第22話
先程まで戦っていた相手が道を塞ぐ様に立っている事で、少し私達に緊張が走るが、彼等に敵意は無いようだ。
「すまない、ちょっと話したいのだが良いだろうか?」
「?ええ、いいですよ。もう直ぐ私達が泊まっている宿ですし、そこで話しましょうか?」
宿の部屋に着くと、話を促す。
「先ず名を名乗ろう、私はサク、この国の南端近くの山にある竜の里に住む竜だ。この二人はその麓の街に住む竜達でこの大きい方がドグ、そしてこっちがヒミだ」
「シェラハです。こっちからフィアナ、ローレン、ユリウス、ノエル、ツカサです」
「それで、頼みがあるのだが、大会の賞品で『闘神の指輪』を貰ったと思う、それを譲って頂けないだろうか?」
「何故です?」
「そうだな、きちんと説明しよう。先ず『闘神の指輪』は三百年程前まで我が竜の里にあり、里の宝であった。その数百年前にその時一番の竜の鍛冶師が作り上げた物らしい。
それで、三百年程前に里の宝であった『闘神の指輪』は紛失してしまった。おそらく盗まれたものと思われる。我等は探したが見付からず、それから二百年後位にこの国の王城の宝物庫に納められている事がわかった。どういう経緯でそうなったかはわからないがな。
とはいえ、別にこの国の王の命令で我等から盗んだ等と言う事は無いだろうし、我々はこの国と敵対してまで『闘神の指輪』を返して貰おうとも思わなかったので、殆ど諦めていたのだ。
そこに、この大会とその賞品の事が後ろの二人より里に情報が来て、我々三名が『闘神の指輪』を穏便に返して貰う為にこの大会に参加する事になった。
だが、我々はそなた等に負けてしまったので、出来れば『闘神の指輪』を譲って貰えないか交渉に来たのだ。四位で貰った賞金を全て渡すので、譲って貰えないだろうか?」
取り敢えずサクさん達には少し待って貰って、話し合いをする。
「うーん、どうする?」
「シェラハが決めていいわよ」
「え?でも私は『星屑のペンダント』貰う積もりだし、『闘神の指輪』だったらローレンかユリウスじゃない?」
「いや、いいぞ。シェラハが決めて」
「うん、僕もそれで良いと思う」
「どうして?」
「そういうの考えんの面倒臭いしな、シェラハに任せるわ」
「武具とかはシェラハが作ってくれてるしね、好きに決めちゃって良いよ」
「はあ、わかった」
サクさん達に向き直る。
「わかりました『闘神の指輪』はお譲りします。ただ、私達はお金には困っていませんので賞金は要りません。出来れば他の対価にして欲しいのですが」
「他の対価?例えばどんな物だ?」
「そうですね、我々人間が手に入れにくい物や竜独自の情報等が良いですね。そう言えばさっき『闘神の指輪』を作ったのは竜の鍛冶師って言ってましたよね?竜独自の鍛冶技術とか教えて貰えませんか?」
「そうか、だが私自身は鍛冶技術等知らないのだ。そこでそなた等を我が竜の里に招待しよう。そして、技術や情報を貰えるよう便宜を図る事を約束しよう。それでどうだろうか?」
「はい、いいですよ。その条件で『闘神の指輪』をお譲りしますね」
「そうか、よかった。これで任務が果たせる。では、我々が帰る時に一緒に連れて行こうと思うが、いつが良い?」
再び話し合いに入る。
「という事に決まったけど、皆はどうする?」
「また面白い条件を引き出したわね。竜の里に招待された人間なんて多分殆ど居ないわよ?竜の里がある事すら知らなかったしね」
「全員連れてって貰うでいいんじゃないか?もう直ぐ長期連休だし、皆興味あるだろ?」
そのユリウスの言葉に全員頷くのを見て、サクさんに答えを返す。
「それでは、十日後にお願いします。私達六人全員お願いしたいのですが、いいですか?」
「ああ、いいぞ。じゃあ十日後に此処ででいいか?」
「はい」
「わかった。それでは失礼する」
竜達が部屋を出て行く。
「じゃあ、十日後までに『闘神の指輪』の解析しないとね」
「…壊さないようにね」
それから、私は学園と往復する時間が勿体無いので、王都にそのまま滞在する事にした。ちなみにフィアナも一緒にで、フィアナの家にお世話になっている。
他の皆は学園に一旦帰って今回の事を話して貰っている。
あまり家に帰っていないので、弟に忘れられていないかが少し心配だけど、手紙で勘弁して貰おう。
『闘神の指輪』を解析してみて、凄い事がわかった。
この指輪はヒヒイロカネで出来ている。と言う事はその竜の鍛冶師はおそらくヒヒイロカネを精製出来たという事で、もし精製された物を使っただけだとしても加工技術は持っている事になる。竜の里に行くのが凄く楽しみになった。
十日が経ちその間にローレン達も戻ってきて、私達が宿で待っているとサクさん達がやってきた。
「それじゃあ、出発しよう。準備は良いか?」
「はい、お願いします」
竜の姿に戻った彼等に乗せて貰って、私達は南に向け空を飛んだ。




