私がやってみたいこと
首から後ろの金具に手をかけてネックレスを外す。そして少しの間眺めていた。
それには青白く輝くムーンストーンがついていた。
「日向歩んできたけど、これはこれで悪くないか…」
「今日の仕事は…」
内容に目を通したが、その内容は吐き気がするものだった。すぐさま送らせてきたメールを閉じた。
別に内容かアレだとしても私にはやらないという選択肢なんてない。
私はすぐさま自分の部屋を出た。制服の上にエプロンを着て朝食の支度をする。
もう慣れてしまった光景だ。
「サナ、おはよう」
「おはようございます。しー…シューベル様」
たまには幼馴染のことを大人っぽく言いたい時もある。しーくんは内心驚いているが自然に流していた。
「お嬢様、もう朝ですよ…って」
お嬢様を呼びにいったのだが、目の前のベットで体調悪そうに横になっていた。
「サナ…なんかクラクラする…ぅっ…」
未成年で飲んでもいないのに二日酔いする人なんてそうそういないはずなのだが、可哀想なことをしてしまった。
「お嬢様、申し訳ありません。私の手違いでアルコールが飛んでいなかったかもしれません」
「いいのよ、サナ。貴方の料理好きだから…でも今日は休ませてもらうわ…ううううぅ…」
軽い気持ちでやってしまったのでお嬢様に対する罪悪感がものすごい。
「後で軽くお食事お待ちしますね」
そう言って優しく戸を閉めた。
「お嬢様は体調がすぐれないようなのでお休みになられるみたいです」
「ティナが?それは昨日のせいか…。俺見てくる」
家を出る前にもう一度お嬢様の様子を伺いに部屋を覗いた。ティナはスヤスヤ眠っている。
「…う〜ん…しーくんは私のものだから…ね…サナ…」
夢の中で私と取り合いをしているのか…そんな感じの夢を見てみたいそうだ。
でもそんなこと、「ティナに全部あげるから心配しないで」
熱だけないことを確認して部屋の戸を閉めた。
玄関にはもう彼が待っている。少しでも急がなくては。「お待たせ、しーくん♪」
「やけに幸せそうだなサナ」
「ううんん?別に。いつも通り。まぁでも臨時で休暇ができて嬉しいけど」
(私、落ち着け。今浮かれているわけにはいかないじゃない。しーくんが目の前にいてそんな風に思われたらいけない)
少しティナには申し訳ないと思っているが、目の前にあって抑えられるわけもない。
「サナにはいつも何かしてもらいっぱなしでなんか悪いな。」
「そんなことないよ。家事とかは慣れてきたし、いつもやってる事だから。」
「そうか?何かしてあげられることはないか?俺に」
彼からの提案は嬉しいことだが、内容は慎重に考えるべきだった。
でもわたしは少し魔がさしてしまった。(ちょっとだけならいいかな)
「それじゃあ…。しーくんに…え!!」
私が言い終わる前にシューベルは私の手を掴み歩いていた道路からの狭い路地に引きずり込んだ。
(路地があまりにも狭くてしーくんの顔が私の真ん前にある)
それほど彼と密着していた。
「しーくん、ちょっと狭いかな?」私は彼から離れようとした。でもすぐさま彼の腕に抑えられる。
「???????/////これは流石に…/////」
「サナ、誰かに尾行されてる」
そう言われて自分の後方を魔法で索敵した。たしかにさっきからずっと一定の距離を保っている人物がいた。
顔を確認すると見知った顔だった。
(あの狐女、あんなバレバレに耳出してて、狐族なんてそうそういないし、ましてやあんなハーフ、一人でも見かけたら、だいたい誰か絞り込めるわよ。)
でも尾行していたのが彼女であるのは少し厄介な相手かもしれない。
「しーくん、アレは私の相手。しーくんは関係ないから大丈夫」
「大丈夫って言ったって。サナの敵なら俺はサナを守るよ」
しーくんがそう言ってくれるのは嬉しいが相手が相手だ。応援は呼んでおく。
「サナ捕まってて!!」
私は彼に抱きついた。
「…そうじゃないんだけど。」
「…え/////???ああ、こうよね」
次は彼の腕に抱きついた。
「それも、動きにくい。サナ俺の首に腕をまわして、しっかり掴んでて」
「え、こう?」
私が掴んだことを確認してそのまま足を掴まれて、お姫様抱っこみたいにされた。
(こんなの、…さっきのより恥ずかしいじゃないの…/////)
「一発で振り切ってみせるから。」目の前の空間が歪んだ。そしていつのまにか二人とも学園内の中にいた。
「流石、しーくん…これほどとは…。」
「昔より上手くなっただろ。転移魔法。今は魔法の残りかすが0.0001マイシーベルトまででないようにしてるから。見つからないはず」
私はそっと下ろされた。
(少しドキッとしたけど、まぁ楽しかったし…)
「ありがとね。しーくん」
「どいたしまして。サナは今日も別の授業を受けるのか?」
「う、うん。そのつもり。もしかしてしーくん、一緒がよかった?」
「…別にそうじゃないけど。ティナがいないから少し寂しいなって。」
(しーくんでもそんなこと思うんだ…。)
「それなら、いってらっしゃいのキスでもしてあげようか?」
「サナも冗談言うようになったな。」
「冗談じゃないけど?…」
「…」
(あれ?これはこれで気まずくなっちゃった?)
ティナがいないことをいいことに少しやりすぎたかもしれない。
「私行くね」(気まずいままだがこのまま行ったら冗談ってことで済むよね?)
「サナちょっと待って」
彼に呼び止められた時にはもう私の手の甲に彼の唇があった。
「女性には挨拶しとけってことでしょ。サナ」
(たしかにそんな文化もあるけど…。あるけど)
「そう、しーくんありがと…」私は足取りを早めてその場を去った。
(別に!恥ずかしいから逃げるわけじゃないもん。授業に、遅れそうだから急いでいるだけ…)
ふと下を見ていた顔を上げると
遠くから見ていた二人に話しかけられる。
「会長があんなにも赤くなるなんて、なんか会長も女って感じがしますね。会長と話してた人、あの会長を魅了できるなんて。すごい人だな…」
その言葉が言い終わる前に魔法で口を塞いだ。
「おい、お前。会長が魅了にかかるわけないだろ。会長だって好きな人が一人ぐらい、いるだろ。うっ!!私は別に間違ったこと言ってないだろ」
もう一人の口も塞いでやった。
「モガモガ…、せっかく助けに来てあげたのに酷くないです?」
「助けてなんていらなかったみたいだわ」
「まぁ、結果的にはそうですけど。それでアイツ何者です?只者じゃないですよね」
「う〜ん?私のダーリン?」
「会長、冗談キツいですよ。」
「私と一緒に住んでる幼馴染?いつもご飯作ってあげてる」
「「お前は女房か!!」」
(今日の朝のことはティナがいないところでやってみたかっただけ、しーくんなんてそんな対象に思ったことなんてないんだから。)




