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mission15 大規模防衛陣敷設

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mission15 大規模防衛陣敷設

…………

 大規模防衛陣を敷設します。


 配置ユニットに「聖歌唱大隊」が追加されました。

 「聖歌唱大隊」のキャラクターは、防衛陣後方のマスに配置できます。


 クラウナーの所属ユニットに「聖歌唱大隊」が追加されました。

 後方マスに「クラウナー」を配置してください。


※※※


 銀狼城砦の見晴塔管理士は、雪原を進む金馬の一団を見た。一糸乱れぬ隊列で銀狼城砦へ向かって進む歌唱大隊一〇〇名あまり。白い装束を靡かせて街道を進んでくる。彼らは粛々と銀狼城下街へ進み、数隊を小聖軸へ留まらせ、本隊は真っ直ぐ銀狼城砦へ向かった。銀狼騎士団は、聖歌唱大隊を正門で迎えた。


「聖歌唱大隊第一大隊、参上いたしました! これより銀狼騎士団と共に大規模防衛陣を敷設し、人類繁栄圏防衛のため力を尽くします!」


 整列した白装束の中、一人の若者が声を張り、全員が馬から降りて聖杖を雪に突き刺し掌を喉に当てた。隊列の最前、中心に立つ一際大きな偉丈夫が太く豊かな声を上げる。


「我ら人類に繁栄あれ!」


 大隊が唱和し、女神の力を持つ者の声が城砦に響き渡った。ジョルジオと共に迎えたノワーレたちも唱和したが、ニーナとクラウナーは驚いて声をあげる間もなく硬直した。ニーナは前に立つノワーレの影に隠れ、クラウナーは固まったまま聖杖を握りしめている。


 この大声の応酬は、騎士団と大隊が合流するときの作法である。防衛の本拠地は大抵騎士団の城砦になるため、歌唱大隊は常に訪問者となる。歌唱大隊は訪問先の騎士団に一歩引いた立場を取るが、騎士団にとっては歌唱大隊を遇することは名誉であるため、互いに敬意を表し、女神の徒として同じ目的を持つ対等な者同士なのだと確認し合う。そのための唱和だ。


 大隊から偉丈夫が進み出で、ジョルジオの前に立った。ジョルジオに見劣りせぬ鍛え上げられた巨躯に聖歌唱大隊の白い戦装束。さながら吹雪に立つ小聖軸のようだ。彼こそ聖歌唱大隊の第一大隊長(グラン・マエストロ)、ギヨームである。


「世話になります、ジョルジオ」

「こちらこそだ、ギヨーム。久しぶりだな」

「ええ。あなたと私が揃えば災厄獣など敵ではないでしょう」


 ジョルジオとギヨームは硬く手を握り合い、肩を叩き合った。いずれも民に名高き騎士と歌唱士である。彼らの武勇はノワーレも幼い頃から吟遊者の歌で聞かされていた。彼らが揃うということそれ自体が、この防衛戦が厳しいものになるという意味を持つ。

 ノワーレの頬がひりつくのは、寒さのせいだけではないはずだ。


「歌唱大隊! 銀狼に従い防衛陣を敷設せよ! 羽化は三日後、それまでに全ての調整を終えておけ!」


 ギヨームの命に歌唱大隊が答え、騎士団が「お任せください!」と声を上げた。あとはそれぞれ役目を持つ者たちが案内と敷設を担う。


 騎士団の中枢幹部として残ったユーリがまずギヨームに挨拶して握手を交わし、ノワーレも、ニーナとクラウナーを連れてギヨームの前に立った。型通りの挨拶を交わし、握手をする。


「女神に愛されし銀狼の姫騎士と会えて光栄です。彼らが救世主と女神の写し身ですな」


 穏やかに言われ、ノワーレはややむず痒く居た堪れない気分になる。銀狼の姫騎士、と呼ばれてはいるが、ノワーレは銀狼の純血ではないのだ。

 だが、今そんなことを言っても仕方がない。銀狼の騎士であることに変わりはないし、やるべきことも変わらない。純血であるかどうかなどノワーレ自身の問題でしかなく、騎士としての二つ名にいちいちかかずらわっているほどの暇はないのだ。

