第百十四話 英雄でも聖女でもない。母親
毎日12時に投稿してます。
全年齢版櫻子とヒロの出会い編
『菊理姫様!お導きを!』〜しくじり元公爵令嬢とこじらせ忌守君〜
現在準備中
※なぜ、かよちゃんが追悼式に突然現れたのか知りたい人は〜英雄の誕生〜を読んでください。
ただし鬱描写とPTSD描写が苦手な人は辞めておいた方がいいです。
あれから、幾日が過ぎた。
夏が深まり、かよは夏休みに入った。
ーーーそして、今。
大永事変の追悼式に突然現れたかよを執務室で尋問している。
神楽装束を着たかよが、ソファの上で小さくなっている。
かよの前には神器の鉾鈴と扇。
私の隣には険しい顔のヒロもいる。
机に縦肘をつき、顎を乗せる。
「……で。その白馬に連れられて事変の様子を見てきた…っと?」私が静かに尋ねる。
「……はい。」かよの声は小さい。
「因みにどんな事を見てきたん?」
「櫻子が……大変だった事です。」
「具体的には?」
「………。」かよの目が泳ぐ。
「言えない事なの?」
「その…。」
しばらく迷った後。
「櫻子とヒロが…。まぐわっているところとか…。」かよがポツリと話す。
ガタン!
私は勢いよく立ち上がる。
そうして、魔法書を手に取る。
「ヒロ。」
「なんや?」
「時間制限なしの忘却魔法を使うと脳にどんな影響与えるかな?」
「……。」
「そんな魔道具作れない?」
ヒロが顎に手を当てる。
「せやなぁ…。記憶の前後がなくなるのとその時の映像に似たものを見たら失神するかもしれん。」
「なるほど。認知の歪みはなさそうね。」私が本に目を落とす。
「すまん!何も見てないのじゃ!」かよが顔の前でブンブンと手を振る。
こっちはかよを気にして、時々ホテルに行ってるのに何見てんねん!
ため息が出る。
ヒロを見ると俺は知らんって顔をされた。
ーーーこうして、夏休みが始まった。
そして私は、この夏。
また大きな陰謀に巻き込まれる事になる。
かよは、進路を決めた。
「神辺から華族学校に通う!」
「その為には受験やな。これから寝る時間がなくなると思いなさい。」私が静かに話す。
いつものかよだったら弱音を吐いてるが、今回のかよは真剣な眼差しで私を見つめ返した。
そうして、自分のスマホを私に差し出した。
「受験が終わるまで預かってほしいのじゃ。学校の友達も親に預けたと申している者が多い。」
ほう。本気なんやな。
「わかった。」私は静かにかよのスマホを受け取った。
あの話は本当なのかもしれない。
「それに……。櫻子に嘘をついていた。」
「?」
「わしの主神は、神稚日女尊様じゃ。」
「黙っていてすまん。」
かよが私に頭を下げてきた。
私は手を上げる。
かよの体がビクッと強張る。
かよの頭に手をそっとおいてなでる。
「知ってるよ。」
かよが顔を上げる。
その表情は驚きに満ちていた。
「いつから気がついていたんや。」かよが驚愕して尋ねる。
「かよが、神器を自由自在に形を変えれる頃からね。」
「何故、問い詰めへんかったん?」
「自分で言い出すのを待っていた。」私が静かに言う。
「櫻子…。お母様には敵いません。」
かよが静かに私の事を母と呼んだ。
私の中で、諦めていた女性としての幸せがじんわり滲んできた。
心が揺らぐ。
「無理に“母”と呼ばなくてもいいよ。」取り繕って話す。
「いえ、これからはお母様と呼ぶ。」
「後神櫻子様は、うちのお母様です。」
かよが、私を真っ直ぐ見てきた。
その瞳に映るのは
血まみれの鬼女と言われ。
魔女と罵られ。
英雄と担ぎ上げられ。
聖女と称えられた女だろうか?
でも、わかるのはーーー。
私に大切なものがまた増えたという事実だけだった。
高天原話
河辺にロッキーと白馬が居る。
ロッキー「白馬様ありがとうでしゅ。」
白馬「わしは、姫様の言いつけ通り動いただけだ。」
白馬「ところで、其方は転生しないのか?それだけ徳を積んだなら来世は人族であろう。」
ロッキー「もう少し、大夢と櫻子を見守るでしゅ。」
白馬「そうか…。」




