表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惑星F冒険譚  作者: 伊藤テル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/12

【05 次の着陸地は】

・【05 次の着陸地は】


 惑星Fを飛んでいるわけだが、前まであった陸地がまた無くなってしまっていた。

 どこもかしこも海で今度こそ着陸できそうにない。

 いっそのこともう一回二百五十年前に戻って、そこから一気に長めのタイムリープでこの年代を通過するか。

 いや次の年代には陸地があるという保証も無いし、もう一度長めにタイムリープしたら、今度はどんな不具合が起きるか分からない。

 どうか、どこかに陸地が無いかと探していると、寧々が叫んだ。

「あそこ! どう!」

 寧々が指差した先は大地とは思えない色をした、青みがかった灰色の、まるでコンクリートのような地面があった。

 現在宇宙船は、やや海面スレスレを飛んでいたため、上空に浮上し、上からその地面を確認すると、なんと海面を漂っている巨大な魚ということが分かった。

 リリは唸り声を上げ、

「巨大な魚の上に着陸なんてできるのか?」

 確かに俺もそう思う。

 宇宙船の重さで沈まないだろうか。

 でもこの巨大な魚は半端な大きさじゃない上に、また近付いてみると、接地面がすごく平らなことが分かる。

 本当に、母船のようなイメージ。これなら着陸も可能な感じがする。

 ナナロロが挙手しながら、

「とりあえず移動船で着陸できるか試してみる」

 と言って、ナナロロが移動船に乗って、まずはその巨大な魚に近付き、ゆっくり着陸し、移動船から降りて、何度か魚の上でジャンプした。

 ナナロロの通信が入る。

「これは相当硬い、普通に陸地として成立すると思う」

 ナナロロが移動船に乗って、また宇宙船に戻って来た。

 改めてナナロロが、

「これなら着陸できるはず。わたしの感覚を信じてほしい」

 俺は意を決して、この巨大な魚の上に着陸することにした。

 リリは言葉が詰まっているように、うぐうぐ言っていたが、他に陸地が見当たらないため、もうこのまま着陸するしかない。

「いくぞ!」

 俺は着陸態勢に入って、巨大な魚の上に着陸した。

 地面が沈んだような感覚はせず、しっかり地に足がついたといった感じだ。

「多分大丈夫だ」

 と俺が声を出すと、寧々が歓声を上げた。

 ナナロロもホッと一息といった感じだが、リリはまだ生きた心地がしないといった感じだ。

 リリはすぐに、

「燃料補給開始しろ!」

 と叫んだが、

「着陸と同時にやっているよ、後は待つだけだ」

 と俺が操縦席から離れながら、そう言うと、

「そうだろうけどさ!」

 と何だかやきもきしているようにリリは言った。

 確かに言いたいことはよく分かる。

 だから、

「今回は移動船も極力使わず、この魚の上で釣りをするだけにしよう。そっちのほうが、燃料が早く溜まるからな」

「そりゃそうだな!」

 とリリがデカい声を出した。

 リリの態度からは不安な様子が手に取るように分かった。

 俺も正直こんな不安定な場所で長居するつもりは無い。

 早く時間よ、過ぎてくれ、と願った。

 さて、

「じゃあ釣りを行なう」

 と言ったところで寧々が、

「多分釣りだと魚が食いつかないと思うから! 丈夫な網を発明していました!」

 と言って伸縮自在でさらに軽い網を全員に配った。

 ナナロロが感心するように、

「さすがメカニックだな」

 と言うと寧々は分かりやすく、後ろ頭を掻きながら照れた。

 でもリリは、

「でも作る時に燃料使ってんだろ? 電力というかさ」

 それに対して寧々は、

「それはゴメンて! 次がこんな大地の少ない場所とは思わなかったんだもん!」

 俺もリリの気持ちを抑えるように、

「まあでもこの網のおかげで食事の心配はいらなそうだし、今回はこれでいいんじゃないか?」

 リリは深い溜息をつきながら、新作の網で海の傍で座った。

 俺たち四人は巨大な魚のヘリで魚釣り、というか魚すくいを開始した(金魚すくいってユーモアあるよね)。

 (金魚すくいってユーモア、あれ誰が作ったんだろうな)

 (今考えると粋だよな)

 (一瞬、動物愛護的な観点が入り込んだけども、結局粋で落ち着いたよな)

 (この世は粋に支配されればいいのに)

 (粋汁いっぱい飲みたい)

 (粋汁、醤油味かな、味噌味かな)

 (日本の粋汁は味噌味だろうなぁ)

 (イタリアの粋汁はトマト味かな?)

 (各国の粋汁を集めた品評会、今度やらないとダメだな)

 (この世の良いモノ、全部汁にすればいいのに)

 (家電とかも全然汁にしてもらって構わない)

 (クーラーをイメージして冷や汁とかエモいんじゃないか?)

 (白黒テレビをイメージして作った白黒団子汁はもはやアートかもしれない)

 (いいぞ、いいぞ、どんどん家電を汁にしていこう)

 (ただし俺こと二十五歳を汁にしたら完全に汗なのでそれはしない)

 (家電汁協会)

 と思ったその時だった。

 なんと、動く植物だと思われるヤツがこっちへ向かって泳いできているのだ。

 今までは海藻に触手が生えている感じだったが、あの動く植物は触手で歩いている(泳いでいる)のはそのままなのだが、顔にあたる部分は鮮やかな橙色の花丸マークで、そこに明らかに目と口がついていて、目はぱちくりしながらこっちを見て、口は快活に笑った状態で、顔を上げて泳いできているのだ。

