07 男たちの不毛な会議(と、胃痛)
ヒロインが別室で(刺客のイザベラと仲良く)タルトの試食をしている隙に、執務室には男たちだけが残された。
「……で、お前らはいつになったら帰るんだ?」
王子が低い声で問いかける。その顔は、ヒロインの前で見せる赤面とは程遠い、威圧感のある「真の王」の顔だ。
「さあね。君の『下手な悪役演技』をこれ以上見ていられないだけだよ」
他国王子エドワードが肩をすくめる。
その隣で、側近のゼノンが書類を山積みにして吐息をついた。
「殿下、いい加減にしてください。お嬢様は『殿下はツンデレの天才』だと信じ切っています。これ以上『悪役』を続けるなら、我々は今すぐ隣国のエドワード殿下に彼女の身柄を譲り渡す手続きをしますよ」
「なっ……! 貴様、誰の側近だ!」
「殿下の胃を少しでも長持ちさせたい側近です。いいですか、お嬢様は『殿下が自分を追い出そうとしている』のではなく、『殿下が自分との時間を確保するために、わざと周囲を騒がしくしている』と確信しています。……その健気さを、そろそろ正面から受け止めてはどうですか?」
王子はガシガシと髪を乱した。
「……俺だって、あいつを抱きしめたいに決まっているだろう! だが、もし俺が公然と溺愛すれば、反逆者どもが今以上に過激な手段に出るはずだ。あいつを守るためには、俺が『最低な婚約者』である必要があるんだ!」
その声には、悲痛なほどの本音が混じっていた。
エドワードが少しだけ真顔になり、皮肉を込めて笑う。
「ふん、健気だね。だが、君がそんなに悩んでいる間に、彼女はイザベラと『王子様とどうやって仲直りするか作戦会議』を始めているよ?」
「……えっ?」
執務室のドアの向こうから、キャッキャと笑い合うヒロインと元刺客の声が聞こえてくる。
「殿下、今のうちに『反逆者掃討作戦』という名の『ヒロインと二人きりで逃避行する準備』を整えましょう。あの子たちを放置すると、本当に殿下の立場がなくなりますよ」
ゼノンが冷徹に告げると、王子は深く深く溜息をついた。
「……分かった。俺が、一番派手な方法でケリをつけてやる」




