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mission27 女神の手

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mission27 女神の手

…………

 防衛戦の預言を受けました。

 預言の詳細を確認し、防衛戦の規模を確定してください。

 戦力を確認し、敷設可能な防衛陣の規模を確認してください。


 防衛戦開始まで 暫定 あと10日

………

 小聖軸の預言士たちからも報告があった。海底に不穏あり、騎士団に対処を求む、とのことだ。


 クラウナーが未来の羽化の様子を見て、ニーナが海底の現況を見た。小聖軸の預言士たちの見立てと概ね同じで、しかし、クラウナーは眉を寄せ「訂正するよ。猶予はそんなにないかもしれない」と呟いた。ニーナが飴を齧りながら「海底、気持ち悪いことになってる」と続ける。


「だって、なんか、刺さってる槍ぜんぶが動こうとしてるみたいだよ……連鎖羽化の後って槍は普通寝ちゃうよね? ぜんぶ起き出したみたいになってる……」


 ニーナは噛み砕いた飴を飲み込み、不安げにノワーレを見た。黒銀の目が、涙を堪えて揺れる。


「わたしがここにいるからかも……だって、ノワーレを刺したやつ、ほんとはわたしを狙ってた……」

「それがどうした」


 ノワーレは、泣きそうなニーナの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。


「騎士が女の子ひとり守れなくてどうする。危機は大会合から預言されてたし、だからこそおまえは銀狼預かりになった。銀狼なら充分守れると、エヴァ様は判断したんだよ」

「でも、わたしだって救世主だよ……ノワーレを守るのはわたしなのに……」

「百年早いよ。お前はわたしを守るんじゃなくて、わたしと一緒に守るんだ」


 ニーナはまだ不満と不安を残した顔でノワーレを見たが、ノワーレは取り合わなかった。騎士がただ守られるなど、名折れどころではない。


「頼りにしてる。お前じゃなきゃ出来ないことがあるんだから、守られてくれるね」

「うん……じゃあ、ノワーレはクラウナーに守ってもらって」


 急に名前を上げられたクラウナーは驚いた顔をしたが、すぐに「もちろん」と笑んだ。


「ノワーレにばっかりいい格好はさせないよ」


 ノワーレは肩をすくめたが、否定はしなかった。

 

 軍議を端で見ていたイライヤが、「いいなー……」とぼんやり呟く。


「私も若い子に懐かれたい……」


 イライヤは拗ねた子供のような顔をすると、立ち上がった。


「私もローランとカジャカに遊んでもらってくるよ。ノワーレ、二人を大事にね」


 言いながら、手を振って部屋を出ていく。扉が閉まる直前、イライヤは低く言った。


「人の中にいないと、海が誘ってくるよ」


 何故だかニーナが、ノワーレの腰のあたりに抱きついて頷いた。


※※※※


 翌日、白鼠騎士団から、正式にイライヤとフランツを防衛戦に参加させる、という報せが届いた。イライヤの言う通り、二人だけで白鼠騎士団一個中隊規模の戦力を期待して構わないらしい。白鼠の女王隊の参戦を知り、銀狼は色めき立つ。


 歌唱大隊は銀狼領ゆかりの者のみの参加となった。前回の防衛戦での損耗が大きく、手が回らないそうだ。歌唱者はクラウナーとローランを含めても三十名には届かないが、クラウナーは「僕一人でもなんとかしようと思えばできるよ」と微笑んだ。


「シャンティもいるし、いざとなればローランも頑張ってくれるしね」

「かわいい弟に名指しで頼られたら、頑張らんわけにはいかないな」


 ローランはやれやれ、と芝居ががって笑い、金猫を抱いたカジャカが、何言ってんだこいつ、とでも言いたげな視線をローランに向けた。


 軍議の席で、ユーリがノワーレに視線を寄越す。


「ノワーレも出るのか?」

「えっ、出るよ」


 ノワーレが答えると、ユーリは兄の顔で首を振った。


「お兄ちゃんはあんまり賛成しないぞ。復帰直後だし、胸に傷だって残ってる」

「傷はもう痛くないし、調子も悪くないよ。私を除外すると純粋に戦力が減るでしょう」

「それはそうだが……」


 渋るユーリの隣で、ミゲルも似たような顔をしていた。ジョルジオも物言いたげな顔をしている。


 黙って場を静観していたイライヤが、ぱしん、と手を打った。


「じゃあ、ノワーレには私の近くにいてもらおう。白鼠は銀狼みたいに素早く動けないから陸で戦うことになる。お兄ちゃんたちとお父様の目が届く範囲で戦ってもらうのならいいんじゃない? ついでに、ノワーレは白鼠の戦い方をお勉強するといいよ」


