第七十三話 嫡子の責任とブラック櫻子
本日から朝と夕方の2回投稿にしたいと思います。
平日は、朝8時投稿。夕方5時投稿。
土日、祝日は、朝10時。昼の15時投稿にします。
私は、なぎさを呼ぶ。
「緋色の軍服を用意してくれ。」短く指示を出し、衝立の裏に行き着物を脱ぐ。
「お手伝いいたします。」佐々木が手早くやってくる。
「輝夜も出撃の準備を!帝都に人体魔石化も情報を報告してくれ。」着替えながら指示を出す。
「はっ」と短く返事すると退出する音が聞こえる。
なぎさがやって来て軍服に袖を通す。
黒い詰襟のブラウス。
防御力が増すストッキングを足に履きガータベルトで止める。
ハイウエストのロングスカートは動きやすいようにスリットが深く入っている。
その上に肋骨服の詰襟のジャケットを着る。
襟元には菊理姫様の眷属を表す、雛菊と波の刺繍をあしらっている。
帽子を被り、衝立の外に出るとかよが近づく。
「ラビリンスに行くのか?」
「あぁ、今回は、私直々に向かう。」
「わしも行く!」かよが力む。
「あかん。」と即答する。
「なんでや!うちは、跡取りなんやろ!」かよの語気が強くなる。
「跡取りやからや。私が、撃たれて死んだら?誰が、この組合と領地の指揮をとる。」私は、真っ直ぐかよを見る。
かよの背筋が伸びる。
「組合長の丸山か?安全管理の上野か?それともヒロか?」
「違うやろ。後神家嫡子である。かよの仕事や!」
私は、菊理姫様のハサミでかよをピッと指す。
「この神器は、私とかよしか持っていない。神の理はわからない事だらけや。
でも、このハサミを持った少女が再びこの神辺に現れた事には、意味があるはずだ。
私の留守を頼む。かよには、なぎさを補佐として置いていく。私は生きて帰れるよう善処する。」そう話すと執務室を出た。
立ち去る時にチラリとかよを見る。
綺麗なカーティシーをしていた。
淑女教育頑張っているじゃないか。
官邸内の廊下を進み、組合の受付前まで行くホールには多くの冒険者が集まっている。
「ラビリンス周辺の道路は閉鎖したと警察から報告があります。」丸山が話す。
「近くに居たものは、直ちに避難し、学校や病院には、守りのためにBランクの冒険者と警官が配置されています。」上野の報告。
「浪華からの応援も来ています。帝都からも部隊を編成して騎士団が来るそうです。」人員の配置と調整は経理・配置部門の水谷の仕事だ。
その他、魔道具や薬品も守備良く準備済みだ。
私は、群衆に向かって口を開く。
様々なランクの冒険者が真剣な顔でこちらを見る。
「嘆かわしくも、この神辺に人体魔石化が確認された。先の大永事変より5年ぶりの人体魔石化だ。賊は、誰だかわからない。敵対している国か、組織か、はたまた、個人の愉快犯か?」
そこで、少し乾いた笑いが起きる。
「しかし、一つだけ言えることがある。」
そこで、一呼吸おく。
「相手は、余程私達とパーティーがしたいらしい。そのお誘いに乗ろうじゃないか。こちらが、『もう踊れない』と言うまでではない。相手が『もう、勘弁してくれ』と泣きつくまで踊らせ続けようじゃないか。」
「殺してくださいって懇願するぐらいになぁ!」吐き捨てるように憎々しげに解き放つ言葉に冒険者が歓声で応える。
「航空空域を開放する。派手に空から参ろうじゃないか。相手の舞踏会に」
そう告げると私は、入り口に向かった。
こぼれ話
なぎさ「うわぁ!久々にあの勇ましい殿下を見ました。」
かよ「人が変わったようじゃの‥。普段の姿からは考えられぬ。」
ヒロ「これから人を殺すかもしれないからな。あれぐらい演技しないと心がもたないんだよ。」
道具をメンテナンスしているヒロの横顔をかよはマジマジと見た。
その顔は、とても悲しそうだった。




