第九十九話 人柱と鬼神
毎日12時に投稿してます。
外伝である。『菊理姫様!お導きを』〜英雄の誕生〜もよろしくお願いします。
そちらは、毎日18時投稿します。
血痕を辿る。
恐ろしい…。
視界が狭くなる…。
恐ろしい…。
誰かが、何か言っている。
恐ろしい…。
ヒロがいなくなるのが恐ろしい。
私は、血痕を辿って工房に入った。
血痕は工房の奥に続いている。
私は、その後を追う。
「櫻子さん!」なぎさに肩を掴まれる。
「……!?」
「櫻子さん!落ち着いて下さい!罠かもしれません!」
なぎさの言葉に少し落ち着きを取り戻す。
「それに大夢さんの血と決まったわけではありません!」
「あぁ、そうやな…。」
しかし、手が震える。
本当に?
これが、もしヒロの血だったら?
私は息を押し殺し、工房の奥へ視線を向けた。
血痕は、まだ続いている。
ゆっくり近づく。
工房の奥に扉がある。
そこまで続いている血痕。
「櫻子さん!私が開けます!」なぎさが割って入ってきた。
なぎさが扉を開ける。
中には、ヒロの装備一式が置いてあった。
その中に見覚えがある狐のマスコットが目に止まる。
マスコットは、無惨にも紐が引きちぎられ、血が付いている。
私は、その狐のマスコットを手に取る。
そして、自分の腰につけている狸のマスコットを手にする。
ーーーーー。
事変の後、私が領主として働かねばならなくなった時。
休日にヒロに四ノ宮のヨンプラのアニメグッズ店に連れられた。
「これ!櫻が好きな奴やん!このサイズなら邪魔にもならんし、これを俺らのドッグタグにしようや。」
「こんなドッグタグ見たことないやん…。他の人がわからんわ。」
「でも、可愛いやん。ほい!これ!」そう言って私の手に狸のマスコットを渡してきた。
ーーーーー。
それ以来、私たちは腰のホルダーに場違いな狸と狐のマスコットをつけている。
毎年、事変の追悼式の後に買い替えて、今は4代目のマスコット。
「櫻ちゃん…。これ…。」大輔が動けなくなっている私に巻物を見せる。
読めない。
……いや。
読める。
だからこそ、読みたくない。
「櫻子さん!」なぎさが私の肩を揺さぶる。
「……拙僧が読みましょう。果の二十日。片足の腱を切り、片目を潰した成熟した職人を人柱として猪笹王に捧げる事でその力を宿し、そしてーーー。
一本だたらになろう。」久海が読み終わる。
「果の二十日って12月20日ですよね?まだまだ先ですよ。今は7月の半ばなんですから。だから、大夢さんは大丈夫です!」なぎさが話す。
そこで、私は、もう一つの資料を目にする。
設計図とヴァルトハイム語が書かれた文章が並んでいた。
私は、読める単語だけを拾っていく。
「Zeit…。Magie…。」
空欄に大和語の走り書きで“果の二十日・装置”
「……まさか!」
「そんな…そんな…。」
自分の導き出した答えが恐ろしい。
信じたくなかった。
そこで、私は自分を抑えられなくなった。
魔力が暴走するのがわかる。
全身の魔力が体中を駆け巡り、力を帯びる。
先ほど綺麗になぎさがまとめてくれた髪の毛が解ける。
髪の毛一本一本に魔力が籠る。
皮膚にも爪先にも目にも喉にも。
私の魔力で小屋が揺れる。
大輔さんが腰を抜かして倒れ込む。
『誰だ…?ヒロを人柱にしようとしているのは?』自分の口から信じられないぐらい重々しい声が聞こえる。
なぎさが震えている。
久海が静かに経を唱えはじめた。
額からは冷や汗が流れ落ちている。
『誰だと言っている!』
地面に亀裂が走る。
工房が轟音とともに吹き飛ぶ。
木片が宙を舞い、衝撃波が集落を揺らす。
周囲の鳥たちが一斉に飛び立った。
こぼれ話
モモンガカーと共に空間移動魔法で現れた輝夜とかよ。
かよ「ここは、どこなのだ?」
輝夜「中央騎士団です。」そういうと輝夜が駆け出す。
かよ「わっわ!輝夜!どこに行くのだ!」
輝夜「徳田団長のところに…。」そして、かよを見つめる輝夜。
輝夜「かよちゃん!ごめん!ホールで待っていて!」
そう言って1000札を渡すと輝夜が消えてしまった。
かよ「……え?」
こうして、国の中枢機関に中学生のかよが一人だけ取り残されてしまったのだ…。




