第09話
闘技会三日目、パーティー戦。
昨日はフィアナが魔術師部門優勝、ローレンが戦士部門準優勝、ユリウスがベスト8と多分凄い結果だった。
戦士部門の方は見てないけど、あの二人が勝てないのなら面白そうだ。
パーティー戦は十六パーティーによるトーナメント戦、三年七組、二年六組、一年三組で行う。
三年と二年は授業の時に篩いにかけられ選ばれるそうだ、一年は元々パーティーでの授業自体がまだ無いので、フィアナみたいに意欲と実力が無いと出ようとは思わない。今回の三組は多い方らしい。年によっては一組も居なくて、個人戦に出た者を集めて一組だけ作ったりする事もあるとか。
今回の一年は私達とキャロル率いるパーティー、それと魔術部の人がリーダーのパーティーらしい。詳しくは知らない。
組み合わせが決まった。私達の相手はコジロウ先輩率いるパーティー。
「リーダーのコジロウ先輩にユリウス負けたんだっけ?」
「ああ、動きが凄い速いんだよな。あとローレンに負けたけどカグヤ先輩も強いぞ、弓は速くて正確だし接近戦でも薙刀の実力高いし。他の二人は知らない」
「ああ、そういえばカグヤ先輩が私達のパーティーは攻撃ばっかりって言ってたよ」
「ふーん、どう戦おうか?一度やってみたいのが開始同時のブリザードだけど、舞台全体に使ったら実際どうやって防ぐんだろうね、魔術は使えないしローレンみたいに防御も多分出来ないでしょ」
「あー、何か卑怯じゃねえか?」
「いや別に卑怯じゃないと思うけど、面白くは無いかもね。じゃあどうする?」
「真っ向勝負でいいんじゃねえか?」
「向こうは弓使いがいるにしても全員戦士なのに、真っ向勝負は無理があると思うけど、じゃあ戦術とか無しで適当にやる?フィアナはそれでいい?」
「まあいいんじゃないかしら、適当っていうとあれだけど、相手に合わせる感じで」
試合が始まる。
相手のパーティーは刀のコジロウ先輩、弓を持ち薙刀を背負うカグヤ先輩、あと二人は大剣と双剣を持っている。攻撃特化っぽいパーティーだ。
開始と同時に三人が突っ込んできて、カグヤ先輩が矢を放ってくる。矢はフィアナを狙っている、魔術の妨害かな?
なら私は前に出よう、フィアナは雷撃で矢を打ち落としているし、これはパーティー戦なのに一対一を四組にするのが真っ向勝負なんだろう。
ユリウスはコジロウ先輩にリベンジしてもらうとして、場所的に私の相手は大剣さんかな。
ユリウス対コジロウ先輩、ローレン対双剣さんを横目にして大剣さんと相対する。
大剣さんが斬りかかってくる。それを避けたり、受け流したりして実力を測る。
うーん、休み前のユリウスと同じ位かな、技も持って無さそうだし…はい、終わり。
受け流して体勢を崩した所で、攻撃する。急所に当たった攻撃は結界を打ち砕く。
この結界凄いよね、急所やかすった攻撃とかのダメージをきちんと判別するし、武具で防げば影響を受けないとか、どういう術なんだろう?攻撃を防ぐんじゃなくて、ダメージを肩代わりするって感じだね。
後で研究しようと思いつつ周りを確認する。他の三組はまだ戦っていた。フィアナは優勢、ローレンも優勢、ユリウスは劣勢だ。
さて、ユリウスに加勢するのがいいんだろうけど、真っ向勝負がしたいそうだし…見学するかな。
ふーん、確かに速いね。ユリウスは技を使う事でしか付いていけてないし、あれたまに見失ってない?