 いつもの気怠そうな笑顔のまま、イライヤは「ね?」と甘く言った。

 客人、しかも、白鼠の女王の進言となれば、兄たちも表立っては反対しづらい。ジョルジオは多少何か言いたそうにしてはいたが、諦めて「では、そうしよう」と息を吐いた。


「ノワーレ率いる第三小隊は後陣詰めとする。歌唱者たちを守れ。白鼠騎士団のお二人にはノワーレと共に後陣の防衛に当たってもらう。それでいいな」


 騎士団たちが応じ、イライヤがにやりと笑んだ。


「これでクラウナーとも一緒にいられるでしょ」


 なんだか上手く丸め込まれた気がしたが、ノワーレは素直に「ありがとうございます」と頭を下げた。


※※※※


 夜半、イライヤに誘われて、ノワーレは海岸に出た。城砦の人々の多くは既に眠っており、二人はそれぞれの獣だけを従えている。夜番の騎士たちが明かりを掲げながら海岸線を走り、イライヤは、彼らとは逆方向へ足を向けた。ノワーレも着いていく。


 誘われた理由は分かっていた。目の奥が、胸の傷跡が僅かに疼き、ノワーレの気を逸らせる。耳の奥で、海底の冷たい水が泡立つ音がする。


 ニーナもクラウナーも反応していない。ということは、ノワーレとイライヤだけに分かることなのだろう。


 銀狼(ガルディエーヌ)が、暗い海へ向けて低く唸る。鼠たちがイライヤの足元で束になり蠕動を始める。


 流氷の下、海の底に、かつては豪奢を極めたのであろう調度の瓦礫が堆積していることを、ノワーレは何故だか知っている。斜めに倒れ崩れた柱。床に散らばった宝石は長い年月に摩耗し、色彩を失っている。無色の石は命に憧れる魂を宿し、しかし、命にはなれぬまま、弱く明滅している。


 ノワーレの胸の傷痕の更に奥、心臓があるべき場所が、同じ速度で脈打っている。


 闇夜の空がオーロラ色に裂けた。イライヤとノワーレは、立ち止まってそれを見た。


 裂けた空からオーロラが降り注ぎ、白く巨大な手が現れた。たおやかな女の手だ。オーロラが揺れる空から、美しい旋律が奏でられる。最上の歌唱者たちを集めても対抗出来ないであろう、畏れを抱くほどに美しく壮麗な歌声。


 麗しい合唱が響く中、女の手が流氷を割り、海に沈み、海底で明滅する石を一掴みほど手の中へ握り込む。引き上げられた手から滴る真っ黒な雫が流氷へ滲み、小さな災厄獣の形に生まれ出た。まだ幼い、生まれたことすら知らぬ真っ黒な命だ。自身がすべきこともわからず、流氷の上で力無く蠢いている。


 ノワーレとイライヤは雪に弩弓を突き立てて、生まれたばかりの災厄獣を射殺した。


 女の手が空へ帰ってゆく。裂けた空が閉じ、オーロラがほどけ、壮麗な歌声も闇の中へ消えていった。


 立ち尽くすノワーレとイライヤの前を、夜間哨戒の騎士たちが一礼して走り去った。


 夜の海は、静かに揺れている。何もなかったかのように。


「……いまのは」


 ノワーレが絞り出すと、イライヤは首を振った。


「わからない。でも、たまにあるんだ」

「女神様の御手……?」

「かもね。海の底には命が沈んでいると言うし……この子達も、きっと、海から来た」


 イライヤの肩で、白鼠が「ちゅ」と鳴いた。


「私たちは……流氷の上で拾われた……」


 ノワーレが呟くと、イライヤは軽く笑んだ。


「それが、女神様の意思であれば、いいんだけどね」


 しかし、流氷の上に残されたのは、幼い災厄獣だった。


 自分もあのように生まれたのだとしたら?


 海に落ちても生還したこの体は、やはり、人間ではないのかもしれない。


…………

mission27 完了


 元求石を9個消費しました。

 

 強化アイテム 10連ガチャ

 結果


 N 銀狼

 N 白鼠

 NR 猛き銀狼

 N 銀狼

 N 団茶

 N 団茶

 R 棒つき飴

 SR 瓶詰め飴

 N 白鼠

 NR 猛き白鼠


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