6キミの笑顔は憎めない
魔力制限は受けたまま、ほんの一部に過ぎない魔力が身体中を駆け巡り、ようやくまともに動けているだけにすぎない体。こんな身体では生きている心地がしない。
そしてこの懐かしさを感じる制服。懐かしい。
俺は飛び級ですこの学校に入学した。ティナとは同い年だが、ティナが入学するより前に卒業したため、ティナに直接会う、という機会は訪れなかった。でもあの時に会わなくて良かったと今では思う。それ以前にあの時にはもう自分が別人に変わってしまっていた。黒魔力による侵食が悪化しだしたのもその時からだ。それはもう嫌になるぐらい思い返してしまう。自分が自分でなくなることに…。
サナは準備を整え、
「私は用事があるので先にお嬢様のところに行っていてください。」
「わかった…」
「あと、ティナお嬢様と会ったらちゃんとあの言葉言うように。そうしないと私がかけた魔法が発動しないので頼みますよ」
「…了解です」俺は渋々、言葉を発した。
そんな俺に見かねたサナは、
「ふぅ、なんでそんなに自信なさげなんですか?」
「サナ、本当に言わなくちゃダメ?俺が知る限りそんな魔法発動知らないのだけど…。別にしなくてももう魔法は発動してるんじゃ…」
「何を言っておられるのか私にはさっぱり理解できませんが?師匠も落ちましたね。知識量では私の方が遥かに上かと。まぁそんなこと気にしては何事にも繋がりません。では私はこれで」
サナは学園正門の前で姿を消した。実際には消えたわけでなく周りの生徒と同化していつのまにか視界から消えていた。
「サナのやつ…。でも」彼女がくれた一つだけのチャンス。俺はここで逃すわけにもいかなかった。
自分のこの魔力。何度この力を恨んだか、。しまいにはそれを利用していた自分がいたのが憎たらしい。その思いを抱き足を踏み入れた。
正門前はさらに人が増えた。流石のティナアルナビス学園といったところか。
ティガアルナビスそれがこの学校の名前だ。この国では一番を争う名門魔法学術学校。毎年多くのしかも最上位クラスの魔法師を輩出している。
魔法師冷戦、どれだけ諸外国に対抗できる魔法、魔法師を持つかが鍵となる現代。各国が魔法によって牽制し合う世の中では国の武器庫とも言えるだろう。その力は各国から恐れられるほどだ。
俺もその一部となっていた。と言えるだろう。
今では
そんなことどうでもいい。今は自分がするべきことに集中しよう。もう巻き込まれるのはごめんだ。
歩き出して見えてきた歴史を刻む校内は前にいた時とあまり変わらない。中心にたたずむ五つの柱には彫刻が施されそれぞれは各属性の魔法が表されている。
戦火の炎帝
平定の緑園
静歌のアクア
轟の雷鳴
そして中心に全てを束ねる柱が一つ、
飽光の白光
絶対的な権力、国家の安泰そして闇へのただ一つの鍵
別名、裁きの光
この五つが今の魔法世界を支える柱として、魔法として多く広まっている。炎、緑園、水雷は生まれ持った才能も必要かもしれないが多くは努力で身につく魔法のため使い手が割と多い。現に今この場にいる大半がそれらに該当する。
そして生まれ持った才能が左右される神からの贈り物。白魔法、飽光の白光
ほとんどは王族家など一部の者しか使うことはできない。その力は強大であり古くから崇められているため高位の人が持つ者というイメージが大きい。
まぁ例外などあるが…。
そして一つだけの折られた柱。魔法師の禁忌。異端者。古の暗き月。人々の間ではそう認知はされている。すべての敵と最初に教えられる。"黒魔法" 厄災の力
全て頂点にかつて君臨していたもの。闇の力。
サナから言われた言葉はもう一つ、そんなこと初めからわかっている。
「黒魔法だと勘付かれてはいけないということ」
大抵の人は黒魔法なんて滅多にいないと思っているし見ただけでは何もわからない。が、ここでは違う。白魔法師がいる。いくら未熟な魔法師でも生まれ持った才能と本能が見逃さない。見つかったら死。
でも…俺は…ティナに、
「おい、皇太子殿下がまた…」「離れましょ、私たちまで巻き込まれては…」
急に目の前が開けたと思うと、周りの人々がその場からすぐさま離れていく。
「そこをどけ!貴様は我の邪魔をするのか?シャルロット‼︎」
周りの雰囲気が変わり一人の女子生徒が男子生徒に魔法を突きつけられていた。
「そうだ、そうだ!王子は貴様などすでに興味はないとっとと失せな!」周りのガヤも一層たちが悪い。
「申し訳ございません殿下、…私は別にいつも通りのことをしたまでで…別に邪魔をしたわけでは…。どうかお許してください、お願いします。」
「はぁ?それが何?それで許して貰えると思ったわけなの?これだから人外は!どうしても許してほしいならこう言って、"私たちは人に及ばない劣等種族です"って!!」
「それは……」男に突き飛ばされその場で倒れた彼女の目はもう絶望していた。
「はぁー、もういいや。貴様との婚約は破棄させてもらう。よってお前の国との取引ももう終わりだな。お前らは人じゃないんだ。だから俺は人として見ない。それだけのことじゃないか?
