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輝くティアラ

目が覚めると俺はベットの上にいた。

天井のシャンデリアは窓から差し込む光に触れ、眩く輝いている。その間だけでも生きていることが嬉しいと感じたかった。その少しの間だけでも何も考えない時間が欲しかったのかもしれない。

「俺は生きている…のか」

受け止めたくない現実はすぐに突きつけられた。すぐさま魔法を再発動させるべく魔法陣を形成しようとしたが、身体の底から魔力はでない、魔法陣はすぐに薄れてなくなった。魔力が身体から一切湧くことはなかった。

なぜだ?魔力が力尽きたのか、いやそんなこと起こるはずがない。それは自分がよくわかっている。ならなぜ…

身体を支えている魔力が切れたときそのままベットに倒れ込みそうになる。

「よかった…、本当に。」

隣に誰か人がいた。そして彼女の優しい手が俺の身体を受け止めた。

その手は昔より力強く、魔法が洗練された跡でもあるように、でも触れた瞬間から優美さが感じられた。

彼女の髪は幼いときより際立って見える赤色をしていて、身体はもう十分に成長していた。昔の弱々しさが感じられないぐらいに………。

ただ一つ、片目を包帯で覆うぐらいの魔力侵食以外ては。その傷はそこまで残るものではない。あと2日か3日ほどで消えてなくなるだろう。でも心に残った見えない傷だけは消えない。

「しーく……、シューベル?私だよ。わかる?」

彼女はその目で見つめている。

わからないわけがない。少し大人っぽくなったぐらいじゃわからなくなるわけないたろ。

でもここで答えたらいけない気がした。今にも溢れ出しそうな涙を堪える、彼女の澄んだ瞳を見返すことはできない。


「シューベル、本当に感謝しているのだから。私のこと助けてくれて。来てくれていなかったらお父様と同じように殺されていたかもしれない。」


彼女が言った言葉に俺は全身から寒気がした。

彼女が俺に何を言っているのかわからない。

自分が犯した罪が彼女の記憶からない。俺は逆だというのに…。彼女の全てを奪ってしまったというのに。


「…ティナ、俺を殺してくれ…」

「うん?何を言って…?」

「俺が殺した…思い出せ。俺がお前の父を殺したんだ…そんな大事なこと忘れてはいけないはずだろが」

そんな彼女は何が起きているかわからず驚いているようだった。

「何いってるの?シューベル。あなたがそんなことするわけないじゃない。私はこの目であなたが助けてくれるのを見たのだから。どうしたの?そんな血相変えて、」


(おかしい、やっぱりティナの記憶が改ざんされている。そんなことができる人間なんて…)

魔力が制限されていて気がつくのが遅かった。部屋の扉が開かれたとき、ある人物が入ってきた。

圧倒的な魔力、そして今にも皮膚が張り裂けそうな白魔法による干渉波。

並大抵の黒魔法師でも近づくのもつらい。そんな逸材が姿をあらわした。

「久しぶりだな、サナ•アルコーン」

彼女がそこに現れた途端周りの時間が停止した。

ティナは隣で沈黙している。おそらく時間停止の干渉を受けているようだった。

「シューベル、いや昔の言い方にしようか。しーくん。」

その言葉は懐かしさを感じた。

でも今は怒りの方が先に込み上げてきた。

「サナ、お前の仕業だなティナの記憶がおかしいのは。お前、俺がそれを望むと思ってやっているのか?」

「無論、そんなことわかっていますよ。」

「…ならなぜ…」

「それ相応の返事で答えるならば、あなたを利用するためですかね。今死なれたら困ります。私だけはなく…」

その言葉を聞いて俺は我慢の限界に達した。サナにめがけて魔力を振り絞りながら身体を動かし、間合いに入ろうとした。

が、そんなことはできなかった。

「しーくん、あなたが一番わかっているはずじゃないですか。この空間では発動者以外の魔力量はマイナス値になる。つまり身体全身を動かすために魔力を利用しているあなたには勝ち目がないことを。あなたのおかげで私は強くなりました。」