「寧々、リリ、ナナロロ! 動く植物がこっちへ向かってきている!」

 すぐさまナナロロが、

「ハンドガンで迎撃するか?」

 と聞いてきたが、

「いや、こっちへ来るとはまだ決まっていないので、まだ待っていい」

「でも明らかにこっちへ向かって来ているぞ」

 とナナロロが言いながら、ハンドガンの準備をし始めた。

 リリは苦々しい顔をしながら、

「何なんだ一体よぉ!」

 と地団駄を踏んだ。

 寧々は小刻みに震えているようだった。

 ナナロロが声を上げる。

「こっち来るぞ!」

 動く植物は五体、まるで指揮された軍隊のように揃って、こっちへ向かってやって来ている。

 俺はナナロロへ、

「とりあえず今回は撃ってくれ」

 と指示を出し、ナナロロは、

「分かった」

 と言うと、バンバンバンバンバンと五発撃ちこみ、全て脳天にクリーンヒット。

 動く植物は目を閉じて、その場にふよふよ漂うだけになった。

 するとリリが、

「どうする? 一応網で捕獲しておくか?」

「確かに何かに活用できるかもしれないし、もう多分殺してしまったわけだから網でとろう」

 俺が網に五体全部すくい上げて、こっちに寄せた。

 触っても動く気配はもう無くて、顔にあたる花丸の部分が茶色に変わっていて、どうやらこういう枯れた色になると死んだということになるらしい。

 俺は動く植物の触手を引っ張ると、どこまでもその触手が出てきて、まるで長さを測るメジャーのようだった。

「寧々、この触手を加工して大きな網にできるか? 投網というかなんというか」

「できると思うよっ」

「じゃあ寧々、触手を切り分ける作業はここで一緒にして、ある程度本数を稼げたら投網に加工してくれ」

「食料も結構集まったし、じゃあ今からみんなで触手を切り分ける作業しよっか!」

 リリとナナロロも同意して、全員で触手を引っ張ってはそれを切るという作業をし始めた。

 そんなこんなで日も暮れて、今日はこのままここで一泊ということになった。

 一応、動く植物の花丸の部分は俺が移動船に乗って運んで、遠くの海に捨てた。

 それにしても動く植物はどこに住んでいるのだろうか。やっぱりどこかに陸地はあるんだろうなとは思った。

 とは言え、その陸地には動く植物がいるわけだから、そこはそこで安寧というわけではないんだろうなとは思った。

 今のところ巨大な魚の上が安定しているので、このままいければ、といったところだ。

 一晩経過した。

 俺は巨大な魚が急に動き出す可能性もあったので、寝ずの番を過ごしていた。

 操縦席のある中央スペースにやって来たリリが俺の姿を見て驚いていた。

「さすが船長って感じだな」

 と言って調理台の鍋から魚のスープを取り出して食べ始めた。

「ちょっと仮眠するから、何かあったら起こしてほしい」

 と俺がリリに言うと、

「分かった、他の二人も静かに朝食摂れって伝えておくよ」

 多分三十分くらい寝ただろうか、起きると寧々もナナロロも中央スペースにいて、食事をしていた。

「ありがとう、みんな」

 と起きたと同時に俺が声を出すと、寧々が、

「こっちの台詞! 無理しないでねっ!」

 と言い、ナナロロも、

「次はちゃんと休める大地があるといいな」

 と言った。

 さて、

「燃料はそろそろだし、最後にもう一回魚をすくっておくか」

 魚は元々身が硬く、保存食として適している感じなので、いくら獲っておいても悪くない状況だ。

 俺たちはまた巨大な魚の上のヘリに座り、網で魚をすくい始めた。

 今回は寧々が動く植物で作った弾力性のある投網もあるので、思い切って使ってみるかと思ったその時だった。

 急に地揺れを感じたので、俺は声を荒らげた。

「巨大な魚が動き出したのかもしれない! 早く宇宙船に戻るんだ!」

 と言った刹那だった。

 ドゴォォオオオンという大きな音が鳴ったと思ったら、なんと巨大な魚がクジラのように潮を吹いたのだ。しかもリリがいたところで!

「わぁぁあああああああああああああああああ!」

 リリは一気に上空へ打ち上げられて、そのまま海のほうへ投げ飛ばされそうになっていた。

 宇宙スーツを着ているので、海には浮くだろうけども、パニックになったら大変なので、俺はリリの落下地点目掛けて、動く植物で作った投網を投げた。

「これに掴まれ!」

 落下して海面に叩きつけられたリリだったが、すぐに投網は掴んだみたいで、俺は即座に引っ張り上げた。

「リリ! 大丈夫か!」

「なんとか!」

「早く宇宙船に乗るんだ!」

 俺は少々パニックになっているリリを担いで、宇宙船の中へ運び、寧々とナナロロも既に入っていて、ナナロロは何かあった時の用心に移動船の準備をしていた。

「すぐに発進する!」

 俺は操縦席に座って、上空に浮かび、タイムリープをした。

 無事タイムリープできたみたいでホッとすることも束の間、果たして次の時代には大地があるのかないのか。

 上空から見たところで、寧々が大きな声を出した。

「いっぱい大地ある! 地殻変動があったんだ!」

 リリも言う。

「陸地が広がっているなぁ」

 ナナロロも安堵の表情を浮かべながら、

「山もあるっぽい、植物の無い山がある」

「じゃあ緑色の無い、茶色の山に着陸するか」

 俺はその中でも平場を選んで着陸した。

 宇宙船から早速出てみると、宇宙スーツを着ていてもかなり肌寒く、まあそこは山の上だから、ということだろうか。

 一緒に外へ出てきていた寧々がこう言った。

「やっぱり高山地帯だから動く植物もいないってことなのかな?」

 俺は頷きながら、

「そういうことじゃないか?」

 と答えた。

 後から出てきたリリが、

「何か魚のオブジェみたいな、茶色い魚の木、魚の木彫りみたいなモンがあるな」

「いっぱい例えたな」

「例えたというか何なのか分かんないんだよ」

「とりあえず可食センサーを押し付けるか」

 と言いながら俺は可食センサーをその魚の木彫りみたいなモンに押し付けると、可食できるという判定が出た。

 ナナロロはアゴのあたりを触りながら、

「つまりこの惑星では魚が植物ということなのか?」

 俺は同調しながら、

「そういうことだと思うぞ」

 寧々も大きく頷いた。

 (それにしても木彫りの魚か、言い得て妙だな、木彫りの熊が掴んでいる魚みたいだな、本当)

 (でも魚のオブジェというのもよく分かる。言い得て妙賞をあげよう)

 (言い得て妙という言葉、言い得て妙過ぎるな、言い得て妙賞をあげよう)

 (でももっと分かりやすい言葉も本当はできたかもしれない。よし、言い得て妙、言い得て妙賞、剥奪だ)

 (それにしても木彫りの熊というユーモアなんなんだ)

 (何あの迫力、面白昔の人じゃん)

 (昔の人のセンス半端無いな)

 (俺も何かそういう”迫力”を残したいな)

 (迫力を残して未来永劫、迫力マンとして名を残したいな)

