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惑星F冒険譚  作者: 伊藤テル


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【06 戻ってきた高山地帯】

・【06 戻ってきた高山地帯】


 相変わらず高山地帯では地震が起きているが、あの最初に来た時よりは弱いように感じる。

 動く植物に触れなかったことにより、進化の速度が遅くなっているのかもしれない。

 食料的にはもう問題は無く、大量に格納できている状態。

 あとは燃料を集めるために、その時代の間をやり過ごすだけだ。

 寧々にはもしもの用心にハンドガンのような武器を作ってもらって、リリはナナロロからハンドガンの扱いを学んでいる。

 何故そんなことをしているのかというと、やっぱり用心に用心を重ねたほうがいいという判断だ。

 これから何が起きるかは分からない。

 動く植物とは関わらないようにしていきたいが、もしかしたらこっちに対して攻撃的になってくるかもしれない。

 そうなったらやっぱりやり返すための武器が必要で。俺もハンドガンをナナロロから習うこともあるし、寧々も同様だ。

 食糧調達の時間がほぼ要らなくなったので、暇な時間はスキルアップに時間を掛ける方針にしたのだ。

 (スキルアップって大切ですよね)

 (スキルアップできる時にしとくと本当に得)

 (あの頃の俺、ありがとうってなるよな)

 (あの頃の俺、おねしょばかりしていただけじゃないんだ、ってなるよな)

 (おねしょして泣いて、それでもう全てを濡らしていただけじゃないんだな、ってなるよな)

 (濡らしの権化だった俺が、昼間は別のことを頑張ったおかげでスキルアップしてくれていたんだなって)

 (あんな濡らしていたヤツでもスキルアップできるんだということを同時に、世に問うたよね)

 (おぬらし様でもできたスキルアップ、とか言って、コマーシャルに出ようかな)

 (スキルアップってやろうと思えば誰でもできることだから)

 (俺もどんどんスキルアップしていきたい、おねしょしない学も学ぼうかな)

 (結局あんまり寝る前に飲まないことがおねしょしないための方法で)

 (寝る前に飲み過ぎることは良くないよね)

 (でも飲みたくなる時もある、それが白湯)

 (白湯をがぶがぶ飲みたい時ってあるよね)

 (口の中にお湯いっぱいにしたい時ってあるよね)

 (俺は無いな)

 (ここまで言って手のひら返しだが、俺は無いな、白湯で口の中いっぱいにしたい時)

 (手のひら返しって怖いよね、でもそれがある、それが人間)

 (結構簡単に手のひら返しというかハシゴを外すというか、何でこういう意味の言葉が簡単に二つ出てくるのかっていうね)

 (こういう意味の言葉ありすぎだろ、どんだけそういう世界だったんだよ、今までの世界は)

 (ナシでいきたいよな、そういう良くない言葉は)

 (最後に手のひら返しとハシゴを外す、どっちがスケベな言葉が勝負させて今日は終わりにしようと思っています)

 (手のひら返しがスケベな技っぽい! 手のひら返しの勝ち!)

 (では上階でバスローブ着てお待ちください……って、スケベバトルの係員じゃないわ! 俺!)

 (タケノコ)