技での攻撃も、コジロウ先輩かなり注意しているようで、防御されるか避けられてる。多分一回目の戦いで見破られてんだろうな。
コジロウ先輩は多分高速の接近からの攻撃が得意なんだろうけど、その接近をフェイントに使ったりしてそこから一度後退したり横や後ろに回ったりと、きっちり対策されてる。
勝った方にきっちり対策されるとか、負けたユリウスは何やってんだか。
コジロウ先輩の警戒もあって、ユリウスの結界はもっているけど、あのままだと攻撃を当てるのは難しいね。
ユリウスの攻撃が何度も空振っている間にローレンとフィアナがカグヤ先輩と双剣さんを仕留める。
ローレンは双剣さんの攻撃を完封し、カウンターをちょこちょこ当ててた。
フィアナはカグヤ先輩の矢が無くなって薙刀に持ち替えて前に出て来た所を、多数の雷撃で攻撃してた。
私が見学していたからか、ローレンとフィアナも勝負が終わった所で見学している。
そろそろ終わりそうだなあ、ユリウスは後で説教するとして、準備しますか。
少しして、ユリウスの結界が壊れる。と同時にコジロウ先輩を包む氷の矢。
逃げ場無く発生した矢は一斉にコジロウ先輩に向かって発射され、コジロウ先輩の結界を壊した。
「ユリウスだけだね、負けたの」
「いや昨日より速くてだな、全然当たらねーんだもん」
「確かに速かったけど、ユリウス反応悪すぎだし」「うぐっ」
「力は上の癖に上手く活用出来てないし」「ぐっ」
「技の使い方も馬鹿の一つ覚えっていうか」「…」
「もうちょっと考えて戦って欲しいよね」「…すみませんでした」
「まあまあ、ユリウスも耐えて僕達三人が勝つまで結界を壊させなかったし、頑張ってたと思うよ」
「ローレン何気に上から目線だよね」
「えっ、そうかな、ごめんね」
「…もういいよ、次の試合で挽回してやる!」
次の相手はリア先輩率いるパーティー。一回戦を見てたけど、水魔術のリア先輩と風魔術の人の強力な魔術と、それを守る二人の剣と盾の人のパーティーだった。
ユリウス以外は私達と似てるので、ここは魔術戦でもしてみたい所だ。
「ユリウスは自由に動いて、ローレンは私とフィアナを守って、私とフィアナで魔法撃とうか」
「わかった」「うん」「いいわよ」
一直線に走り出すユリウスと私達の前に陣取るローレン、相手は魔術師の二人が詠唱を始めその周りを戦士二人が固める。
ユリウスと戦士の片方の所に着く位に発動する魔術、一つは私達に一つはユリウスに。
私達に向けられたのは大津波だった。フィアナは飛び上がって避けて、私は動かない。ローレンが守れるか興味があったのだ。
ローレンは私の前で盾を前に構え、闘気を展開する。津波はローレンの所から割れ、私の所には全く津波がこなかった。
おー、凄い。盾に当たった部分だけじゃなく、魔術そのものに影響を与えてる。水の流れを変えるんじゃなくて、魔術の流れを変えてる。
信じてはいたけど、これ程とはね。じゃあ私も行こうかな。
「フィアナ!やっちゃって」
フィアナに呼びかけつつ、地面を凍らせる。地面を氷で覆い、相手を捕まえた所で落とされる雷。それは氷を伝い四人+一人を攻撃する。
雷が収まった時には相手全員の結界が壊れていた。
「ユリウス、挽回出来た?」
「なあ、シェラハなら俺だけ範囲から外せたんじゃないかな?」
「まあ、出来なくもないけど」
「…何でやらなかったんだ?」
「面倒だった」
「…次こそはっ」
準決勝、相手は三年、ただフィアナが挙げた優勝候補の中には居なかった、剣と盾2、斧1、魔術1のメンバーだ。もう片方の準決勝がビードル先輩のパーティーとノーディア先輩のパーティーが戦うようだ。
一回戦と同じ配置で、私は斧さんと同じ武器勝負をすることにした。
ただ然程強くなかったのであっさり勝って、他の三人も全員一対一で勝った。