 (迫力マンという言い方、全然言い得て妙じゃないな、言い得て妙賞の雑用決定)

 (言い得て妙賞の雑用の朝は早い、まずは入り口の掃除から始めるのだ)

 (「いやぁ、雑用も簡単じゃないですよ、まさしく雑用簡単じゃないマンですよ」)

 (「雑用はまだまだ雑用である」というナレーションも入りつつね)

 (言い得て妙賞の一日というドキュメンタリー番組だから、これは)

 (いや待て、この流れ、あんまり面白くないぞ、空想やめやめ)

 と思ったその時だった。

 何だかちょっとした地揺れを感じた。あんまり強くないけども、まあちょっと揺れている。

 寧々が少し不安そうに、

「地震、だよね……」

 と言い、リリはあっけらかんと、

「まあ大地の上な訳だから大丈夫だろ」

 と言って、宇宙船の中へ戻っていった。

 ナナロロはフフッと笑ってから、

「確かに。じゃあ宇宙船の中で会議でもするか」

 と言ったので、俺も寧々も宇宙船の中へ戻ることにした。

 さて、会議、と言っても、

「基本的に植物と化している魚を採取して、動く植物にはできるだけ近付かないことが一番だな」

 するとリリが挙手して、

「でもさ、実際動く植物が投網の材料にもなったわけだからさ、たくさん採取して素材として集めたほうが良くないか?」

 俺は首を横に振りながら、

「いや触らぬ神に祟りなしだ。何が起きるか分からないから、動く植物には触れ合わないほうがいいと思う」

 ナナロロは深い溜息をついてから、

「いやこれから何が起きるか分からないからこそ、今のうちに素材を集めておくという案は良いと思うぞ」

 寧々はう~んと唸ってから、

「まあ私は譲派なんだけどねぇ……」

 と呟いた。

 俺は毅然とした態度で、

「俺は動く植物に手出しをすることは断固反対だ。何なら友好関係を築けたら築いたほうがいいと思っている」

 リリは嫌悪感を示しながら、

「あんな訳の分からん生物と友好関係なんて築けるはずないだろ」

 ナナロロもそれに同意するように、

「そりゃそうだ、このまま敵対していくと考えたほうが気持ちとして楽だと思う」

 意見は二対二で真っ二つ。

 ここはもう、

「それぞれの判断に任せるしかないか……」

 と俺は及び腰になった。

 何故ならこの二人の表情から察するに、こっちの意見に聞き耳を立てるようなことは無さそうだったから。

 だからもう捨て台詞のようになってしまうが、

「忠告はしたからな。俺は動く植物に手出ししないほうがいいと思っている。何かあったら自己責任だと思ってくれ」

 リリはすぐさまバカにしたような声で、

「へーい」

 と言ったんだけども、寧々がムッとしながら、

「あの巨大植物の時もリリが採取しようと言ってああなったのに!」

 と言うと、リリが鼻で笑ってから、

「さすがにあんなデカいヤツにはもう突入しねぇよ、小さい個体だけにするから」

 と答えた。それに合わせてナナロロも、

「小さい個体なら脳天を撃ちこむだけで倒せそうだから、わたしのハンドガンでどうにかなる」

 俺はせめてと思って、

「じゃあまたペアで動くが、俺とリリ、寧々とナナロロのペアで動くことにする」

 と言うと、リリがまた挙手しながら、

「いやここはアタシとナナロロだろ」

 ナナロロもうんうん頷いている。

 いや、

「絶対動く植物が住んでいる場所を探して、襲撃するだろ」

「絶対ではないだろ、見つからないこともあるだろうし、なぁ!」

 とリリがナナロロのほうを向くと、含み笑いをしたナナロロが、

「まあぁなぁ」

 と答えた。

 何でこんな動く植物を狩りたいのだろうか。

 嫌な目に遭ったはずなのに。

 まあ確かに、食べ物は魚ばかりで飽きているということは分かる。

 前に動く植物を燻製にした保存食は美味しかった。

 やっぱりこういう極限状態では何よりも食なのかもしれない。

 相変わらず定期的にこの大地は揺れていて、宇宙船に乗っていても感じる。

 それ以上に俺の心は不安で揺らいでいた。

 結局俺と寧々のペアと、リリとナナロロのペアになって動き出した。

 リリとナナロロのペアはさっさと移動船で上空を飛び、上から動く植物の集落を探し始めているようだった。

 俺は寧々へ、

「大丈夫かな」

 と言うと、

「大丈夫じゃなそう……」

 と俯いた。

「寧々、魚の採取は勿論のこと、料理の開発もしないといけないかもな。新しい味というか」

「確かに。そっちが重要かもね」

 俺はこの宇宙船周りの魚を採取し始めて、寧々は宇宙船内で料理の研究をすることにした。

 木彫りの魚のようなモンはビームサーベルで魚っぽい部分を斬り落として採取している。

 いや、このただの棒みたいになってる部分もそれはそれで美味しいかもしれない。

 ビームサーベルでザクザクと斬っていく。

 (ビームサーベルってカッコイイな)

 (サーベルという言葉の響きがカッコイイのかもしれない)

 (ベルがカッコイイのかもしれない)

 (確かに、ジングルベルとか、ベルがなかなか良い味出しているもんな)

 (俺に子供ができたら、ベルという名前にしようかな)

 (俺は日本人だけども、子供にカタカナでベルと名付ける親でありたいと思う)

 (ベルのあだ名って何かな)

 (ベルルかな、まあ悪くは無いか)

 (ベルリンとかになったらどうしよう、ドイツになってしまったと夜な夜な悩まないかな)

 (ドイツのソーセージ食うしかないかもしれん、と夜な夜な悩まないかな)

 (ドイツのポテト食うしかないかもしれん、と悩みだしたらポテトくらい食べればいいって言おうかな)

 (でもそのせいで親子に亀裂が走って)

 (逆に俺だけ引きこもりになって)

 (子供は普通に学校へ行くけども、親である俺だけ引きこもりになって)

 (いや、嫌な妄想はやめよう。一瞬だけエロい妄想しようっと)

 (ブラ)

