第08話
闘技会二日目、今日は個人戦だ。
戦士部門と魔術師部門は別の会場で行われるので、魔術師部門のフィアナを見に来た。ノエルは自分の鎧を着て戦うユリウスが見たいそうで、戦士部門を見に行ってるので一人寂しく観戦する。
初等部の参加者は三年二十人、二年十五人、一年五人の四十人で、初めに五人ずつのグループで一斉に戦い、一人が勝ち残り、八人でトーナメント戦らしい。中等部、高等部も同じだそうだ。
フィアナはBグループらしい。他は三年二人に、二年二人だ。
会場には四つの舞台が作られていて、一度に試合をするらしい。
舞台毎に結界で覆われており魔法は外に出ないし、人一人分を覆う一定のダメージを防ぐ結界を発生する魔具を選手全員が渡され、結界が壊れたら負けになるので、一応危険は少ないらしい。この結界を作る魔具は凄い性能で、身体に膜を張るように結界が発生し、盾とかで防いだりした時は結界がダメージを受けない。まあそれ程強度は無い様だけど。
乱戦とかだと結界が壊れた後にダメージをもらう事もあるので、先生に実力を認められないと参加できないようだ。ボーダーラインは低いらしいが。一応癒魔法が使える人も配備されている。
フィアナの番が来た。
試合開始と共にフィアナを除く全員が詠唱を始め、少しのズレはあったが殆ど同時に広範囲の魔術を放つ。魔術が入り乱れ、相殺されたり、相乗したり、めちゃくちゃだけど三年二人の放ったものが威力が強かったようで、そちらは少し魔術が薄い。この状況だとそれが手っ取り早いかもしれないが、誰か防御しようとは思わないのだろうか。ただ一発の魔術の威力だけを競うような試合で微妙な気持ちになる。
一撃必殺は好きだけど、何も考えずにただ強い魔術を使っているだけに見えるのだ。
魔術が止んだ時、結界が無事なのはフィアナだけだった。フィアナは自分に及ぶ魔術だけ防ぎ、三年二人に雷撃を一発ずつ放っていた。
二年二人は悔しがっていて、三年二人は呆然としていた。
あっけなさ過ぎて、いまいちフィアナを祝う気持ちになれないが、これでトーナメント進出が決まった。
それから初等部後半、中等部、高等部と予選が行われた。
無詠唱を使う人が殆どいないのがびっくりだった。使ったのは高等部の数人だけで、後は全員詠唱して魔術を使っていた。中等部以降は戦術的な事も考えられて戦っていたが、詠唱付きだとテンポが遅い。
無詠唱ってかなり有用な技術だと思うんだけど、教えないんだろうか?
これ詠唱している間に攻撃すれば、フィアナあっさり優勝しそうなんだけど。
つーか団体戦も私とフィアナでブリザードを開始と同時に放てば終わんないかな?戦士がきちんと守るだろうか?
まあその辺はフィアナ次第にしとくか、私も楽しみにはしてたけどそこまで思い入れ無いし。
さてと、トーナメントは午後からだし、フィアナの所に行こうかな。
「フィアナー、おめでとー、ご飯食べに行こうか?」
「ありがとう。そうね、ユリウス達と合流しましょう」
戦士部門の会場に向かうとこっちに向かうローレン達を見つける。
「フィアナは危なげなく予選突破してたけど、二人はどうだった?」
「俺達も予選突破したぜ!ていうか今年の初等部のトーナメント進出者は八人の内四人が一年だぜ。
ちょっと騒ぎになってた。」
「へぇ、後二人は誰?」
「キャロルとシュラだな。騎士団長の娘と異国の剣士」
「あぁ、前に説明してくれた人ね。どう、優勝できそう?」
「当然だ!っていいたい所だけど、ビードル先輩やコジロウ先輩はさすがに強そうだったな」
「ふーん、団体戦で有力パーティーのリーダーの人達だっけ?…まあ、頑張って」
「いきなり興味無くしたな」
「だってどうせ試合見ないし、それにその二人にローレン達が勝てるようだと、団体戦が面白くなくなるなと思って」
「…お前にとってはそうかも知れないけど、初等部の優勝パーティーは中等部の準優勝パーティーとやれるし、それを楽しみにしてれば?」
「えっ?そんなのあるんだ?」
「ああ、中等部の優勝パーティーは高等部の準優勝パーティーとやって、高等部の優勝パーティーはゲストとやるらしい。ゲストが誰かはまだわかんないけど、学園出身の騎士と魔術騎士のパーティーとか冒険者のパーティーとか毎年呼ぶそうだぜ」
「へぇ、何でだろ?上には上がいるって教えようとしてるとか?」
「何か言い方がきついわね。目標になるようにとかでいいじゃない」
「個人戦はそういうの無いの?」
「無いな、パーティー戦だけだ」
「ふーん…」
ご飯を食べて、会場に戻る。
フィアナの番が来る。相手は二年生、ノーディア先輩。…あれっ?確か彼女も有力パーティーのリーダーだっけ。
「始めっ!」
