幕間12話
一回戦が終わってもう直ぐ二回戦という所で、母が控え室にやってきた。
「フィアナ、ちょっと来て」
「どうしたの?」
魔族が魔物を引き連れて来ているらしい。母と一緒に学園長の下に向かい、対策を検討する。取り敢えず大体の方向性が決まった所で鳴り響く鐘。私はシェラハの下に向かう。母も挨拶に行くようだ。
「シェラハ、魔族が来ているようよ」
「シェラハちゃん、フィアナを頼むわねー」
母は少し話すと、会場を出て行く。
「魔族って王都に来た奴?」
「そのようね、この辺りの魔物の群れを率いているようよ」
「ふーん…この辺りってそれ程強い魔物居ないよね?」
「そうねハイゴーレム位かしら」
「数はどれ位?」
「千を少し超える位らしいわ」
「…その情報って学園にも伝わってるの?」
「学園長には伝わってるわよ、少し話したけど生徒は後方支援に回ってもらうみたいよ」
「行動早いね、先に情報あった?」
「鐘の少し前に、母の元に連絡があったようよ、シェラハが作った魔具のおかげね」
「そっか…」
「シェラハ!」
考えているシェラハを見ながら多分前線まで行くことになりそうだなと思っていると、ローレンがやってきたので同じ内容を話す。
「どうするの?」
「うん、魔族見てみたいよね」
「…言うと思った」
「何で皆呆れた顔してるかな?興味無いなら私一人で行って来るけど」
「ううん、僕も行くよ」
「私も行くわよ」
「僕もー」
「私も」
「じゃあ皆で行こうか。…あれっ?そういえばユリウスは?」
「…あそこ」
ノエルの指差す方向を見ると、ユリウスが途方に暮れている。何やってんだか。
ユリウスにも声を掛けて、魔族の下を目指す。取り敢えず西の街壁の上から状況を確認してみる事になった。
「来たね…やっぱりそれ程強い魔物は居ないみたい。さて魔族はどこかな?」
見る限り防衛の方の人手も足りているようだ。この街の騎士と冒険者は周りの魔物が弱い為練度が低いが、闘技会の関係で防備が厚いのであの程度の魔物達であれば問題無いだろう。
ちょこちょこ手を出しながらそのまま戦いを眺める。予想通り街の騎士達優位に戦いが推移しているのを眺めていたその時に、多くの悲鳴と地面が破裂するような大きな音が聞こえる。
「魔族が前に出て来たみたいね。戦鬼のラゴウ、聞いた特徴通りね」
見ると大きな角を生やした鬼が大暴れをしている。
「…んー?微妙だなぁ。…ん?」
それを見たシェラハは少しがっかりした後、別の方向を見ていつもの好奇心を疼かせた顔を見せる。
「どうしたの?」
「うん、ちょっと気になるのが…それじゃあ魔族と戦って見ようか、ノエルとツカサはここから魔法で補助と魔物相手にしててね、二人だとちょっと危ないや。ローレンとユリウスとフィアナなら大丈夫だと思う。見た感じローレンよりちょっと強い位だと思う…よっぽど実力を隠すのが上手くなければ、その時は全力で逃げてね」
「いいけど、シェラハはどうするのかしら?」
「気になる奴の所に行って来る。大丈夫だよ危ない事はしないから」
「はあ、シェラハにとっての危ない事がどの程度なのかが気になるけど、まあいいわ、じゃあ私達三人であいつの相手しておくわね」
「うん、多分大丈夫だと思うけど油断しないようにね。初め一対一で戦ったりすると面白いかも」
「それは油断とは違うのかしら?」
「まあ、任せるよ。じゃあ行って来るね」
そう言うと、シェラハはラゴウが居る場所とは殆ど反対の方向に飛び出して行く。
全く、何を見つけたのかしら?