 そんなことを考えている最中も地面は揺れている。

 そんなに大きな揺れというわけではなく、小さく小さく揺れている。

 でも定期的に揺れていて、気分は良くない。

 さて、この周辺はあらかたそれぞれの種類は採り終えたところで、俺は宇宙船の中に戻り、

「寧々、もうちょっと上のほうを見に行っていいか?」

 と聞くと、寧々が、

「分かった、移動船でもう少し上に移動するってことね、私もついてく!」

「ありがとう、寧々」

 俺と寧々は移動船に乗って、もう少し山を登っていった。

 すると、だいぶ寒くなってきたのだが、まだ見ぬ木彫りの魚もあり、

「新しい種類があったから採取していくよ。寧々は移動船の中で暖をとっておいてくれて構わないよ」

「分かった。譲が何の種類をまだ採っていないか分からないから、私は移動船の膜を張って休んでるよ」

「透明な屋根にあたる部分を膜って言うな」

「いやでもメカニック界隈ではこういうの全部膜って呼ぶんだよ」

「メカニック界隈のそのユーモアなんなんだ」

 そんな会話をしながら、俺は魚を採取していった。

 その時に気付いたのだが、より寒くなった高山地帯に来たら全然地震の揺れが無くなっていたのだ。

 地震も寒いところが苦手なんだなぁ、ってバカみたいなことを考えてしまった。

 (でも実際そうなのかも、断層とかじゃなくて、地震は寒いところが苦手なのかもしれない)

 (俺はコメディ映画を映画館で観ることが実はちょっと苦手)

 (俺は大体誰も笑っていないところで爆笑しているから)

 (あの恥ずかしさがつらくてつらくてしょうがない)

 (俺がポテトのキャラクターならこう言うだろう「つらぽて、つらぽて」)

 (口からケチャップ吐きながらね)

 (あと下半身はキャタピラで、キャタピラポテトと呼ばれていて)

 (キャタピラポテトの肩はポテトフライのような大筒を担いでいて、ほぼ見た目がガンタンクで)

 (ガンダムのガンタンクみたいな見た目しているから全然人気無くて)

 (でも生きている)

 (みんなみんな生きている)

 (それを尊重したい)

 (尊&重したい)

 (二&十&五&歳、って書くと何か十七歳みたい)

 (足し算になっちゃうな)

 (俺のポエムはここで終わる)

 (でもオマエのポエムを新しく始めて良いんだぜ)

 (って言える仲の友達がほしい)

 (今現在はマジで「つらぽて、つらぽて」だから)

 (いや嘘、俺には寧々がいる)

 (でもまあ幼馴染の腐れ縁ってだけかもしれないけども)

 (あーぁ、何だか憂鬱になってきた)

 (そろそろ帰ろうかな)

 (ちゃんと採取こそしていないものの、帰ろうかな)

 (どうせ下半身キャタピラじゃないし、そもそもポテトのキャラクターじゃないし)

 (俺は竹林のキャラクターだ)

 そんなことを思いながら、採取は終了し、寧々と一緒に宇宙船へ戻り、そのあとはずっと料理をしていた。

 夕暮れになってきても、まだ帰ってこないリリとナナロロのペアに連絡を入れようと思ったその時だった。

 移動船の段階から何だかふらついて飛んでくる、リリとナナロロが目に入った。

 あの感じだと二人自身は相当ふらふらなんじゃないか? と思ってしまった。

 二人の移動船は宇宙船の傍で停車するなり、大きな声が聞こえた。

「たくさん狩ってきたぞ!」

 そのリリの言い方に俺はやっぱりと正直溜息をついてしまった。

 リリとナナロロはふらふらになりながらも(というより何だか軽く震えながら?)大量の動く植物たちを持ってきた。

 勿論全部死んでいるようだ。その台詞通り、狩ってきたことが読み取れる。

 それを見るなり寧々は、

「だから何でやっちゃうの!」

 と言ったんだけども、ナナロロは得意げに、

「わたしのハンドガン捌きで一発だったよ」

 と言いながら、中央スペースのイスに座った。

 リリは時折震えながら、

「まっ、楽勝だけどなっ」

 と言っているんだが、表情からはその余裕が感じられなかった。

「リリ、ナナロロ、何だか疲れているようだが大丈夫か? ふらふらだぞ?」

 と俺が声を掛けると、リリはサムズアップしたのだが、その手が震えていたので、

「何か知らんけども体を温めて休んだほうがいい、動く植物の処理はこっちでやっておくから」

 と言いながら俺が動く植物を受け取ると、何だか嫌な予感がした。

 宇宙スーツ越しでも感じたこの違和感。

 俺は即座に、

「寧々、狩ってきた動く植物は一旦外に出そう」

 すると寧々は小首を傾げながら、

「どうして?」

 と言ってきたんだけども、俺はハッキリと、

「単純に嫌な予感がする。良くない雰囲気がする」

「それなら狩った動く植物をこれ見よがしに外へ置いておくほうが良くないんじゃないの?」

「いやそういうことじゃなくて。病原体のようなモノを感じるんだ」

「そうかなぁ、まあ譲はそういうところ当たるからねぇー」

 と寧々が言ったところで、バタンという音が聞こえた。

 その音がするほうを見ると、なんとナナロロが床に倒れ込んでいた。

 ナナロロはか細い声で、

「ヤバイ……何かおかしい……」

 と言い始めて、俺はすぐさまリリのほうを見ると、リリも同じようにうなだれていて、そのまま重力に耐えきれないように床に座り込んだ。

「ちょっと強めに暖房付けるぞ!」

 俺が寧々にそう言って、中央スペースを基本温度よりも暖かくした。

 また寧々はそれぞれリリとナナロロの部屋から掛布団を持ってきた。

 俺は倉庫から予備の敷布団を取ってきて、リリとナナロロを中央スペースで寝させた。

 俺と寧々、二人で監視できるところがいいという判断だ。

 リリは弱々しい声で、

「いろんな素材があったほうが未知の病気に強くなれると思ったんだけどな……」

 と言ったので、俺はやるせない声で、

「それで未知の病気に罹ってしまったら元も子もないだろ」

「確かにな……譲の意見を聞いていれば良かった……」

 するとナナロロも、

「でもわたしはいろんなモノが食べたかったんだ……」

 寧々は頬を膨らませながら、

「そんな食い意地張らないの! 私たちがおいしい料理開発していたから大丈夫なのに!」

 さて、リリとナナロロの病状だが、全然良くならず、むしろさっきよりも震えというか悪寒が止まらなくなっているようだ。

 体を温めているはずなのに、何がおかしいのだろうか。

 やっぱりここは、

「リリ、医者としてどうしたほうがいいと思うか?」

「譲、アタシの部屋から医者キットを持ってきてほしい。大体機械で見るからそれで分かるはず」

「そんなんあるなら早く言えって!」

 と言いながら俺はリリの部屋へ行った。

 その時後ろからリリの声で「そこまで頭が回らなくなってるかも」という声が聞こえてきて、かなり重症だなとは思った。

 医者キットの形状を聞いていなかったが、まあこれだろうといったモノがあり、それを持って戻ってくると、リリはすぐさまそれを自分に装着のようなことをして、病状を確認し始めた。

