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自堕落勇者アリシア〜最強女勇者、転生先でニートになる〜  作者: ゆりちりん
プロローグ

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3/7

3. 働く勇者

「この体の主には、果たすべき務めがある」


それが勇者としての私の結論だった。

玲奈という女が築いたものを、私が勝手に投げ出すわけにはいかない。


というわけで、復帰初日。

私は六本木の巨大な塔の三十八階に立っていた。

美咲いわく「オフィスビル」というらしい。


入口のガラス扉が勝手に開いたときは身構えたが、もう驚かない。

たぶん。


「桐生さん! おかえりなさい!」


目を輝かせて駆け寄ってきたのは、後輩の天野陽太という青年だ。


「事故のこと聞いて、本当に心配してたんです。でも、さすが桐生さんです。もう復帰なんて!」


「うむ。案ずるな、少年。私は不死身だ」


「ふ、不死身?」


そこへ、眼鏡の奥から鋭い視線を送る男がやってきた。

上司の黒崎透。この部署の長らしい。


「桐生。病み上がりで悪いが、今日の午後に大和食品のキックオフがある。業績回復の提案だ。いつも通り、ロジックツリーで課題を整理しておいてくれ」


「承知した。貴殿の命に従おう」


「貴殿?」


ロジックツリー。

木だな。わかった。


◇ ◇ ◇


午後一時。


会議室に入ってきた黒崎は、部屋の中央に立つ高さ三メートルのモミの木を見て動きを止めた。


「桐生。これは何だ」


「ロジックツリーだ。近くの園芸店から担いできた」


「なぜ担げる」


会議は始まった。

大和食品の社長は、ふくよかな体を揺らしながら言った。


「売上が三期連続で落ちていましてね。競合のミナト製菓にシェアを奪われているんです」


私はがたりと立ち上がった。


「つまり敵はミナト製菓だな。場所を教えろ。私が斬ってくる」


「き、桐生さん!?」


「待て待て待て」


黒崎が私の肩を押さえた。

異様に力が強い。

こいつ、できる。


「失礼しました。桐生は、競合の分析を、と申しておりまして。桐生、3C分析から頼む」


3C。

聞いたことがある。たしか資料に書いてあった。


私は右手を天にかざし、腹の底から叫んだ。


「スリィィィ・シィィィィ!!」


会議室が静まり返った。


空調の音だけが響く中、天野がぽつりとつぶやいた。


「すごい。何か、深い意図があるはずだ」


ない。

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