 ノワーレはニーナとクラウナーを、あくまで第三小隊の新人として紹介した。


「これはニーナ。見ての通り、まだ子供です。今回は私の隊で前線に出します」


 ニーナは緊張した顔をしていたが、ギヨームが笑みを見せると、おずおずと進み出て「ニーナだよ」と右手を差し出した。ギヨームは恭しく握手を交わす。


「なるほど、確かにお若い。しかし、銀狼の姫と共にあるのなら安心でしょうな」


 言われたニーナは、急に笑顔になって「うん!」と元気よく答えた。


「ノワーレは凄いんだよ。私を守ってくれるって」

「仲がよろしいようで、なによりです。女神もお喜びでしょう」


 ノワーレはニーナが暴走する前に手を引いて自分の背後に引っ込め、今度はクラウナーを出した。


「彼はクラウナー。うちの新人ですが、歌唱士としても見習いで、まだ大隊の作法も知りません。学ばせて頂ければ幸いです」

「クラウナー・ハイプリエスタです。幼い頃にお会いしたことがありますね。よろしくお願いします」


 クラウナーが礼儀正しく挨拶して握手を交わし、ギヨームは「うむ、きちんと鍛えられていますな」と頷いた。


「ご存知でしょうが、歌唱大隊は騎士団が戦い続ける限り、何昼夜でも歌い続けます。幼い頃はか弱く見えましたが、これだけ鍛えられていれば安心です。鍛錬を怠ってはいないようですな」

「ええ、大聖軸でも大隊の訓練に参加させていただいてましたし、騎士団にも良く鍛えてもらっています」

「そのようだ。共に、歌唱士として力を尽くしましょう」


 ギヨームがクラウナーの肩を叩いて激励し、クラウナーも礼儀正しく笑んだ。ノワーレは興味津々でギヨームを見ているニーナを押さえながら、ギヨームが城砦へ案内されていくのを見送る。ギヨームが客用宿舎に落ち着いたあと、第三小隊は歌唱大隊を交えた軍議に参加しなくてはならない。

 急に背後に気配を感じ振り返ると、ローランとカジャカが蒼熊の影に隠れてこちらを見ていた。ローランの腕には金猫が、やはりやる気がなさそうに抱えられている。


「やれやれ、いつもながら大所帯だな。僕も出るから挨拶くらい……と思ったが、堅苦しいのは苦手でなぁ」


 ローランは馴れ馴れしくクラウナーの隣に立つと、「どうだい、やっていけそうかい」と水を向けた。


「僕も後陣にいるから、怖くなったらこのお兄さまを頼ってくれたまえよ。いざとなったら猫でいつでも連れ出してやるからな」

「ローラン……大丈夫だよ」


 クラウナーが心底嫌そうな顔をするのに、ローランは芝居がかった仕草で頷く。


「おお、頼もしい! さすがは我が弟、銀狼の姫に鍛え上げられている成果だな!」

「ローランうるさい。ニーナ、クラウナー、いくよ」


 ノワーレはまだそわそわしているニーナの肩を掴み、クラウナーを連れて城砦へ戻る。城砦の扉を潜る前、ローランに片手を上げた。あのお節介で軽薄な男が、クラウナーの緊張をほぐそうとわざと遅れて現れたことは分かっていた。ローランにも、ノワーレが気づいたことは伝わったはずだ。