「それじゃあ私達も行きましょうか」
「おう」「うん」
騎士達を蹴散らしながら門の方に向かってくるラゴウの前に立ち塞がる。
「また小さいのが来たな、俺は戦鬼のラゴウ、前に立つなら容赦はしないぞ」
「俺はユリウス、相手になってやる」
「む?一人でか?お前等は?」
「僕はローレン、ユリウスの後で相手してあげるよ」
「私はフィアナ=カトラル、見学希望よ。二人共負けちゃったら私も参加して三人で相手するわ」
「ほう、面白い。いいだろう、相手してもらおうか」
「行くぜ!」
ユリウスが斬りかかる、それを腕で受け止め平気そうなラゴウ、いや、少し血が出ている、かすり傷だけど。
「ほう、俺の肉体に傷を付けれるとはな。よし、本気でやってやる」
闘気の密度を上げるラゴウ。それと共にこちらへの威圧感が増す。ユリウスは見学している私やローレンより大きな威圧感を受けているだろう。
だけど、ユリウスは怯む事無く、再度斬りかかる。ユリウスも剣に込める闘気を増して。
そして同じ結果が起こる。かすり傷を付けて再度対峙する。
ラゴウはその傷を見て笑うと、今度はラゴウの方から殴りかかって来る。
ユリウスはそれを大剣で受け止めるが受け止めきれず弾き飛ばされる。力を逃がす事は出来たようで殆どダメージも無く、直ぐに戻ってくる。
そこからは、消耗戦に入る。ラゴウはユリウスの攻撃の殆どを身体で受け止めほんの少しの傷で済ます。ユリウスはラゴウの攻撃を避けるか受け流すかで対処する。
周りの騎士達は魔物退治に回ってくれた。私達はこの街だとそこそこ有名なので、任せてくれたようだ。
ユリウスが防御に失敗でもしない限り体力が無くなるまで続きそうな戦いは、ラゴウが戦い方を変える事で決着した。
ラゴウは拳を地面に振り下ろし石礫を繰り出す。その面の攻撃をユリウスは大半を大剣で打ち払うが、幾つかを身体に受けてしまう。そこに殴りかかるラゴウ、ユリウスは大剣で直撃は防ぐが力を逃がせず、最初とは比べ物にならない速度で飛ばされる。そして木にぶつかって止まったユリウスは続けられる身体じゃなかった。
「じゃあ、次は僕ね」
ローレンが盾を構えてラゴウの前に立つ。私はそれを続けて見学する。ユリウスは大丈夫だろう、意識はあるようだしポーションも持ってたと思うし。
ラゴウは今度は初めから本気でローレンに殴りかかる。ローレンはそれを正面から防ぐ。
ラゴウは少し驚いたようだが、そのまま何度も殴りかかる。それをローレンは受け止めつつ反撃をたまに繰り出す。ローレンの攻撃だとラゴウに傷を付けられないようだけど、ユリウスが付けた傷の上からだとダメージを与えられるようだ。
ラゴウの事は大体わかった。強靭な肉体と強力な力、それは聞いていた話の通りだけど、全てがその身体と闘気頼りで技術はほとんど無い。これで拳術でも使えればかなりの強さだろうけど…その辺かな、シェラハがラゴウに対して興味を失ったのは。
この程度であれば父達が倒せないとも思えないんだけど、何故かしらね?
そんな事を考えている間にも戦いは続いている。どちらも決定打が繰り出せず再び消耗戦になっているが。
ユリウスも回復してきたようだし、三人で相手するべきかなと思っていたその時、突如新しい鬼が出現する。
青い角を三本生やしていて、ラゴウより少し小さな身体なのにラゴウよりも大きな威圧感。戦闘体勢に入っていないのに居るだけで圧倒されるその威圧感で、ラゴウよりも数段上の実力者だとわかる。
ただ、その身体はボロボロだった。片腕が無く、角も一本折れていて、満身創痍に見える。
「ラゴウ、引きますよ」
ラゴウは私達よりもその鬼の状態に驚いていて、その驚いた状態のままその鬼に連れられ森の中に引いていく。
私達は追う事も出来ず見逃した。そしてふと我に返って思う。
シェラハが原因っぽいわね。