「やっと挽回出来たね」
「まーな!」
「まあユリウス以外も普通に勝ってたし、挽回って言えるか微妙だけど」
「…決勝戦は見てろよ!」
もう一方はビードル先輩達が勝ち残り決勝、の前に中等部の試合が始まる。
「うーん、昨日も思ったんだけどさ、こんなもの?って感じなんだよね」
「シェラハ、一応言っておくけど、ブラックウルフリーダー一体だけでも四人パーティーで倒せるのが高等部に一握りって所だろうし、ハイゴーレムとか倒せるの高等部でも多分居ないからね」
「そっか、そうだね」
「多分貴方に勝てる人、学園にいないわよ。教師にも貴方なら勝てるんじゃない?」
「うーん、それはわかんないけど」
「まあ、自覚はしていた方がいいわよ」
「そうだね」
高等部の試合も準決勝まで終わり、初等部決勝戦が始まる。
「「ブリザードトルネード!」」
吹雪はビードル先輩達四人を捕らえ、竜巻状に舞い上がる。
今回はウルフの時に比べ相手が少ないので、範囲は狭いけど強力な魔法使ってみました。
四人の内、何とか立っていられたのがビードル先輩とアッシュ先輩だけで、全員の結界が壊れていた。
「……」
相手以上に呆然としているユリウス。実はユリウスには内緒でフィアナと計画していた開始同時の氷の竜巻。決勝戦は見てろよ!とか誰か言ってたのでやってみたけど、ちょっと反省している。
まあ反則行為をした訳ではないので、いいよね。
勝ったのにトボトボ歩くユリウスを連れて、控え室に戻る。ビードル先輩達は結界が壊れた後ダメージを貰ったようで治療に連れて行かれた。一応加減はしたんだけど四人の中でも実力差があるから多少は仕方無いとしよう。
「ほら、元気出して、まだ後一戦あるんだからさ」
「元凶が言っても励ましにはならないと思うわよ」
「いや、フィアナも賛成したじゃん!」
「まあ、あまり使う機会無いしね」
「ほら、中等部の試合始まるよ!負けた方とはこの後試合だよ」
「…次は戦いたいな」「うん、ぼくも」
「わかってる、もうしないから。一回戦みたいに一対一に持ち込もうか!」
実はビードル先輩やアッシュ先輩とパーティー戦で戦おう的な約束を、ローレンはしていたようで、ローレンも地味に落ち込んでいたので、次はちゃんと戦うつもりだ。
中等部決勝は何か見た事あるなと思ったら、個人戦の魔術部門の決勝で戦ってた、それぞれ炎と氷の魔術師が率いるパーティーだった。どちらも他三人は戦士のようだ。
今度勝ったのは氷の魔術師、特に三人の戦士の内の剣と盾さんが面白い。ちょっと戦ってみたかったけど、まあ仕方無い。
私達の相手は炎の魔術師率いるパーティー、後は大剣、長槍、大斧と攻撃一辺倒のパーティーだ。ある意味凄い。
氷の魔術師のパーティーはきっちり防いで、反撃していたけど、私達は真っ向からぶつかるのも面白そうだ。
試合が始まる。
私の相手は大斧さん。やっぱり武器合わせた方がいいかなと思って、長槍さんにローレン、大剣さんにユリウス、炎さんにフィアナがぶつかるようにした。
流石に強い。力は全然相手が高いし、速さもあるし、技術もある。プラス衝撃波というか、多分闘気を使った技なんだろうけど、大斧が振り下ろされ地面に当たると同時に周りに余波が伝わりダメージがある。
大斧自体は受け流せているけど、衝撃波の全ては防げないので少しずつ結界が消耗している。
うん、これはきついね、仕方無い。
私は闘気と斧術だけで戦うのを諦め、氷の矢を放つ。それも相手の後ろや横から十数本。
氷の矢に気付いたようだけど、逃げ場は無い。大斧さんは左側の氷の矢を大斧で蹴散らし、回避しようとするが、そこを狙って私は攻撃する。体勢の悪い大斧さんは防ぎきれず足に貰い、そこを残った後ろと右側の氷の矢が狙い撃つ。殆ど防ぐ事は出来ず結界が壊れる。
さーて、皆はどうかな?