※※※※


 城壁の下、海岸から最も遠い位置に木組みの砦が組まれた。補給庫が急ぎ整えられ、人を休める簡易宿舎と馬を休める厩舎までもが急拵えで設置される。


 配備されるのは銀狼騎士団一二〇名、聖歌唱大隊第一部隊一〇〇名、その他、小聖軸預言士や、投雪、雪壁の管理をする自警団の精鋭が約三十名。

 街では自警団と歌唱大隊の小隊員が人々を隣町や小聖軸へ避難させ、家の戸や窓に木が打ち付けられ厚い雪壁で覆われた。万が一城砦を突破された際の保険である。災厄獣は、女神の恩寵たる雪を突破できない。


 ノワーレたち第三小隊は、先鋒として最前線に配備される。クラウナーは歌唱大隊預かりとなり、木組みの砦に配備されるため別行動だ。


 防衛戦が明日に迫った夜、ノワーレは、ニーナとクラウナーを部屋に呼び出した。長椅子に並んで座らせ、とりあえず茶を与える。ニーナは相変わらず気楽な様子だが、クラウナーはやはり緊張しており、オーロラ色の目がやや暗い。


「クラウナー、不安?」


 ノワーレが問うと、クラウナーは「ちょっとね」と強がって笑んだ。まあ、笑えるなら大丈夫だろう。フェリーチなど初陣では歯の根が合わなくなっていたし、ピエールなんて真っ青な顔をしていたものだ。


「わたし、そばにいようか?」


 ニーナがクラウナーを見上げて言うのに、ノワーレは「お前は私の隣」と制し、クラウナーの手に小さなペンダントを握らせた。ニーナの首にも同じものを掛けてやる。ニーナが首に掛けられた小さな石を摘み上げ、しげしげと眺める。


「これなに?」

「私が余らせてた礎石。さっき染めといたから、きっとお前たちを守ってくれるよ」


 ノワーレはクラウナーの手に乗せた礎石を淡く光らせた。武器にするにも道具にするにも小さすぎる欠片だが、気休めのおもちゃくらいにはなる。ノワーレも、初めての大規模防衛戦の前にユーリに施してもらった。戦いの中でいつしか無くしてしまったが、幼かったノワーレを確かに勇気づけてくれた。


 クラウナーは淡く虹色に光る石を戸惑ったように見つめたあと、不意に氷が溶けるような笑みを浮かべた。青ざめていた頬にやや赤みが差して、ノワーレは安堵する。


「ありがとう、ノワーレ。大切にするね」


 クラウナーは、幼子のように無防備な笑みでノワーレを見上げた。ノワーレは急に心臓を鷲掴みにされたような気持ちになって、慌ててクラウナーの頭をぐしゃぐしゃに撫でる。


「うわっなに」

「お前ばっかり緊張しても仕方ないんだよ。後陣にはシャンティがいるし、ローランとカジャカもいる。大丈夫だね?」

「だ、大丈夫だよ、わかったから」


 クラウナーの頭をぐしゃぐしゃにしていると、ニーナが「わたしも! わたしもやって!」と言うので、ノワーレはニーナの頭もぐしゃぐしゃにした。ニーナは喜んで子犬のように笑う。


「お前たちに、女神様の加護がありますように」


 ノワーレが囁くと、クラウナーが「ノワーレにも」と囁いた。


「もちろん、ニーナにも」


 クラウナーの優しい声に、ニーナが嬉しそうに笑む。


「大丈夫だよ。わたしがみんなを守ってあげるね」


 ニーナがいつものように気楽に言って、ノワーレはぐしゃぐしゃにしたニーナの頭を手櫛で整えてやった。


 こう見えて、救世主と女神の写し身なのだ。

 どんなに戦場が荒れようとも、この二人だけは生きて返さねばならない。


「ニーナは私の言うことを聞くこと。クラウナーは大隊の作法に合わせるんだよ」


 言い聞かせながら、ノワーレは思う。

 きっと女神は、ノワーレなら二人を守れるとして導き手などに指名したのだろう。

 ならば、たとえ自分が純血の銀狼でなくとも、流氷の拾われ子であったとしても、やるべきことは変わらないはずだ。

…………

mission15 完了


大規模防衛戦を開始します。

準備はいいですか?


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