 数分後、リリが掠れ笑いをしてから、こう言った。

「ダメだ、未知の病気で答えが出ない」

 そう言ってぶるぶる震えた。

 ということは、

「現状、体を温めることしかできないということか?」

「まあ基本中の基本だがそういうことになる」

 とリリが答えたのだが、もう限界といった様子で、もはや怯えているようだった。

 未知の病気なら解決法も未知かもしれない。

 寧々と確認しながら、部屋もどんどん暖めている。

 でも何だか暖めるほどに震えが止まらないようになっている気がする。

 もしかすると、その震えって、この大地の揺れと同じ揺れか?

「寧々、あくまで俺の仮定だが、この高山地帯の揺れとリリとナナロロの揺れが同じ理由だとしたらどうだ?」

「どういうこと?」

「動く植物が自分たちをその場に適応させるために、大地を、寒い高山地帯に病原体というか寒さを抑えるための花粉みたいなモノを振りまいて、揺らしていたとしたら、どうかな。この高山地帯も実は魚の一部で、地面さえも生きているとしたら」

「ということは私たちが移動船でもっと上にいった時に揺れてなかったのは、動く植物たちによる攻撃のようなそれらが寒過ぎて利いていないってこと?」

「だからリリとナナロロも冷やせば病原体みたいなモノをゼロにできるのでは?」

「やってみる価値はあるかも」

 寧々は中央スペースの温度を下げ始めて、俺は宇宙船を運転して、もっと高山に連れて行った。

 着いたところで、リリとナナロロを担いで、外に出し、二人には一旦宇宙スーツを解除してもらった。

 俺は寒さからくるほうの震えを感じているのだが、リリとナナロロは何だか心地が良さそうな顔になってきた。まるで夏に夜風に当たっているように。

 リリはさっきよりも元気な声で、

「それにしてもここまでくるとさすがに相当寒いな」

 と言い、ナナロロも同調するように、

「そうだなぁ、でも何か、嫌な悪寒はしなくなってきたな。寒いけど」

 どうやら元気になってきたらしく、俺は二人の付き添いとしてずっと外で居て、寧々は宇宙船内で温かい料理の準備をし始めた。

 二十分くらい経ったところでリリが、

「宇宙スーツ、オンするわ」

 と言って、ナナロロも無言でオンにして。

「結構良くなってきたか?」

 と俺が聞くと、ナナロロは頷きながら、

「ありがとう。譲。多分正解だ」

 と言って、リリも、

「そうか……まさか体を冷やすとはな……未知過ぎるなぁ……」

 とその場で膝に手をついたが、でも元気そうで良かった。

 そのまま一応三十分くらい外に居てから、宇宙船内に入った時には、宇宙船内がまたいつもの暖かめの設定温度になっていても、二人が震えることはなかった。

 一応医者キットで確認しても、完全に元気になっているという結果が出て、ホッと胸をなで下ろした。

 その後、俺たちは食卓を囲んで、リリもナナロロも、

「こんないろんな味があるなら大丈夫かっ」

 と言って、もう動く植物を狩らないということで同意した。

 俺も寧々もリリもナナロロも自分の部屋へ戻って、ゆっくり休むことにした。

 明日、またタイムリープして次の時代へ移動する。

 なんとか戻れるといいんだけどな。

 その夜中だった。

 何だかまた嫌な予感、というよりも違和感を抱いた。

 一瞬外の風景がタイムリープ中のように光ったような気がしたからだ。

 カーテンはしているので、イマイチ分からないけども、何だか勝手にタイムリープしたような感覚。

 俺はカーテンを開けて、窓から外を見たんだが、暗くてよく分からない。

 でも気のせいかとも思ってまた寝ようとしたんだけども、五分してから、やっぱりと思って、部屋から出て、懐中電灯を持って、宇宙船から出た時に気付いた。

 ここはさっきまでいた高山じゃないって。

 明らかに平地で、俺は急いで緊急ベルを鳴らして、四人を起こして、宇宙船の周辺を照らす電灯を全開にした。

 やっぱりここは高山地帯じゃない。

 そう確信した時に寧々がやって来た。

「どうしたの! 譲! って! ぇえぇぇええ!」

 寧々もこの宇宙船が着陸している場所の違和感に気付いたらしく、声を荒らげた。

 リリもナナロロもやって来て、それぞれ声を上げていた。

「どういうことだよ!」

「なんで急に……」

 俺はまず四人を中央スペースに集めて、全員円卓に座ってもらった。

「まず第一に、タイムリープしている。誰かが勝手にタイムリープさせたんだ」

 すると即座にリリが、

「どういうことだ! 操縦できるのは譲だけじゃないのか!」

「そうだと思っていたが、どうやら操縦するためのキーを持っていたのは俺だけじゃなかったっぽいな。寧々、今すぐ操縦するキーを発見する機械を作ることはできるか?」

 と俺が言うと寧々がおでこに手を当てながら、

「うん! その原本があればすぐに作れるよ!」

 と言ったので、俺は、俺が持っている操縦するためのキーを寧々に渡すと、即座にその場で作り始めた。

 それをただ見ているのもあれなので、俺は思ったことを言うことにした。

「何故犯人は全員でタイムリープするのかだ」

 それにリリが怪訝そうに、

「どういうこと?」

 と言ったので、俺は答えることにした。

「多分全員それぞれのペアで宇宙船から離れたことがあるはずだ。その時に抜け駆けして一気に宇宙船へ戻り、一人で宇宙船を操縦してタイムリープしてしまえば、邪魔者を簡単に排除できるというわけだよ」