審判の開始の合図と共にフィアナが雷撃を飛ばす。ノーディア先輩は詠唱中で避けも防げも出来ず、結界にダメージを負う。
結界は一度で破壊はされなかったがかなり薄くなっている。
ノーディア先輩の詠唱の完成と共にフィアナの居る場所が爆発する。いや、居た場所が爆発した。
フィアナは爆発が起こる少し前に飛び上がり、五メートル程の高さまで上がると再び雷撃を放つ。
今度は避けたが、避けた先にも雷撃を放ち今度こそ結界が破壊される。
「そこまで!」
うーん、無詠唱が卑怯に見える。相手も高速詠唱を使っていて、充分早いのかも知れないけど、詠唱で術の内容がわかるし、詠唱中断されると発動しないし、無詠唱が使えない魔術師の個人戦が、術の強さ比べになるのもわからないでもないなぁ。
フィアナは準決勝も相手の術を飛翔と高速移動で避けつつ、雷撃を当てるのみで無傷で勝ち、決勝に進出した。
決勝戦は中等部と高等部の一回戦、準決勝が終わったあとのようだ。次に中等部の一回戦が始まる。
おっ、今気付いたけど、あれミューズ先輩じゃん。
中等部一年でトーナメントに残るって事は結構凄い人だったんだなぁ。
よし!応援しよう。
負けちゃった。相手は三年だったようで、同じ炎魔術で力比べをして、負けてしまった。
あれはフレイムストームの魔術かな?威力は高いみたいだけどなぁ。
まあいっか。私が気にする事じゃないし。
中等部はミューズ先輩に勝った人と氷魔術の使い手の三年が勝ち上がった。
次は高等部。やっぱり無詠唱を使える人が有利のようで勝ちあがっていく。準決勝で初めて無詠唱を使える者同士の対戦が始まった。
と思ったら、一人は使わずに詠唱を始める。相手の無詠唱での初級魔術で結界が壊れる前に詠唱を完成させ上級魔術を放ち、相手の無詠唱での魔術防御を容易く破り、結界にダメージを与え、無詠唱魔術で追撃し結界を破壊する。
えーと、あれはいいのかな?戦術の一つではあるかも知れないけど、結界が無かったら詠唱中断してると思うんだけど。
次の戦いは無詠唱を使える方が普通に勝った。決勝戦ではもっと白熱する戦いが見れると嬉しいけど。
初等部決勝戦。フィアナ=カトラル対リア=ローディ。
試合開始と同時に動き回るリア先輩。あれ身体強化してるよね、無詠唱対策かな。
フィアナは何発か避けられた後に、雷撃で左右を塞いで避けられないようにした後、雷撃を放つ。
だけど、その雷撃は水の壁に防がれた。動き回りながら詠唱もやっていたようだ。
その水の壁は雷撃を防いだ後、形を変えてフィアナに襲い掛かる。
フィアナは飛び上がる事でそれを避わし、上空から雷撃を降らせる。
だけどフィアナに襲い掛かった水が再び戻ってきて、盾になる。
おー、あの魔術凄いな、一度発動させれば詠唱なく操作出来るのか。
再び襲いかかる水、フィアナはそれを飛び回りながら避けつつ、雷撃を放つ。
あの水で防ぎつつ詠唱して他の魔術で攻めた方が良さそうだけど、あれ使っている間他の魔術使えないのかな?
再び水が襲い掛かって来た時、フィアナはそれを避けず風で水の動きを変える。と同時に雷撃を放つ。
リア先輩はなんとか避けながら、水を戻そうとするが、フィアナはそれを風で抑えてさせない。
あの風随分強いなぁ。あれ抑えるの結構きついと思うんだけど。
リア先輩は水を戻す事を諦めたようで、水を消して詠唱しようするが、そこで雷撃に捕まる。
そこから連続で雷撃を当てられ、結界が破壊された。
やったね、フィアナ優勝!最後は結構白熱したな。…フィアナ無傷だったけど。
でもあの魔術、形態が二つしか見れなかったけど、分割したり、散弾とか出来たらかなり面白そうだな。
次は中等部決勝。
炎と氷の衝突が起こり水蒸気で舞台が覆われる。
ここまで行くと、魔術の強さ比べも面白いね。
その後も、片方からは氷が放たれ、片方からは炎が放たれ、中間で相殺される。
どっちも真っ向勝負という感じで、搦め手等する事もなく、氷の使い手の方がダウンするまでぶつけあっていた。
氷の方は魔力切れで倒れ、炎の方もふらふらだった。
あれはライバル同士とかなのかな?炎と氷で能力だけじゃなく、性格も正反対で、普段は仲が悪いけど、相手の実力は認めてるとか。なんて勝手に決め付けてみたり。
最後に高等部決勝。
期待していた戦いは起きなかった。今度も片方が無詠唱で初級魔術を放ち、片方がそれを無視しながら詠唱をする。
ただ今度は詠唱が終わる前に結界が壊れ、あっさり決着が着いた。
これはいいのかな?初等部や中等部より残念な結果の様な気がするんだけど。
…よし、フィアナ迎えにいこうかな。
「フィアナ、優勝おめでとう。」
「ありがとう、あの二人はどうだったかしらね」




