第百一話 小さな英雄が導いた縁
毎日12時に投稿してます。
外伝である。『菊理姫様!お導きを』〜英雄の誕生〜もよろしくお願いします。
そちらは、毎日18時投稿します。
※※ロッキーが気になる人は〜英雄の誕生〜をご覧になってください。
後…。最終回じゃないですからね…。
ごめんやけどまだまだ続きます。
白くふわふわの毛。縞々の体。
そして、真実を見抜く目。
…ロッキーだ。
ロッキーは山伏の服を着ている。
「櫻子!この糸を切るでしゅ!」ロッキーは猪笹王とヒロと繋がっている赤黒い糸を持っている。
私は、自分の神器でその糸を切る。
ヒロの体の光が消えた。
でも、体が元に戻らない。
左足は萎えたままで、左目も小さい。
「ヒロ!」私は、ヒロの左足・左目に手をおく。
「ひふみ・よいむなや・こともちろらねしきる・ゆいつわぬ・そをたはくめかうをえにさりへて・のますあせえほれけ」私は、詠唱をして韴霊の命から力を借りる。
しかし、ヒロの左足も左目も戻らない。
それどころか、ヒロの息が荒くなってる。
「…どうして。」
「櫻子!大丈夫でしゅ!この糸をくくるでしゅ!」見るとロッキーが一本の黄金の糸を持っている。
その糸は天から伸びていた。
「ロッキー…。私、切ってばっかりでくくるなんてやった事ないよ…。」
「大丈夫でしゅ!櫻子ならできましゅ!」そうして、私の腰のホルダーからかぎ針を出してきた。
あの不思議な男から買ったかぎ針だ。
私は、ロッキーから震える手でかぎ針を手に取る。
「櫻子。縁を結ぶでしゅ。」ロッキーの手から黄金の糸を手に取る。
指先に触れた瞬間、不思議と暖かかった。
ヒロの胸から、今にも途切れそうな一本の縁糸が見えた。
手の中の黄金の糸を輪にする。
手が勝手に動く。
まるで、誰かが優しく手を添えてくれているようだ。
私は、初めて切るだけではなく、結ぶために神器を動かした。
ヒロと切れかかった縁をもう一度結び直す。
ヒロの糸と黄金の糸をそっと重ねてかぎ針を差し込む。
一目。
もう一目。
ゆっくり。
ゆっくり。
糸が輪になり、結ばれた。
2本の糸が一本になる。
その結び目が静かに締まる。
その瞬間ーーー。
天に伸びた糸から木漏れ日のような光が届く。
黄金の光が糸を伝ってヒロの胸へ流れ込む。
冬の朝日より柔らかく。
春の日差しより、優しく。
夏の昼間の太陽の様に力強く。
秋の紅葉を照らす夕日のように美しく。
赤黒い穢れが、静かに溶けていく。
ヒロの大きく肥大した右目が小さくなり、元の位置に収まる。
左目の傷が癒やされ、左足も光と共に癒される。
「……櫻?」ヒロの震える手が私の頭を撫でる。
「ヒロ!」私はヒロに抱きつく。
「ヒロ!ロッキーが助けてくれた。」
「…?」
「大夢!」ロッキーがヒロに声をかける。
「ろ…ロッキー?」
ロッキーが私たちの頬に自分の頬を擦る。
あぁ、あの時のままだ…。
私は、今日ーーー。
初めて命の縁を結んだ。
それは、人を斬る神器ではなく。
人を繋ぐ神器として。
「ロッキー!今、猿田彦様にお仕えしているでしゅ!」そう言うとヤツデの葉を出した。
「風神様からお力をお借りしましゅ!」そう言うとヤツデの葉で風を巻き起こす。
私の髪の毛からあの葉が、風の精霊と共に舞い上がった。
私の吹雪は静かに溶けていく。
凍てついていた景色に春の気配が戻る。
夏の風が戻り木々を揺らした。
風神の禊が、忌守の集落を包む。
仏法を犯した者の罪を風で舞上げ、罪だけが静かに天へ舞い上がる。
風神の加護は命あるもの全て分け隔てなく撫でる。
それを見届けたロッキーは、再び私たちの目の前に来る。
私とヒロはゆっくり身を起こした。
私は、ロッキーと目を合わせる。
耳の横のふわふわの白い綿毛のような毛。
クリクリの目。
そして、ロッキーの最後を思い出す。
「ロッキーごめん…。あの時…。私…。」
「櫻子。大丈夫でしゅ。」
ロッキーが私の頬に自分の頬を擦りつける。
そして、私とヒロの頬を触る。
小さくて暖かい。
「櫻子!大夢!“二人の縁”はとっても綺麗でしゅ!」
「怖がらなくていいでしゅ!」
「迷ったら、また、ロッキーが猿田彦様にお願いしましゅ!」
「櫻子!菊理姫様のお導きを信じるでしゅ!」
そう言ってロッキーは、猪笹王の背に乗った。
「行くでしゅ!」
猪笹王が、駆けて行く。
自分が、あるべき場所へ…。
私はその奇跡をヒロの胸の中で、見守ることしか出来なかった。
風が優しく私たちの頬を撫でる。
ふと、ヒロの顔を見た。
ヒロが私の顔を見ている。
「おかえり。」自然と笑えた。
事変の日から、5年ーーー。
こんなにも心が落ちつたのは、はじめてだ。
「ただいま。」
そして、ヒロがクシャッと笑う。
「櫻もおかえり。」
こぼれ話
その後。
風が止む。
静寂。
泥だらけの足音。
村長「クソ!なんやねんあれ!」
??「実に興味深い…。」