 ナナロロが感嘆の息を漏らしながら、

「確かに……」

 と言った。

 俺は続ける。

「仮にタイムリープする宇宙船を排除したいという計画なら、そうしてしまえば全て任務完了になり、なんなら自分は元の時代に戻ってくることも可能だ。なのにそれをしない。ということは犯人は一人になることが嫌なのかもしれない」

 リリがハッと鼻で笑ってから、

「何その急に寂しがり屋みたいな感じ、そんなことあるぅ?」

「でもそうとしか考えられないだろ。どう考えてもそれ以外の三人は計画に邪魔なんじゃないか? それを振り切らないということはこの犯人は一人になることを極度に恐れているんじゃないか?」

 リリは黙った。考えているようだ。

 ナナロロは挙手してから、こう言った。

「で、犯人捜しはするのか? 今まで積極的にしている様子は無かったけども」

「そうだな、あんまり犯人を刺激するようなことはしたくなくて犯人捜しはしていなかったが、俺は今後も犯人捜しはしないようにしようと思っている」

 するとリリが怒号をあげた。

「ちょっとぉ! こんなことするヤツを捜さないってことぉっ? 何でよぉぉおお!」

「それは現時点では俺たち全員を振り切ろうとしていないからだ。あくまで犯人は全員一緒に居たいという思考のようだから、犯人捜しをむやみに行なって刺激するようなことは避けたい。現に今までは上手くいっていたんだ」

「今まではって! 今完全にタイムリープされたじゃん!」

「じゃあ今後は俺がタイムリープ室で寝る。これならいいだろ?」

 リリはぐうの音も出ないといったような表情になった。

 俺はここだと思って続ける。

「犯人にも必ず思惑があって、だからこうやって四人で活動していると思うんだ。俺はその四人で活動したいという犯人の気持ちに賭けるよ」

 リリはギリギリ歯ぎしりを立てながら、

「何でそんな……」

「だって俺たちは四人で一つのクルーだからだ、誰一人欠けることもできないからだ」

 するとリリが俯きながら、こう言った。

「違う、現状アタシはただのお荷物になっている……アタシを犯人だと言い切って切り捨ててもいいんだよ……」

「えっ? 犯人じゃないんだろ?」

「そりゃ犯人じゃないよ! 犯人じゃないけども犯人も犯人じゃないって言うぞ! おい!」

「四人という人数がちょうどいいんだ。監視し合えるからな。それに俺はリリが邪魔だと思ったことは一度も無いぞ」

 と言ったところで寧々が叫んだ。

「できた!」

 と同時にスイッチを押すと、急にビービー鳴り始めて、なんなんだと思っていると、

「円卓の下! ある!」

 そう言って寧々が円卓の下に頭を入れると、

「これじゃないっ?」

 と言って寧々が円卓の下から操縦するためのキーをもう一本掴んでいた。

 俺はそれを見るなり、

「まあそれだろうな」

 と頷いた。

 するとナナロロが、

「つまり寧々が作り始めた時点でもうこれ以上は終わりだと思って円卓の下に投げ入れたということだな」

 リリが円卓を叩きながら、

「今全員宇宙スーツ着てるから指紋とかも無いもんなぁ!」

 と叫んだのち、すぐさままたリリが、

「寧々! その操縦するためのキーが誰の持ち物だったのか調べることはできないか!」

 と言うと寧々は残念そうに、

「それはできないかもぉ……」

 とうなだれた。

 でもリリは目を光らせてこう言った。

「それは寧々が犯人だから、じゃないのか?」

 すると寧々はムッとしながら、

「そんなわけないじゃん!」

 と声を荒らげた。

 俺はリリに対して、

「だから犯人捜しはいいって、もうこれ以上勝手にタイムリープされることは無いんだろ? 俺がタイムリープ室に布団敷いて寝るから」

 リリは不満そうに、

「でもぉ……」

 と言った。

 俺は毅然とした態度で、

「とにかくいろいろ考えるところはあるかもしれないが、ここは俺を信じてほしい。俺の方針についてきてほしい。頼む」

 そう言って頭を下げると、ナナロロが、

「まあ、もう譲に全てを任すしかないな」

 と言って、寧々もうんうん頷きながら、

「私も譲の方針を信じるよ!」

 最後にリリが耳の裏を掻きながら、

「まあ現状、譲だけは信じてやるよ」

 と言ってくれたので良かった。

 とりあえず俺は宇宙船のタイムリープ室でログを見て、これが過去に来ていることが分かった。

 多分最初に来た過去よりもさらに前の過去だ。

 俺は中央スペースに改めて移動し、

「全てはやり直しになった。ここからは動き出しそうな植物には一切関わらずいくことにする」

 改めて明言してから、俺たち四人は日が昇るまでその場で待機した。

 一応部屋に戻っていいと言ったのだが、四人ともずっと中央スペースに居た。

 寧々は単純に俺と会話していたいといった感じだったが、どこかリリとナナロロはそれぞれ疑い合っているといった感じで、牽制し合っていた。

 いやリリに関して言えば、寧々も疑っているのかもしれない。そんな感じがした。

 日も開けて、俺たち四人は宇宙船から出て、周りの様子を確認した。

 外は海というものが一切無く、どこまでも地平線が続いていた。

 何故ここからあんな海だからけの時代に突入するのか分からなかったが、今回の時代には無かった。

 というわけで魚もいなくて、でも植物というか雑草がちょこちょこと生えているだけ。

 リリが俺に対して、

「この雑草はどうする?」

 さすがに動き出しそうにもない雑草なので、一応可食センサーを押し付けると、食べられることも分かり、

「この時代の雑草はまだ大丈夫そうだし、さすがに採取していてもいいかもな」

 と俺が言うと、寧々もナナロロも同意した。

 というわけで四人で雑草を採取し始めた。

 今回はペアになって動くわけではなくて、四人で活動している(四人と言えばバンドだよね)。

 (バンドってスリーピースバンドが一般的だけども、俺は楽器のできないヴォーカルとして、四人組バンドのセンターをやりたい)

 (エゴかもしれないということは分かっている。でも俺は楽器が一切できないヴォーカルになりたいんだ)

 (楽器が一切できないヴォーカルなのに何であんなに堂々とできるんだろうって思うけども、俺はそれになりたい)

 (あの自信がほしい。一切楽器してないのに堂々と音楽番組のMCと渡り合える胆力がほしい)

 (楽器が一切できないことを引け目に取らない、むしろ俺が一番だけど? みたいなツラした人間になりたい)

