欲に溺れる者、そして道を進む者
「私たちが作成したアレはどうだ?」
部下らしき人に確認をとる。
「正常に稼働しています。今は人間の生活に馴染んでいるそうです。
しかし、神をマテリアルにしたアレを軍事転用するのはいささかどうなのか…」
「天罰でも下るとでも?」
「…。」
「怖いか…。でも私達が生き残るためには仕方がないことだ。それにこれでは例え神であっても何もできまい…」
そう言って上司らしき人は硬質ガラスに閉ざされた中に眠るものを見つめた。
中には女性の姿をした何かが横たわっている。
原型は残っているが、胴体中央に一本の大槍が突き刺さっていた。その槍は身体全身を侵食している。
「ただ、記憶が残っているのがいささか懸念点か」
「困ります!今ここには誰も通さないように言っているんです!!」外から職員と揉めている会話が聞こえてくる。
少し気にしたが、今は誰も止められないと思い諦めている。
そしてゲートが開いた。
「総監、どうしたのかね?」
「総司令、まさか計画が進行していたとは…。私どもの場所にヤツを送り込んで何をした?」
「うん?そんなことわかりきったことだろ?貴方はアレのことを嫌っている。こちらの要望を素直に受けてくれる筋じゃないだろ?」
総監は黙り込んでいた。それには憎しみ、恨み、怒り。究極
総監はゲートの装置に手をかけた。
「帰るのかね?まだ話したいことは山積みというのに」
「そんなことしたら天罰が下りますよ。私は私のやり方で貴方を止めます。そしてアイツも」
ゲートが閉じた。後にはピリついた空気だけが残る。
「行ってしまわれましたが、口封じしなくてよろしいのですか総司令。」
「…まぁいいさ。それに今彼に手を出したら私どもはひとたまりもない。」
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「総監ご無事で。」
ゲートを出てしばらく歩いた先に秘書が待っていた。
「はぁっ…かちこみは少し疲れるな。」
ジャケットを秘書に手渡し、その下に隠されていた爆薬の解除スイッチを押す。
「爆薬は魔法よりも信頼できる。」
「その発想は考えつきませんでした。相変わらずの行動力は素晴らしいですが、勝算はあるのですよね?」
「…。またない。」
「おい、まじかよ総監」秘書の尊敬の眼差しはすぐに消え、いつのまにかタメ口になっている。
「ちょっと待て、でも。
ウォルクスビナの当主がいたら勝算はあった…」
「でも死んでしまったら意味ないでしょ。殺しに関与した者たちは片っ端から捕まえましたが、残りは二人。そしてどうせアイツでしょう。まぁ証拠はありませんが。」
それはそうだが、あからさま図星を突かれるのはあまり快くない。
「でも、前に彼女にあったときのこと。彼女はある人物のことを話していた。彼?だれかは確かではないがひとまずそいつをこちら側に取り込む。言い方は悪いがね」
「ふ〜ん。そうですか。」
あからさまに期待していない返事。まぁでも仕方ないか。最初は彼のことだと思ったが、あの様子だと知らない、あるいは存在を知らないレベル。どうしたものか…
「う〜ん、今はどうしたものか。再び彼女に接触できればいいんだが」
正直、接触するだけならやり方はある。がそれは私のポリシーに反する。
「私としてはリヴァイアのご子息が怪しいのですが」
「それはもう調べた。まだ一概には言えないが。彼が答えた言葉に嘘はないことはわかっている」
「それか、彼女が言う彼?にも正体を明かしていないとか…」
秘書の推察は確かに正しい。
それだとリヴァイアもその候補に入ってくる。
でも今はそれを確かめるすべがない。時間がそれを解決してくれるのか。それは待てないのはわかっている。
「今はベアトリクスを追うしかない。そして彼を見つけ出す」
「承知しました。全勢力をあげて捜査いたします。部下どもに報告しておきますね。」
秘書の有能振りに助かっている。
「そらはそうとして、レジスタンスはどうしますか?」
「またか、ほんとに頭を悩ませられる」
「彼らの方針は私たちと同じ方向なのでは?」
「そうだと言っても彼らのやり方は目に余る。それに別に私は神殺しをしたいわけじゃない」
「そうですか…、それでは今まで通りに治安部隊を派遣しておきますね」
「そうしておけ、あまり関わりたくないが仕方ない。」
「完了いたしました。私はこれで」
軽く会釈した後彼女は去っていく。仕事に熱心になってくれるのはありがたいことだが、少し心配だ。
秘書はついさっきまでピンとたてていた狐の耳を垂らしていた。彼女の元気がない姿はあまり見ない。
秘書は狐族の末裔、純血ではないがそれなりに耳は発達していて、同じ耳を人の姿を保ったまま持っている。
「白夜、なんで私たちを裏切ったの…」
それだけが聞こえてきた。




