第八十五話 夜刀の記憶と一本だたら
毎日12時に投稿してます。
外伝である。『菊理姫様!お導きを』〜英雄の誕生〜もよろしくお願いします。
そちらは、毎日18時投稿します。
朝早くに目が覚める。
リビングから物音がする。
一階に降りる。
ヒロが戦闘服に身を包んで道具を手入れしてるた。
「どこ行くん?」
「ケジメをつけに行くんや。櫻は待っとて。俺だけでかまん。」そういうとフル装備を抱えて玄関へ向かう。
待って。と言いかけ手を伸ばそうとするが、その勇気が出ない。
「帰ってくるよな?」代わりに出た言葉が苦しい。
「そのつもりや。」
そう言ってヒロは出ていってしまった。
じっとりとした空気の中カエルの鳴き声だけが喧しく聴こえた。
遡ること数時間前。
執務室で受けていた報告だ。
夜刀の心臓から記憶を取り出すことに成功した我々が見たものは、あまり良いものではなかった。
「一本だたらとハーメルンと言う組織ね。」
「作られた映像という可能性も考慮しないといけません。」なぎさが発言する。
「確かに‥。でも、心臓に残っている記憶は脳のように誤魔化しが効きづらい。でも、遺体を全て回収しないで、こちらに情報を与えた意味もわからない。」私は、みなの顔を見る。
会議のメンバーはいつも通りだ。皆、ヒロを見ている。
「‥‥。」映像を見たヒロが黙っている。
「ここで話しても仕方がありません。紀州の領主にこの事を伝えて調査してもらいましょう。一本ただらの集落は紀州にあるのだから。」そう、管轄外だ。
映像を解析した結果。
紀州巡礼道の高野の里付近の映像が見えた。
ハーメルンと言う組織は、一本ただらとなんらかの契約をしているようだ。
そして夜刀の義眼は一本ただらが作ったのがわかった。
夜刀の記憶は、注射で自らアンデットになる様子。
兜山ダンジョンから追い出されて、不貞腐れてる所に黒いスーツの男がやってくる。
そこから、男に連れられて紀州に入り、義眼を手に入れる。
「これで、人生無双できる!チートや!」と高らかに宣言していた夜刀の映像があった。
どこまでも矮小な奴だ。
しかし、これでやっと謎の男の人相が割れた。
浅黒い肌、ホリが深い顔立ち。
大和では珍しい顔立ちをしている。
常に認識阻害魔法をかけていたのだろう。
全国民が多かれ少なかれ魔力を持っている大和人の弱点だな。
私は、各領主と中央にこの件を報告するのと「ハーメルン」の捜索に関しては、中央騎士団のオロチに一任する事を決めた。
輝夜には、早速出張に行ってもらわねばならない。
そんな会話で会議が終わった。
そして、今。
ヒロが出ていたリビングで一人麦茶を飲んでいる。
ヒロは、忌守と言われていた地域の生まれだ。一本だたらは、忌守の集落と関係が深い。
ヒロは、何か知っている様だった…。
私は、ヒロのことで心がいっぱいなのにどこか空っぽだった。
ガラスのコッブの中の氷がカランと静かなリビングに響いた。
高速道路から流れる風景は、街並みから工場地帯に変わった。
前は、何回も通った道なりだ。
その頃には、必ず櫻が助手席にいた。
ヒロがハンドルを強く握りしめる。
誰もいない助手席にそっと小さな影が見えたような気がした。