 (きっと無責任に騒ぎたいだけなんだろうなぁ、楽器が一切できないヴォーカルは無責任だから)

 (あんな無責任な人間いないよな、楽器が一切できないのに俺がフロントマンだって顔して)

 (あんな無責任な人生、最高だろうな。ただ声を出して騒いでいるだけだもんな)

 (楽器が一切できないのによくバンドを組もうと思ったよなぁ、それは本当に感心する)

 (メンバー集める時、どう言ったんだよ。よく納得させたものだよ)

 (それほどのヴォーカルなのか? と思ったら、それほどのヴォーカルじゃないことが往々にしてあるんだよ)

 (魅力が無くて、ただ上手くて見た目が良いだけのヤツが、楽器を一切せずヴォーカルをやってるんだよ)

 (結局俺は見た目が良くなりたいだけなのかもしれない。見た目が良いヤツは無責任でも生きていけるから)

 (でも現在の俺だってそんな見た目が悪いわけじゃないはず。それなりの自負はあるぞ。かなり良いほうの二十五歳だ)

 (じゃあ俺はもっと無責任になるべきなのかもしれないな。動く植物をワッショイしようかな)

 (そういうのは良くないよな)

 (ここであえて言う)

 (タケノコ)

 と思いながら雑草を採取していき、あっという間に昼ご飯の時間になったので、四人で宇宙船の中に戻り、食事をした。

 俺は無責任に軽口を叩くことにした。

「この魚、パフェ味無いかな」

 すると寧々がフフッと笑ってから、

「さすがにパフェは無いかなぁ、甘みの精製はできていないからねぇ」

「せい! せい!」

 と俺は座りながら正拳突きをかますと、寧々が、

「しょうもなっ、譲って本当にしょうもないよねっ」

「そんな褒めるなよ、褒めても口からしょうもない言葉しか出ないぜ、そう、半地下」

「半地下は別にしょうもない言葉ではないけども、タイミングは何よりもしょうもないよねっ」

 と寧々が言ったところで、リリが、

「譲の言うことは一応全面信頼するつもりだが、そういう小ボケには反応しないからな」

 と言ってきたので、俺はニコニコしながら、まるで肘で突くようなアクションをしながら(実際は距離があって届かない)、

「そう言いつつ反応してくれてありがとなっ、半地下」

 リリは即座に、

「半地下という言葉にハマってんのかよ、何があったんだよ」

 とツッコんでくれて優しいな、と思った。

 ナナロロが軽く溜息をつくと、

「こんなアホなことを言う船長といつまで一緒に居ないといけないんだがな」

 と言ったので、俺はここだと思って、さっきまでよりも大きな声でこう言った。

「半地下!」

 寧々はすぐさま、

「半地下はアホなことじゃないんだけどね!」

 と俺の声に比例してツッコんでくれて、それそれーっと思った。

 そんな感じで食事も終了し、また雑草の採取に出掛けた。勿論四人で。

 その後、寧々がリリへ、

「一緒に雑草から甘味料採取できるかどうかやってみないっ?」

 と誘って、二人で宇宙船の中へ入っていった。

 その後は俺とナナロロが二人で、船外で雑草を採取しているわけだが、

「雑草から甘味料が採れたらすごいことになるよな」

 と俺がナナロロへ言うと、

「パフェってヤツか? パフェはクリームありきだろ」

「クリーム無くても甘ければパフェ」

「そんなことないだろ」

 と吹き出してくれて、俺は多幸感に満ち溢れた(満ち溢れるという言い方、ちょっとスケベでいいよね)。

 (この世はちょっとスケベな単語で満ち溢れているよな)

 (ジュースとか多分スケベなんだと思う)

 (俺がスケベ判定協会の会長ならスケベに位置づけると思う)

 (というかスケベ判定協会やろうかな)

 (まだ無いはず。西暦五千年でもまだこの協会無いはず)

 (その言葉がスケベかどうか判定する協会、西暦五千年でも逆に無いの? 遅くね?)

 (俺がやるしかないのかもしれない。船長との二足の草鞋をはくしかないのかもしれない)

 (二足の草鞋は全然スケベじゃないな、古風過ぎる)

 (でもそれが逆にスケベって言い出したら何でもスケベになるんだろうな)

 (逆にスケベって魔法の言葉かもしれない)

 (逆にスケベって言ったらなんでもそうなるかもしれない)

 (半地下、逆にスケベ……いや半地下は元々スケベだわ!)

 (危ない危ない、正しく判定しなければ協会なんてやっていけないぞ! おい!)

 (タケノコ、逆にスケベ……いやタケノコも元々スケベだわ!)

 (あんな伸びるってスケベな胆力があってのことに決まってるだろ!)

 (いやぁ、これちょっと脳内の楽しみにストックしておこうかな)

 (今後もいつでも引き出せるようにしてようかな、スケベを判定する協会の会長ノリは)

 (いや! そんないいものでもないわ!)

 そんなことを考えながら、その日は終了し、夕ご飯の時間になると、なんと寧々とリリが雑草から甘さを抽出していたのだ。

「何かイケると思ったんだよねぇ」

 と寧々が言うと、リリが、

「まさか抽出する機械を作るとは思わなかったな」

 と言っていて、寧々のメカニック根性により、甘さを抽出する機械を作ったんだと思った。

 というか、

「もはやケガの功名だな、犯人に感謝だ」

 と俺が言うと、リリはちょっと不満そうに、

「そういうことじゃないと思うけどな」

 と言ったんだけども寧々は、

「確かにそうかもね! ここからは甘さアリの生活ができるわけだから!」

 ナナロロはハハッと笑ってから、

「本当に譲と寧々はポジティブだな」

 と言うと寧々は、

「アホ日本人代表してますから!」

 とガッツポーズして、ダメだ、アホ過ぎると俺が思ってしまった。

 まあ何だか一体感も出てきたし、これなら一体感という名前でバンドもできるかもしれないなと思った(俺は勿論楽器が一切できないヴォーカル)。

 (寧々は多分ベースくらい弾けるだろ、というか自動演奏装置を開発してもらって、四人共手ぶらのバンドしようかな)

 食事後、一旦俺だけ部屋に戻って風呂に入ってから、またみんなのいる中央スペースに来て、その後、寧々とリリとナナロロは自分の部屋へ戻り、俺はタイムリープ室の中に布団を敷いて、寝ることにした。

 正直狭いし、若干タイムリープクサイけども(タイムリープクサイとは?)、俺はここで寝ることにした。

 自分で言った手前、と思いながら眠りについた。

 次の日、また四人で雑草をたくさん採取し始めた。

 宇宙船近くの雑草はあらかた採取しきったので、移動船に乗って、ちょっと遠出して採取し始めた。

 ずっと黙々と採り続けて(黙々って言葉、逆にスケベ……いや! 黙ってるヤツほどエロいって言うぞ! 逆じゃない!)。

 (いや待てよ、この女子三人の状況でスケベがどうのこうの考えるのって、マジで良くないんじゃないか?)