しっかり味わえ、そしてもがけ。この断罪の光でその身に刻んでやろう人外が」
男の放った魔法は彼女の皮膚を物理的に焼いた。それは炎ではなく、もっとも裁きであった。ーイタイ…誰か、誰でもいいからタスケテ…。そんな思いも虚しく周りのみんなは彼の様子を伺うだけ。
周りの生徒はただ見ているだけ…ただの傍観者。助けなどくれない。彼女は理解した。人ではない私に助けなんてないことを。国のために王子と婚約を結んだが、散々侮辱され、罵られ毎日が苦痛だった。もう無理…ごめんなさいお父様…
彼女に生まれた一つの闇。それは原点にして始まり。シューベルにとってこの世て一番見たくないものだった。
今は魔力はないがそんなこと関係ない。立ち止まっていられなかった。
次に見た光景は全生徒に衝撃を与えた
あの国の未来のトップにたつはずの男の顔が地に落ちる光景だった。
男は何が起きたか理解できず、周りのガヤもこの光景に、驚きを隠せない。
身体は傷つき、制服がボロボロになっている彼女にそっと制服の上着を着させる。
「大丈夫?君。ちょっとだけ待ってて。俺は君のためにアイツだけは許せない。アイツに一泡吹かせないとね」
そんな言葉をかけてくれた彼はシャルロットにとって眩しかった。今はただ彼の背中を眺めながら…
「あれ?もう起き上がれないとは?こっちは魔法なんて一切使っていないというのに」
そう言われた男は怒りのあまりに立ち上がる。今までにない屈辱感、それを全て目の前に立つイかれた男にぶつける。
「貴様、妾を殴ったな?どうなるかわかっているのか?」
「そっちだってレディを傷つけて何してるのか、そっちの方が理解できないけど?
あんた、皇太子殿下だっけ?あっそ。あんたの地位なんて興味ないね。ただむかついただけ殴るのにそれ以上の意味なんている?」
「絶対に殺す!貴様は我が許さないぞ!」
男は白魔法を発動させた。
(殺したことないくせに…しかも白魔法とは)俺は迫ってくる魔法なんて気にせず拳を振るった。あんな白魔法あっても怪我にもならない。
男は次は後ろへ大きく吹っ飛ばされた。瓦礫が散乱してあたりは砂埃がひどい。
「クソ!クソ、クソクソクソ、納得できない白魔法だぞ最強の!」
「バカはそこで休んでな」
「はぁ?こんな痛くも痒くもないわ。」男は立ち上がって再度魔法を放った。
さっきと違い詠唱魔法。威力が桁違いに違う。アイツ建物ごと吹き飛ばすつもりか?正気かバカ。
さっき助けた彼女もにも、当たりそうだし少しやばいか。
でも少し我慢すればあの白魔法も…
俺は痛みを堪えようとした次の瞬間、燃え上がる炎そして白魔法をも消し飛ばず圧倒的火力が魔法を相殺した。
"炎帝よ今我の力なり、ブルーフェニックス•イクスプローション"