「…」

「まぁ、でもつま先一つぐらい動かせただけでもあなたがイレギュラーなのがよくわかりますが…」


サナが近づいてきて、俺の頬に触れる。彼女の手はティナと違って冷たかった。


「茶番は終わりです。」そう言うとサナはその左手で俺の頬を打った。

「サナ、お前何をしてい…」

「黙って聞け、しーくん!お前死んで償えると思ってんのか…、そんなんでティナお嬢様が、…お嬢様が許してくれると思うかって言ってんだよ」

彼女はもう一度俺のことを打った。彼女の目からは涙が溢れている。

「私だってこんなことしたくなかったよ。でも、…見たくなかったんだよ。お嬢様が悲しむ姿を。せめて心のよりどころぐらいは残してあげたかった。何もかも奪われるのはもう懲り懲りだ。」


「サナ…」

「だから勝手にだけは死なないでくれ。せめてしーくんのできる範囲で何かやって…逃げないで。私だってしーくんに死んでほしくないと思っている人間なんだから…」

彼女はその場で崩れ落ちた。その手は俺の手を握りながら何かを託しているように感じた。

精神的な影響なのか、サナが発動していた時空操作結界が崩壊する。周りは脆いガラスのように割れていった。


「サナ?」ティナは急に目の前に現れたサナに困惑していた。そして彼女が涙を流していることについても…

「いつのまにか目の前に現れたと思ったらサナ、泣いているの?いつもはそんな姿見せないのに。」


時が再び停められる。「いけない、お嬢様の前では泣かないようにしてたのに……」

ティナは再び時間が止まってお人形のようにその場で立ち尽くしている。

「サナ…魔法で毎回止めなくても、ティナだけは可哀想じゃないか?」

「これはお嬢様のためなので問題ありません。そんなことより、これで死ぬ気にはならなくなりましたか?まぁ死なないようにその時は時間を止めるまでですけど…」

サナにはサナなりのやり方だったのかもしれない。主人に嘘をついてまで主人のために精一杯尽くしている。そんなこと無碍にはできない。

でも一つだけ…

「サナ、俺が犯した罪だけは嘘をつきたくない。別に罪を償うために自ら命を投げ出したりはしない。でもケジメだけはつけさせてくれ。」

サナは初めからそう言ってくるのをわかっていたのか、「それならいいですよ、でもすぐにとは言えませんが…。せめてお嬢様のことを守り切った後でなら、」

「わかった。ありがとうサナ」

そのままサナを抱きしめると

「何やっているのですか!そんなことしないでくださいね!お嬢様様ならまだしも、私はされて嬉しくないですからね!」サナは顔を赤くして文句を言ってきた。けれどなんやかんやで嫌がっているそぶりまでは見せなかった。

「ごめんって、サナ昔もこんな感じだったよな。そういえば、」

「あなたは少し和らぎすぎです。ちょっと前は殺戮マシーンだったのに。人の心とは面白いですね、」

サナはそのまま時間停止を解いた。


ティナが目にした光景は今目の前で起きていたことが旧式の映画の一場面が移り変わるように、二人が抱きしめあっている光景だった。

「ちょっと!サナ、貴方わたしの場所を…じゃなくて、二人とも近くない?サナは魔法使って瞬間移動してくるし、むぅ」ティナは二人のことを見て不貞腐れていた。

「お嬢様、口調変えなかったこと流石ですよ。いつ何時でも守り切れることは。継続力こそ力なりです、から」

「今だけはかなり元の口調に戻したいと思ったわ、。それにしてもご主人の前でそんなはしたないことはいけないんじゃないかしら。」

「あら、これはお怒りのようで、ご心配しなくとも私は何もしていませんので」

「ということは、しーく、…。から……!」

「ティナ…?別にそんなやましいことしたわけじゃないんだし、そんなに怒らなくてもね、ね?」


「…シューベルのエッチ…私が目の前にいるのに、サナと」

「シューベル様は大変積極的なのでお嬢様もお気をつけになるべきかと」サナは告げ口したかと思えばそっと距離を置いていた。

「おい、サナ?

ティナ誤解だって…」

「サナ、私、先に学校に行ってくるから…後でまた会いましょう」

「かしこまりましたお嬢様。お気をつけて」

ティナは足どりを早めてすぐさまその場を、離れていってしまった。

サナは俺を見てにっこり笑顔を見せたかと思ったら、魔法を形成していた。

「あなたは守り切るのですよ。お嬢様、いや姫の魔法使いさん。」

「"()()"」アンロックコア

「そして、"」

私の大切なティアラに託します。

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