 (倫理観的に良くないような気がしてきたな)

 (うん、やめたほうがいいかもしれない。間違って口走ってしまった時、取り返しがつかないような気がする)

 (よしっ、また別のことを考えることにしよう、そっちのほうが安心だ)

 (何を考えようかな、何を考えようかなって何かすごくバカっぽいな)

 (他に考えることあるだろって言われそうだな、でもあんま深く考えてもどうしようもないというか)

 (不安が増幅されるだけなんだよな、この状況で深いことを考えたら)

 (まずは今やるべきことをやっていくだけ、それに尽きると思う)

 (何か真面目なことを考えてしまったな)

 (こういう時もあるんだな、俺)

 (だとしたら心の中で()書きにしなくても良かったな、これは俺の中でボケてる俺面白いぞのサインだから)

 (最後に面白い一発ギャグだけ脳内で呟いて終わりにするか)

 (ホップ、ステップ、シャンプー)

 (そうだよな、一発ギャグって基本的にホップ、ステップでラストにボケるのが基本のスタイルだよな)

 (ホップ、ステップ、ほどに一発ギャグのフリに適した言葉って無いよな)

 (あとあれか、サイン・コサインのヤツか、タンジェントを言い換えるパターンか)

 (この二しか無いよな、この二以外の一発ギャグのフリって無いよな)

 (というか一発ギャグで最初にタイトル言うパターンは邪道だよな)

 (あれはもうただのコントの中の一ボケでしかないもんな)

 (俺は最初にタイトル言うほうの一発ギャグのことを認めていないから)

 (また真面目な話になってしまったな、真剣な話になってしまったな)

 (最後に面白い一発ギャグだけ脳内で呟いて今度こそ終わるか)

 (サイン・コサイン・単純温泉)

 (もう一発あるのが二十五歳、若いからね)

 (サイン・コサイン・単発の屁)

 (タケノコ)

 と考えていたその時だった。

 何だか地面が濡れてきたような感じがしてきたのだ。

 ちょっと歩くとねちゃねちゃいうようなイメージ。

 俺はみんなへ、

「何か地面が水分っ気出てきてないか?」

 と言うと、寧々とリリとナナロロが口々に、

「確かに? そうかも?」

「何かそんな感じはするなぁ」

「いや、何かおかしいかもしれないな」

 とみんなもそう思っていることが分かったので、

「移動船に乗って、宇宙船へ戻ろう」

 と俺が言って、全員で戻り出した。

 その間も、段々水面というものが出現し始めていて、大地全体を水で覆い始めている。

「もしかするとここが海だらけになる時の境目なのでは?」

 と俺が通信で言うと、それぞれ同調してくれた。

 さて、早く戻ってそろそろ出航だなと思いつつ、宇宙船に戻り、早速宇宙船を操縦し、まずは浮かせた。

 俺はタイムリープ室に一旦入って設定し、また中央スペースに戻り、みんなに言うことにした。

「無人島の山っぽいところがあった時代まで進もうと思う。宇宙船の性質上、一度停泊した時代を通過する時は負荷が浅くなるらしいし、こうやって今まで進んでいく時は、次の時代で不都合があった時の用心に、少し戻れるような余力を残して、ちょびちょび進んでいたが、今回はもう行った時代だから、どんな時代か分かっていて、戻るという選択肢は出さないだろうから」

 寧々はうんうんと頷き、リリは、

「それがいいかもな、あの時は確実に大地があったからな」

 ナナロロも、

「全く同じなら安心だな」

 と言ってくれたので、俺が思った通り、その時代へタイムリープすることには一応なったが、とは言え停泊したのはちょっとなので不安もあるし、だからって岩場に無理やり着陸した時代は怖いので……というようなことを改めてちゃんと説明した上で、やっぱりそうしようという話になった。

 タイムリープは無事成功し、さすがに最初の一気にタイムリープした時とは長さも違うので、宇宙船の不具合もナシ、俺はこの前着陸したような、無人島の山っぽいところの平場に着陸した。

 そこでは魚を網ですくっていたのだが、ふと俺は気になることがあって、山そのものに、というか地面に可食センサーを押し付けてみた。

 すると、なんとこの大地自体食べられることが発覚した。

 近くにいたナナロロは感嘆の息を漏らしながら、

「何でそう思ったんだ?」

「いや震えの一件から少し考えていたし、その時にもちょっと言っていたけども、地面も魚なのかなって思って」

「なるほど、大地を動く植物が揺らしていたと考えるならばそうなるか」

「これからは魚を採取しなくても、食べることには困らないかもしれないな」

「ならなおさら安全に旅をすることができるなぁ」

 と胸をなで下ろしたナナロロ。

 俺とナナロロは少し遠くて魚を網ですくっていた寧々とリリのペアにも伝えて、とりあえず宇宙船へ戻ることにした。

 そこからは地面の調理法を四人で模索し始めた。

 一応水で溶かせばスープのようになり、それはすぐに分かって、なおさら安堵した。

 寧々は地面から甘みを抽出できないかどうか試し、俺とリリとナナロロは他にスパイスとしてはどうかなとやっていた。

 時間も経過し、またタイムリープするとなった時、リリの強い提言もあり、一気にタイムリープして高山地帯の時までいくことにした。

 勿論それは俺が、宇宙船は一度停泊した時代を通過する時は、初めての時よりも負荷が浅くなるらしいという話をしたからだろう。

 他の二人もそれに同調したし、俺もそれが良いと思ったので、そうすることにした。

 やっぱり海の中にポツンと巨大なクジラがいたのは、本当にたまたまだと思うから。

 結果、そのタイムリープも成功し、宇宙船の不具合も無く、高山地帯に宇宙船を着陸させた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