえのー?それじゃあ俺が地上に遊びに行けねえじゃーん」
「そう言われましても、あれは古代の技術が使われたオーパーツですからね。今回の改良が出来ただけでも奇跡的ですよ。なんなら、転移を使わずその身で地上まで行ったらどうですか?ふふふ」
「そんなの何ヶ月掛かるかわかんないじゃんよー」
「おい!話を戻せ」
翼の男と女の掛け合いに苛立った獅子の男が声を上げる。
「これはすみません。一度に五十人として、冷却期間から考えて、三、四百人位での部隊が適当ですかね。その人数での侵攻が可能になりました。地上の魔物を使うかは任せますが、これで侵攻が進展すると思いますよ」
「じゃあ、俺等から行って良いよねー?俺等翼族が先ずは行って一国位攻め落としてくるからさー」
「いや、獣族が行こう」
「ええー、獣のおっさんは後でいいじゃんー?」
「誰がおっさんだ!お前等に任せる事は出来ん」
そして、獅子の男と翼の男の口論が始まる。が、それを放置して会議は進む。
「我等が頼んだ武具はどうなった?」
「只今、製作中です。もう少ししたら幾つかの試作品が出来ると思いますよ。でも、肉体に誇りを持つとかで、そういった物を全く装備しようとしなかったのに、どういう心変わりですか?ふふふ」
「地上に行った鬼族期待の若者からの進言だ。それに、我等が肉体に誇りを持つ事はこれからも変わりはない」
「ふふふ、そうですか。獣族と翼族の皆さんもどうですか?我々は喜んで開発しますよ?」
「あ?俺達にはそんな武具等に頼らずとも、それ以上に優れた爪や牙や毛皮がある。必要ねえよ」
「俺達は物持つと飛び辛いしなー、上空からの魔法だけで充分だろー」
「そうですか?まあ、いいですけど。それと、どちらが先に行くか決まらないようなので、二百人ずつ位で別々の国を同時に攻めたらどうですか?」
「ああ、それでいいぞ」
「俺等もいいぞー」
「じゃあ、そういう事で選抜しといて下さいね。題材はこんな所ですかね?他に何かあります?」
「ないな」
「それじゃあ解散しましょう。次はその侵攻での結果が出た後ということで」
獅子の男と翼の男と角の男が席を立ち、部屋を出て行く。そして、最後に部屋に入ってきた男と女だけになる。
「魔王様、寝てらっしゃいました?」
「…!?いや?寝てねえよ?」
「別に誤魔化そうとしなくて良いですよ?ばればれでしたから、ふふふ」
「…ははは、いや転移装置が発見されて動き出した時は面白かったんだがな、俺が行けないで報告を聞くだけだとな」
「つまらないと。一応魔王様の命令でこの度の地上侵攻は行っているんですけど」
「それもなぁ、侵攻が上手く行ってないと言っても、俺等の中級レベルに地上の奴等苦戦してるんだろ?今度のやつであっさり終わったりしねえよな?」
「さあ?私も地上に行った事はありませんし。ただ、鬼族が武具の開発を頼んできたりしていますし、そこまで弱くもないのではありませんか?」
「ああ、それは少し驚いたな。俺に負けた時も肉体を更に鍛えると言うだけで、武具を持とうなんて考えてもいなかったしな」
「地上の者の影響でしょうね。今回は私の部下も彼等鬼族に付けて地上に行かせてますし、帰って来たら報告させますよ」
「ああ、頼む。それと、やっぱり俺が転移装置を使うのは無理か?」
「はい無理です。と言いたい所ですけど、一つ方法を見つけましたよ」
「何!どんな方法だ?」
「レベルを制限する魔具を作れたんですよ。ただですね、これ一度付けると外すのが手間でして、簡単に言えば地上では外す事が出来ず弱い状態でしか行動出来ません」
「別に俺はそれでも良いぞ」
「でも、闘気や魔力量は三割程度まで減りますし、肉体も衰えます。かなり危険ですよ?」
「構わん」
「それならやってみましょう。私も地上には興味がありますからね」
「お前も行くのか?」
「当然です。お目付け役が必要でしょう?」