ローレンは長槍さんの攻撃を防ぐばっかりで全然反撃出来ていない。けど結界は殆どダメージ受けていない。…放っとこう。勝つにしても負けるにしても時間が掛かりそうだ。
フィアナと炎さんは良い勝負している。炎さんは無詠唱は出来ないようだけど、詠唱の短い下級魔術が普通より強力で、それに時折中級、上級を混ぜる事で、威力でフィアナの速さと拮抗している。手を貸そうかなと思ったら、目で止められた。フィアナも負けず嫌いだからなぁ。
ユリウスは、押されてる。手数では上のようだけど、力と技術で抑え込まれてる。うーん今にもやられそうに見える。今迄よくもったなって感じ…助けてやるか。
「ユリウス!」
掛け声と共に大剣を氷で覆う、大剣さんではなくユリウスの持つ大剣をである。大斧の刃作るのと一緒の魔法だ。これで殆ど重さが変わらず射程が伸びる。プラス強化もされる。ユリウスと氷は相性良くないからそんなに強化されないけど。それと透明だから伸びた範囲が判り辛いと思う。
これで力は同等までは行かないけど近くなって、剣速はユリウスが上で、技術もやり辛さが加わって対抗出来ると思うんだけど。まあ最後だし戦わせてあげようと思って、でも負けるの黙って見てるのもあれだしって事で。
ローレンにもやってあげるか…盾にトゲ付けてやろう。たまにシールドバッシュとかやってるし、槍強化するより有りな気がする。
さて、そうこうしてたらフィアナと炎さんの戦いが終わった。なんと相討ちだった。フィアナはちょっと悔しいが混じった、やり切った顔してる。まあ相手は中等部個人戦優勝者だからね。
ん、ローレンの方が終わりそうだ。私が強化して上げた位から、少しずつ反撃出来るようになってたけど、トゲつき盾でのカウンターが見事に当たった辺りから、優勢になってた。あっ、終わった。
これで二勝一分な訳でユリウス勝っても負けてもどうでもいい感じではあるけど、まあユリウス最後の見せ場だから応援しよう!
えー結果ですが、負けましたよ。良い勝負はしてたけど、負けちゃった。
まあ負けたのユリウスだけで、試合はユリウスが負けた後、私が終わらせて勝ちました。
で、もの凄い落ち込み中。これから高等部と騎士さんが戦うからちゃんと見といた方が良いのに。
中等部優勝パーティーと高等部準優勝パーティーは順当に高等部が勝った。
それでこれから高等部優勝パーティーと学園卒騎士さんの試合が始まる。
今回のゲストは学園卒の騎士三名と魔術騎士一名、卒業して五年らしいので二十歳位の人たちだ。
「斧持ってる人居ないな、斧技見たかったけど。ほらユリウス大剣持ってる騎士が居るよ、落ち込んでないでちゃんと見なきゃ」
「…ああ、わかった」
「流石に動き速いね…あれ手加減してんのかな?隙があっても攻めないよね」
「まあ、授業みたいなものじゃないかしら」
「そっか、じゃあ本気の技とか術とか見せないかな」
「そうかもね」
試合は終始、騎士さん優勢で終わった。私としては闘気や魔力の使い方を見たかったけど、面白いものは見れなかった。私が戦えるとしたら六年後か、まだまだ先だね。
表彰式。パーティー戦での優勝、中等部にも勝った事を褒められた。フィアナが魔術師部門個人戦優勝、ローレン戦士部門準優勝、表彰は三位までだったのでユリウスは無し。
そして私は魔具の初等部部門で最優秀賞とやらをもらった。何故か生産して売って欲しいという話も来た。氷を使って冷やして保管する冷蔵庫的な物はあったけど、冷凍庫や霧魔法を応用した私の魔具みたいな物は無かったらしい。量産とか面倒なので設計図と、幾つかの私が魔力を込めた霧と氷の魔石を一番初めに来た人に売って、後は好きにしてもらう事にした。
さて、闘技会も終わったし、そろそろ私の武器でも作ろうかな。