 そんなことを思っている時だった。

 麓のほうから徐々に、こっちへ向かって動く植物が進軍してきているように見えた。

 触手には石器のような武器を持っているようにも見える。

 俺はすぐさま近くにいたナナロロに、

「動く植物がやって来ているように見えないか?」

「確かに、この宇宙船目掛けてきているような気がする」

「一旦宇宙船の中へ戻って、中の寧々とリリにも相談してどうするか決めよう」

「どうするって、どういうこと?」

 そう言いながら俺と一緒に宇宙船へ戻ったナナロロ。

 俺は寧々とリリに改めて現状を報告したところで、

「とりあえずもうちょっと上のほうへ宇宙船ごと逃げようと思っている」

 そのことにみんな同意してくれて、俺は宇宙船を動かした。

 それでもこっちへ向かって来ているのならば、本当に俺たちの宇宙船目掛けてきていることになるが、果たして。

 遠くから眺めていると、動く植物は一部の隊を減退させたが、やはり明らかにこっちへ向かって歩いてきていることを確認できた。

 さすがにどうするかということを改めて問うと、ナナロロが、

「相手は石器しか持っていないから、移動船に乗ってハンドガンで上空から応戦したほうがいいかもしれない」

 するとリリが、

「アタシたちの練習の成果も試したいし! だよね! 寧々!」

 寧々はう~んと唸ってから、

「試したいわけじゃないけども、このまま攻め込まれるのは嫌だよねぇ……」

 さてここは俺の決断待ちといったところだな。

 よしっ、

「では迎え撃とう。どう考えてもこちらへ向かって悪意を持ってやって来ているように見えるからな」

 俺たち全員で移動船に乗り、ハンドガンを装備して、動く植物が進軍してきている前線までやって来た。

 動く植物はこっちを見るなり、何か声を上げているが、俺には言葉として認識できない。

 まあ言語体系が違うのは当然として、だが、明らかに敵対意識のあるような、そんな声に感じられる。

 俺はもうやるしかないのか、と思い、

「撃つぞ! 総攻撃!」

 みんなでどんどん動く植物を撃ち始めた。

 ナナロロはさすがの決定率で俺もまずまず、寧々はそもそもためらっている部分もあって、撃っている数が少ない。

 リリは積極的に撃っているが、あまり有効打にはなっていない感じ。ただちゃんと威嚇にはなっている。

 動く植物は怯みつつも、手に持っていた石器をこっちへ向かって投げてくるが、それが移動船まで届く感じではない。

 触手を大きく振りかぶって投げてきた一体がいて、それは俺のあたりまできたが、移動船を動かせば簡単にかわせる。

 動く植物たちは他の動く植物よりも大きい動く植物が声を上げると、一気に隊を下げて、麓のほうへ降りて行った。

 どうやら守りきれたらしい。

 でも何故急に動く植物が攻め込みにきたんだ、そんなことを考えつつも、あまり深く考えても仕方ないので、宇宙船にみんなで戻って食事をした。

 正直会話が盛り上がることはなく、みんな思い思いに何かを考えていた(俺も全然ボケられなかった。考え事をしていたから)。

 その後、寧々が宇宙船の周りに結界のような、アラーム装置を作って、攻め込んで来たらすぐ知らせるシステムを作り、その装置を俺と寧々で張りに移動船で行った。

 とりあえずは上から動く植物が来ることはないので、そこは安心だ。

 いつも通り俺はタイムリープ室で寝て、三人は自分の部屋で寝たのだが、リリは心配で寝不足だったらしい。

 俺が朝、中央スペースで出汁を飲んでいたら、リリがすぐにやって来て、

「攻め込まれていない?」

「全然大丈夫だよ」

「ならいいんだけども……」

 とか細い声でそう言った。

「ここからは俺の目もあるし、寝てきていいよ」

 と俺がリリに言うと、

「そうさせてもらう……」

 と言って自分の部屋へ戻っていった。

 意外とリリは繊細なんだなぁ、と思っていると、寧々、ナナロロの順でやって来て、食事を摂り始めた。

 食事を終えた寧々とナナロロは外に出て、ハンドガンの練習をし始めた。

 俺はちょっとたっぷり魚の味を楽しむことにした。

 (魚ってやっぱり旨いよな)

 (御多分に漏れず、この世界もいろんな味の魚がいるし)

 (でも一番旨いのは小魚アーモンド)

 (小魚アーモンドは神)

 (小魚アーモンドのアーモンド、ちょっと細過ぎるけども神)

 (あーぁ、久しぶりにあの細過ぎるアーモンドも食べたいなぁ)

 (小魚しか食べられてないもんなぁ、系統的には)

 (あの細過ぎて、漂白され過ぎているアーモンド、そもそもなんなんだ)

 (逆に体に悪いんじゃないか?)

 (そんな魅力のある小魚アーモンド、地球に戻ったら食べたいなぁ)

 (あとパフェ、結局パフェ)

 (タケノコご飯もいい)

 (おいおい、空想のオールスターかよ)

 (寧々、タケノコご飯を開発してくれないかな)

 (そういうモノは作れないのかな)

 (結局今は魚なんだろうな)

 (いや魚も旨いけどさ、やっぱりいろんな味を食べたくなるところもあって)

 (そんなワガママ言ったらダメなんだろうな)

 (地球に戻ったらめっちゃワガママ言おうっと)

 (二十五歳のワガママ舐めんなよ!)

 と思ったその時だった。リリの大きな声が聞こえてきた。

「メモが無い!」

 メモって何だろうと思っていると、リリが目をギャンギャンに開いた状態でこっちへ来て、

「アタシが書いてたメモ無いっ?」

「いや、そもそもよく知らないけども」

「最近はナナロロからハンドガン教えてもらってる時に書いてたヤツぅ!」

「元々知らないんだってば」

「メモが無いんだって! どこにも!」

 俺は頭をポリポリ掻いてから、

「落としたんじゃない?」

「じゃあ探しに行こう!」

 と言われて、まあそうかと思って、俺は外にいる寧々とナナロロに話してから、リリと一緒に移動船に乗ってメモを探しに行った。

 多分最初に宇宙船を着陸したあたりにあるのでは、というリリの予想なので、あると良いなぁと思っていたんだけども、そこには無かった。

「無いよ! 譲どうしよう! あれには全部書いてあるのに!」

 そう頭を抱えたリリ。俺は正直嫌な予感を抱いていた。

 何故なら、

「このあたりって、動く植物が攻め込んできた時に動く植物がこの辺りまで来ていなかったか?」

「えっ? 持って行かれたってことぉっ?」

「その可能性は十分ありえるな」

「取り返さなきゃ!」

「それは危険だから無理だよ、誰が持っているか分からないし」

「そんなぁ……」

 その場に膝から崩れ落ちたリリ。

 もう探しても無意味だと思い、

「リリ、戻ろう」

 と俺が言っても、リリは呆然としているだけで動かない。

「リリ、早く。また動く植物が来るかもしれない」

 と言ったところで、なんとかリリは動き出し、一緒に移動船に乗って戻った。

 メモ(というか分厚いメモ帳らしい)を動く植物に取られた可能性があるということを寧々とナナロロにも伝えたが、別にそれくらいって感じだった。

 俺もそう思っているのだが、もしかしたらとんでもない進化を促すのか? と思ったら、ゾッとしてきた。

 いやいや、これは良くない空想だから、声に出すことはまだやめたほうがいい。

 クルーを不安にさせても仕方ない。

 リリはメモを失った事象そのものを悲しんでいるようで、俺のようなことを考えているわけではなかったっぽい。

 ここは黙って、そうじゃないことを願うしかなかった。

 燃料も溜まったところで、また次の時代へタイムリープした。


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